再生繊維は本当に環境にやさしいのか?

再生繊維にどのような印象を持っているでしょうか?

環境にやさしいという意見もあれば、反対に環境負荷や人体への悪影響など否定的な意見も聞かれます。

果たして再生繊維は本当に環境にやさしいのでしょうか。その真相を調査しました。

目次

再生繊維の位置づけ

再生繊維の位置づけ

「再生繊維」とは、原料を一度化学薬品を使用して溶解し、長繊維などに紡糸され作られる繊維のことを指します。

植物由来のセルロースから成る代表的な再生繊維は、「レーヨン」「キュプラ」「ポリノジック」「リヨセル」があります。

原料がどれも天然由来で、石油由来の合繊繊維にはない肌触りの良さや吸湿性などを持ち合わせます。

そして、化学薬品によって人工的な処理を施すことによって、コットンなどの天然繊維より耐久性や強度のある繊維となるのです。

原料の良さを生かしつつ、天然繊維にはない強度を補填するハイブリッドな繊維です。

また、ペットボトルを再利用して作られる繊維も再生繊維として分類されます。ペットボトルは石油由来にはなりますが、一度溶解して再生されるため、再生繊維に含まれます。

そんな再生繊維ですが、果たして人体や環境にやさしい繊維なのでしょうか?

原料からサステイナブルや環境にやさしいという意見がある一方で、再生繊維は化学繊維としての認識が強くサステイナブルなイメージがない消費者も多くいるのが現状です。

再生繊維はサステイナブルな繊維なのか?

再生繊維のサステイナブルな点

再生繊維をサステイナブルと言える所以としては、「原料」「生分解性」です。

サステイナブル原料

天然由来の再生繊維は木材やコットンリンターなどを原料に作られ、原料によってレーヨンやキュプラなどに分かれています。原料は多少異なりますが、成分は全て「セルロース」でできています。

再生ポリエステルは、使用済のペットボトルを回収して、溶解して不純物を取り除き、繊維として成型されます。合繊繊維の強度を保ちながらも、一から生産するより少ないエネルギーで再生することができます。

再生繊維の各原料は下記の通りです。

<再生繊維の原料>

  • レーヨン:木材パルプ
  • キュプラ:コットンリンター(綿花の種の周りについている短い繊維)
  • ポリノジック:木材パルプ
  • リヨセル:ユーカリの木材
  • 再生ポリエステル:使用済ペットボトル

再生繊維は原料が「天然由来」もしくは、使用済のペットボトルを循環させて繊維化しているので、サステイナブルと謳われています。

生分解性

生分解性は、天然由来の再生繊維の特徴です。(再生ポリエステルには該当しません。)

生分解性とは土に埋めた時に土に分解される(土に還る)ことです。

石油由来の合成繊維は、分解されることがないため、焼却処理等で処分しない限り蓄積され続けます。木材やコットンリンターを原料にする再生繊維は、生分解性があるため、土に埋めると分解される性質があり、環境にやさしいと言われています。

また、ペットボトルは特別な加工を施さない限り、生分解性はなく地上に残り続ける資源です。ですが、再生繊維として資源を回収して再利用することで、生分解性のないペットボトルをこれ以上増やすことに歯止めをかけることができます。

再生繊維の環境負荷・人体影響

再生繊維はサステイナブルとも言われますが、反対意見としては溶解する際に「危険な薬品を使用すること」とレーヨンやリヨセルなどの原材料である木材調達が「森林破壊」に繋がると懸念されています。

危険な化学薬品

レーヨンなどの再生繊維を作る際に、一度原料をアルカリ(苛性ソーダ)及び二硫化炭素と反応させてアルカリ水溶液中に溶解させます。溶解したセルロースは、硫酸ナトリウム等を使用して紡糸します。

ここで使用される化学薬品は極めて危険な薬品で、環境や人体への悪影響があると言われています。

実際に、レーヨン工場で働く人たちは、心臓病や脳卒中、神経損傷などのリスクが高いといったデータがあります。これほど危険な薬品のため、人体以外にも、そのまま薬品が水などに流出すると水質汚染や、生態系を壊す危険があります。

  • 苛性ソーダ

毒・劇物取扱法などでも劇物と指定される危険な薬品です。皮膚に付着すると、皮膚のただれや、1滴でも目に入ると失明の恐れがあります。苛性ソーダを取り扱う際は、保護めがね、保護手袋の使用が義務付けられています。

  • 二硫化炭素

こちらも劇物に該当する危険な薬品です。皮膚などから吸収された場合、急性の二硫化炭素中毒を引き起こす可能性があります。症状としては、視覚障害・意識不明・昏睡・呼吸麻痺などがあり、非常に危険です。

また、揮発性が高く、非常に引火しやすい特徴があるため、取り扱いには十分な注意が必要となります。

  • 硫酸ナトリウム

硫酸ナトリウムは劇物には該当しておらず、化粧品やシャンプーなどにも含まれる身近な薬品です。ただし、未希釈の場合は吐き気、嘔吐、下痢を引き起こす可能性があります。また、製造プロセスで硫酸ナトリウムを使用する人に、腎臓、肝臓、中枢神経系にも悪影響を与える可能性があることが報告されています。

再生繊維の森林破壊

天然由来の再生繊維は、コットン、リネン、またはシルクの代わりに使用されます。天然繊維に比べて、化学薬品などを使用しながら効率よく生産されるため、比較的に安価で提供できることが利点の一つではあります。この安価に提案できる再生繊維の需要は高く、それにより生態系を乱しているとの報告もあるのです。

再生繊維の中でも安価で人気のあるレーヨンやリヨセルですが、レーヨンは木材パルプを原料に作られます。需要に合わせて原料を調達することで、森林破壊に繋がると苦言を受けることもありました。森林や原生林の消滅の危機から、そこに生息する動物たちの住処がなくなり生態系を乱すこともあります。

現在ファッション業界はこの問題を重要視して、サステイナブルな素材の調達が活発化しています。

レーヨンやリヨセルなどの調達元を、原生林の消滅の危機にある森林から採取することを避け、FSC (Forest Stewardship Council ® 森林管理協議会)などの森林認証のある原料からの調達を選ぶブランドも増えてきています。グッチやH&MなどはFSC認証の得た森林からの調達を拡大しており、ステラマッカートニーは森林保護団体と協力して、セルロースの原材料調達から製造までのトレースを行っています。

まとめ

POINT
  • 再生繊維とは、化学繊維の一種
    • 原料を一度化学薬品等で溶解して、長繊維などに紡糸され作られる繊維
  • 再生繊維のサステイナブルな一面
    • 原材料が天然繊維と使用済ペットボトルのリサイクルのためエコ
    • セルロース由来の再生繊維は生分解性がある
  • 再生繊維の非サステイナブルな一面
    • 環境や人体に悪影響を与える危険化学薬品の使用 
    • 原料採取のための森林破壊

再生繊維はサステイナブルな一面もありつつ、製造工程の中には環境負荷や人体の悪影響をもたらす素材でもあり、複雑な位置づけです。この点をどうとらえるかは、今後のサステイナブル活動への取り組みのカギになりそうです。

森林保護のように、環境負荷をカバーできる活動もありますので、FSC認証の原料を選定するなど、私たちができることを一つ一つ取り組みながら、持続可能な社会作りに貢献していきたいですね。

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