私たちの衣料品の大半は、織物かニットでできていますよね。織物とニットには、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。具体的な違いと、使い分け方について調べてみました。
織物とニットの違いとは?
織物
織物は、経糸と緯糸を組み合わせて作られる布地を指します。
織物の織り方は、「平織」・「綾織」・「朱子織」のいずれかの織り方で作られるものが主流で、三大組織とも呼ばれています。基本的には、織機に経糸を張り、その間に緯糸を通します。この緯糸の通し方で、どのような組織の織物ができるか決まります。(以前、織物の組織についての記事を投稿しましたので、今回は割愛します。興味があればぜひ読んでみて下さい。
https://all-about-textile.com/all-about-textile/textile-structure/織物の特徴は、頑丈さです。組織が非常に安定していているので、洗濯後の伸び縮みも比較的に少なく、着ていても形状が大きく型崩れすることもないでしょう。ニットはループ状に編み目を作り、このループが大きいと引っかかりやすく糸切れやピリングのように毛羽立ちやすくなります。織物はループ状ではなく、経糸と緯糸を交差しながら作られ、目がニットと比べて詰まっているため、引っかかりにくく、耐摩耗に強い素材です。
ニット
ニットは、糸を編んで作られる布地を指します。織物が、経糸と緯糸を交差させながら作る組織に対して、ニットは結び目を作る要領で、連続のループ状を作り上げられます。織物に比べて、ストレッチ性が高いことが特徴です。編み方を変えることで、ストレッチ性を変えたり、機能面に変化が生まれます。
ニットは大きく「経編み」と「緯編み」の編み方に分けられます。
緯編みには、織物同様の三大組織があり、「天竺編み」・「リブ編み」・「パール編み」があります。
ニットはループ状に編み目を作っていくことから、織物には出せないかさ高性や弾力性があり、ニット特有の風合いが出ます。このループ状の組織が、ストレッチ性や通気性を生みます。
経編みと緯編み
経編みは縦方向に編み目を作り、緯編は横方向に編み目を作っていきます。
(左:緯編み / 右:経編み)
どちらも伸縮性がありますが、緯編みの方がよく伸びます。
経編みは、緯編みと比較するとストレッチ性は劣るものの、端がほつれても崩れにくく、また薄い生地を編むことも可能です。緯編みは、1か所ほつれてしまうと、全体までほどけてしまう可能性があることが欠点です。
トリコット(経編み)
トリコットは経編みの代表的な編み方の一つです。
トリコットの特徴と言えば、ニットの中では織物に近い生地と言われています。ニットの長所を残しながらも、織物のような安定性を持っている生地です。女性が使用するタイツの多くはトリコット組織であることが知られています。
トリコットの魅力はたくさんあり、下記のような長所が挙げられています。
- ストレッチ性に優れている
- 形状安定性がよく、洗濯後の形状変化が少ない
- 風合いが柔らかく、フィット感がある
- シワになりにくい
- 通気性がある
天竺編み(緯編み)
天竺編みは、「平編み」や「メリヤス編み」とも言われます。
一番ベーシックな編み地で、縦横とも同じ編み組織が連なった編み方です。また、表と裏の編み地が異なり、表は同じ編み目が整列、裏は出っ張りがある編み目です。表側を表天竺、裏側を裏天竺と表現します。薄くて軽いことが特徴で、糸の使用量も一番削減することができます。
リブ編み(緯編み)
ゴムのように伸縮性のある編み方で、「ゴム編み」や「フライス編み」とも呼ばれています。飛び出した目と引っ込んだ目が交互に並びます。表も裏も同じ見え方をします。横方向のストレッチ性が高く、特にストレッチ性が高いセーターの袖口などによく使用される編地になります。
パール編み(緯編み)
パール編みは、「両頭編み」や「ガーター編み」とも呼ばれています。1段ごとに表目と裏目が交互に編まれる編み方です。
リブ編みは横方向に伸びが大きいことに対して、パール編みは縦方向の伸びに優れている編地です。
織物とニットの使い分け
織物とニットはどのような用途で使い分けているのでしょうか?
ニットと織物の代表的な特徴の差をまとめてみました。組織や糸使いで短所をカバーすることもできますので、必ずしも下記に当てはまらないケースもあります。
織物 | 経編み | 緯編み | |
ストレッチ性 | △ (糸使いによる) | 〇 | ◎ |
耐久性 | ◎ | 〇 | △ |
耐シワ | △ | ◎ | ◎ |
軽さ | ◎ | 〇 | △ |
柔らかさ | △ (糸使いによる) | ◎ | ◎ |
耐摩耗性 | ◎ | 〇 | △ |
収縮安定性 | ◎ | 〇 | △ |
静かさ | △ | ◎ | ◎ |
通気性 | △ | ◎ | ◎ |
織物は耐久性や摩耗性など、生地の強度が強いことが大きなメリットです。
激しい運動をするアウトドアスポーツや、毎日着るような制服やビジネスマンが着るシャツなどにもよく使用されています。
ニットはループ状に編んでいくので、編み目に空気が通りやすく通気性がいいですが、織物は目が詰まっていて、さらに高密度であれば、通気性は下がります。この特性は、反対にウィンドプルーフジャケットや、フェザーや綿を使用するダウンジャケットには、織物を使用する方がいいと考えられます。
ニットはストレッチ性に加えて、生地が擦れた際に音がしにくく、静かな生地であることが利点です。ゴルフなどのスポーツは、スイングの際に、ひそひそ話も禁止されるほど雑音に注意が払われるスポーツです。織物に比べて静かなニットは、ゴルフスポーツには極めてよく使用される生地です。また、ストレッチ性は着心地を左右する大きなポイントを占めていることから、ニット生地は服やパンツを作るうえで欠かせない素材です。普段使いで私たちがきる服の多くはニットを占めているのではないでしょうか?
トリコットはニットと織物の中間的な位置にある組織で、織物の耐久性を持ちつつニットの良さもある生地で、扱いやすい生地とも言えます。また、ストレッチ性の必要なパーツにはニットを使用し、ひざやひじなどのパーツは、摩耗耐性に特化した織物を使用するガーメントも見かけられます。
使用用途 | |
織物 | アウトドアスポーツ、シャツ、 ウィンドプルーフジャケット、ダウンジャケットなど |
経編み | タイツ、パンツ、セーター、スウェット、 ゴルフやサイクリングスポーツ、 デイリーユースなど |
緯編み | パンツ、セーター、スウェット、 ゴルフやサイクリングスポーツ、 デイリーユースなど |
まとめ
織物:経糸と緯糸を組み合わせて作られる布地
- 織物三大組織:「平織」・「綾織」・「朱子織」
- 長所:耐久性・耐摩耗・収縮安定・軽さ
ニット:糸を編んで、連続のループ状の編み目で作られる布地
- 「経編み」:トリコット
- 「緯編み」:「天竺編み」・「リブ編み」・「パール編み」
- 長所:ストレッチ性・耐シワ・柔らかさ・静かさ・通気性
織物もニットも身近な生地ですが、具体的な違いについて深掘りしたことはなかったかもしれません。
織物もポリウレタンなどのストレッチ糸を使用して、伸縮性を上げることは可能ですが、なかなかニットのような高いストレッチやかさ高性のある風合いを引き出すことは難しいでしょう。
それぞれの特性を活かして、織物とニットの使い分けをすれば、より快適な服作りができるかもしれません。