日ASEAN包括的経済連携協定とは?

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    数ある経済協定の中でも、繊維の輸出入でメインとなる提携国として、東南アジアがよくあげられます。機屋や染工場に加えて、縫製工場も多い東南アジア諸国は、輸入取引先以外にも縫製工場への輸出先として活発に取引が行われています。そんな東南アジア諸国との経済協定とは、どのような協定があるのでしょうか? 

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    日ASEAN包括的経済連携協定とは?

    日ASEAN包括的経済連携協定

    日・ASEAN包括的経済連携協定(英語: Agreement on Comprehensive Economic Partnership among Japan and Member States of the Association of Southeast Asian Nations)とは、2008年に日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との間に、結ばれた経済連携協定(EPA)です。

    ASEAN経済連携協定は、ASEAN諸国との経済的関係を強化するために締結されました。

    協定の多くは、二国間による締結協定でしたが、ASEAN協定は日本初のマルチEPAとして結ばれました。主な協定の協力規定内容は、下記の通りです。

    協力規定内容

    • 商品の取り扱い幅が広い
    • 物品貿易の自由化・円滑化
    • サービス貿易の自由化
    • 投資の自由化
    • 知的財産分野での協力
    • 農林水産分野での協力


    人口も経済規模も大きなASEANは、中国や欧米諸国と並んで、重要な貿易相手です。

    日ASEAN協定が発足以降、ASEAN諸国との取引はより活発になりました。

    ASEAN加盟国

    ASEANは東南アジア諸国から構成されています。加盟国は現在10か国で、下記の通りです。東南アジアでは、東ティモールが唯一ASEANに加盟していません。

    <加盟国>

    • シンガポール
    • インドネシア
    • ベトナム
    • フィリピン
    • ラオス
    • カンボジア
    • ミャンマー
    • タイ
    • マレーシア
    • ブルネイ

      

    ベトナムは繊維産業が活発で、需要が供給を超えるほどとも言われています。ベトナムがTPP(環太平洋連携協定)に参加したことと、先進国の中でもコストの安いベトナムは、繊維大国になりつつあります。

    ベトナムを含め、繊維産業が盛んな東南アジアとの経済協定は、アパレル業界においては重要な役割を果たしています。

    日ASEAN協定の構成

    日ASEAN協定は全10章から成り立っており、さらに5つの附属書があります。繊維産品の輸出入が対象となるかを確認するには、特に「第3章の原産地規則」と「附属書」の内容を確認することになるでしょう。

    第1章 総則第9章 紛争解決
    第2章 物品の貿易第10章 最終規定
    第3章 原産地規則附属書1 関税の撤廃又は引き下げに関する表(譲許表)
    第4章 衛生植物検疫措置附属書2 品目別規則
    第5章 任意規格、強制規格及び適合性評価手続き附属書3 情報技術製品
    第6章 サービスの貿易附属書4 運用上の証明手続き
    第7章 投資附属書5 経済的協力のための事業
    第8章 経済協力

    日ASEAN協定の関税軽減

    この協定は、「第16条 関税の撤廃又は引き下げ」に従って、関税に対する特恵を受けることができます。

    第16条の中で、この協定に別段の定めがある場合を除くほかは、各締約国は、締約国の原産品について、附属書に従って、関税を撤廃または引き下げることが記されています。附属書には、いくつか種類があり、それぞれに細かな規定が定められています。第16条と附属書を合わせて、「ASEAN包括特恵原産地規則」とも呼ばれています。

    特恵税率の適用条件

    特恵税率の適用には、ASEAN包括特恵原産地規則を満たしているか確認する必要があります。

    締約国からの輸入の際の確認項目としては、以下が挙げられます。

    • 締約国から輸入する際に、輸入商品が附属書1において特恵税率の設定がされている。
    • 輸入品が、締約国の「原産品」であることが認められていること。(原産地基準を満たしたうえで、「原産地証明書」が発行されている。)
    • 日本への運送途上で、締約国の「原産品」である資格を失っていないこと。(ASEAN規則上の「積送基準」を満たしていること)
    • 輸入の際に税関に対して、原産地基準及び積層基準の両方を満たしていることを証明すること。


    日本の商品を締約国へ輸出する際は、輸出時に日本での「原産品」であることを示す「原産地証明書」を輸入締約国に送ることで、現地輸入国が特恵税率を受けられるようになります。取引先より原産地証明書の提出の依頼があった場合は、輸入時と同様に、対象商品であるかを附属書に沿って確認します。適切な分類を判断したうえで、原産地証明書発行手続きを行いましょう。

    附属書1

     

    附属書1には、「関税の撤廃又は引き下げに関する表」として、特恵税率対象商品に該当する商品の一覧や内容が記されています。品目ごとの軽減税率もこの附属書内で確認することができます。各附属書は、下記リンクの外務省ホームページで確認することができます。

    外務省: 日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定 (mofa.go.jp)

     

    原産地証明書(Certificate of Origin)

    「原産地証明書」は、輸出者がその国の「原産品」であることを証明するために発行します。日ASEAN協定で発行される原産地証明書を特に「form AJ」と呼びます。輸入者は、輸出者より「原産地証明書」を受け取り、原則輸入申告時に提出します。例外としては、US$200または輸入国が規定する金額を超えない貨物の場合は、原産地証明書の提出を要しません。

    記入言語は「英語」で統一され、有効期間は発給から1年間となります。「原産地証明書」は、輸出インボイスとの内容一致が必要で、輸出毎に発行する必要があります。同じ商品であっても、輸出毎に発行することを忘れないように注意が必要です。

    原産地証明書に記載される内容事項は下記になります。

    1. 輸出者(名称・住所・国名)
    2. 輸入者(名称・住所・国名)
    3. 輸送手段
    4. 項目番号
    5. 包装(ケースマーク)の記号や番号
    6. 個数・数量・品名・HSコード
    7. 原産地基準
    8. 重量
    9. インボイス番号及び日付

    原産地証明書は、日本商工会議所で発行することができます。オンライン申請も可能です。

     

    積送基準

    特恵関税適用には、輸出国から日本の港・空港に直送されていることが条件となっています。航路などの都合により第三国を経由する場合もあるかと思います。その場合は、日本到着港までの通し船荷証券(Through B/L)を準備するか、中継する第三国で発行される非加工証明書(Certificate of Non-Manipulation: CNM)を発行してもらう必要があります。

    特恵軽減税率の適用には、ASEAN原産国の原産品であることが条件です。そのため、商品だけに留まらず、輸出入の経路も確認対象となります。第3国での経由の際に、加工や材料支給に携わっていないことを証明するために、原産地規則以外にも、積送基準が設けられています。

    まとめ

    POINT

    日・ASEAN包括的経済連携協定:

    • 日本初の多国間EPA
    • 日本とASEANの貿易活発化のために作られた、特恵税率などの経済協定

    ASEAN特恵税率の適用条件

    • 関税の撤廃又は引き下げに関する表に記載のある対象商品であること
    • 輸入品が、締約国の「原産品」であることが認められていること
    • 日本への運送途上で、締約国の「原産品」である資格を失っていないこと
    • 輸入の際に税関に対して、原産地基準及び積層基準の両方を満たしていることを証明すること

    今後の貿易相手としては重要な位置にあるASEAN諸国。そんなASEANとの貿易を後押ししてくれるしくみが今回紹介した「日・ASEAN包括的経済連携協定」です。繊維の商品も条件を満たせば、無税などの大きな経済メリットがあります。関税は、最終の商品単価も左右することもあり、アパレルメーカーによっては、EPA対象国間のみでの原材料調達と加工を希望する企業もあります。最大限活用して、チャンスを増やしていきたいですね。

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