アパレルのモノつくりは、企画から生産・販売まで非常に長いスパンを要します。
原料ベースから見直して開発するとなると、企画から販売に至るまで2-3年、もしくはそれ以上かかることもしばしばあります。
最近では「3Dモデリング」と呼ばれるツールが誕生し、アパレル企業の助けとなっています。3Dモデリングによって、大幅な開発期間を短縮できるとして、今後ますます注目されるツールになることは間違いないでしょう。
3Dモデリングとは?
3Dモデリング
3Dモデリングとは、3D CGの作業の中で、ものつくりのデザインや詳細を確認するための作業ツールです。パソコンを使って、デザインや生地のイメージを作ることができるので、実際に生地を作ったり、副資材を集めてガーメントを作ったりするよりも、大幅な時間短縮と手間を省くことができます。
本来アパレル企業の企画から生産は、「デザイン」「生地選定」「パターン作成」「ビーカー(色見本作成)」「サンプル作成」などのさまざまなステップを介して、販売へたどり着きます。イメージとサンプルが異なる場合は、一から生地の選定を見直したり、サイズが合わない場合は、パターンから見直してサンプルをリテイクしたりと、ロスタイムが多くなります。3Dモデリングを使用することで、ロスタイムを極限まで減らすことが期待されています。
3Dモデリング導入のメリット
3Dモデリングを導入することによって、どのような恩恵を受けられるのでしょうか?
発売までのリードタイムを短縮できる
ファッションの流行り廃りのサイクルは、非常に早く、企画や開発に長く時間をかけると販売のタイミングを逃してしまったり、流行が過ぎ去ってしまったりすることで、売上が思うように伸びない可能性もあるでしょう。
繊維産業は、生産・流通段階で分業体制が取られており、原糸メーカーから生地を織ったり、編んだりする機屋、染色工場など、非常に多くの業種に分かれています。川下から川上までたどり着くには多くのプロセスと時間を要することが想像できるかと思います。デザインが変わることや生地が変わることは、多くのメーカーや工場に影響を与えることになるでしょう。
瞬時にデザインしたイメージを描くことができる3Dモデリングを使用することで、サンプル作成の手間が省けたり、サンプルを作る前にデザインや素材のイメージを吟味することができるので、何度もサンプルを作り直すことを防ぐことができます。
サンプルを作るコストを削減できる
イメージに合わないと、再度サンプルを作り直す必要があったところを、3Dモデリングを使えばすぐに見直しサンプルイメージをPC上に描き出すことができるでしょう。通常サンプル生地を作る際は、いきなり大量に作るのではなく、小ロットで試し織や試し編みを行います。小ロットでの作成は糸を分割する必要もあれば、ロスも大量に発生します。そうなると小ロットでも、サンプル作成のコストは積み上がり、リテイクが増えれば増えるほど時間とコストがかかります。
生地などの主資材やアクセサリーパーツなどの副資材、そして作ったサンプルの輸送コストなど、サンプル1つを作るにも、多くのコストが発生するのです。
無駄をそぎ落とし、環境を守る
アパレル業界の環境汚染の深刻さはご存じかと思います。何度もサンプルを作ったり、見込み生産などで在庫が余ったりと、アパレル業界は多くの環境問題に関する課題を抱えてきました。
3Dモデリングを導入することで、繰り返されるサンプルの作成を減らしたり、3DCGを利用して先行発注などを受け付けたりすることで、過剰にサンプルや量産品を作ることを減らすことができます。
展示会への活用
3Dモデリングを使用してデザインしたものを使って、展示会を行う事例もあるようです。コロナウィルスの影響もあり、オンライン展示会などが進歩してきましたが、3Dモデリングはこのようなオンライン展示会に有用な手段と言えるでしょう。オンライン展示会にまで活用できると国内はもちろん、海外とも繋がりを持てるので、普段交流のない客先と繋がることができるかもしれません。
アパレル業界で3Dモデリングの導入が進まない理由とは?
3Dモデリングがもたらすメリットはたくさんありますが、導入しているアパレル企業がまだ少ないのが現状です。導入に抵抗がある理由とはどのような点があげられるのでしょうか?
導入コストがかかる
3Dモデリングによって、サンプル作成のコストは抑えられるかもしれませんが、専用ツールをインストールする必要があり、初期投資がかかります。商品あたりの単価が安く、利益が大きくとりにくいファッションの世界では、なかなか初期投資が痛手となり踏み切れないことも多いようです。導入後にうまく使いこなせるかなど、コストに対する有益性に疑問を持つ人も多いでしょう。
ツールを使いこなせる人材が必要となる
3Dモデリングを使いこなすには、知識やパソコン関連に強くないと厳しいでしょう。専門性のある内容も多く、スキルや経験不足のままでは、うまく活用しきれないこともあるようです。CADなどはパタンナーやインテリアデザイン・建築関連では浸透していますが、アパレル運用としてはまだ実績や経験者が少ないのが現状です。
開発に制限がある
デザイナー側と生地などのサプライヤー側との連携がうまく取れると、開発の範囲や自由度が広がり、手間を省くことができるでしょう。しかし、ソフトな数も複数あり、それぞれが別々のソフトを使用していたり、ソフトを持ち合わせてなかったりすることもあります。
また、いくら数値やデータ、イメージ図を作っても、実際に触る感覚とイメージがずれる可能性もあります。少しの素材や加工の違いで、風合いは大きく変化することもあるので、全てのパターンをコンピューターによって把握するのは難しい部分もあります。
まとめ
3Dモデリング
- 3D CGの作業の中で、ものつくりのデザインや詳細を確認するための作業ツール
3Dモデリング導入のメリット
- 発売までのリードタイムを短縮できる
- サンプルを作るコストを削減できる
- 無駄をそぎ落とし、環境を守る
- 展示会への活用
アパレル業界で3Dモデリングの導入が進まない理由とは?
- 導入コストがかかる
- ツールを使いこなせる人材が必要となる
- 開発に制限がある