再生繊維とは
再生繊維とは
再生繊維とは、天然のセルロースなどからなる木材や綿などの天然繊維を、化学反応によって一度溶解して、再度紡糸して作られます。一度溶解してから、再紡糸(再生)することから、再生繊維と呼ばれています。
再生繊維=天然繊維を一旦溶解して、再紡糸して作る
では、なぜ一度溶解するといった手間をかける必要があるのでしょうか?
それは、天然繊維のデメリットを補えるからです。従来短繊維だったものを、溶解して再形成することで、短繊維に留まらず1本の長い糸(長繊維)に変えることができます。
基本的に再生繊維の素材となる天然繊維は、短繊維になります。天然繊維の代表としてコットン(綿)をイメージしていただきたいのですが、綿を引っ張るとすぐにちぎれる印象はないでしょうか?コットンが1m以上も長い繊維だという印象はないですよね?
短繊維は長繊維に比べて、強度が弱いのです。一本の糸が短いため、摩擦に弱く毛羽立ちやすかったり、糸強度が低いため破れやすいのです。溶解して、長繊維にすることで、天然由来のサステイナブル素材でありながら、天然繊維のデメリットをカバーする優れた繊維なんです。
再生繊維の種類と特徴は?
再生繊維は、大きく4つの種類があります。レーヨン・キュプラ・ポリノジック・リヨセル/テンセルです。
どれも同じセルロース由来の天然繊維から再生されているため、共通する特徴も多々あります。
中には聞き馴染みのない繊維もあるかもしれません。
それぞれの特徴を知って、用途に合わせて使い分けてみませんか?
レーヨン
レーヨンは、日本語で書くと「人絹(人造絹糸)」と書かれるように、人工的な絹を作るために開発されました。
そのため、糸の断面を見ると、シルクに似た三角形のような形をしています。この三角形の断面により、光を反射するため、シルクのような、光沢感やツヤのある繊維です。
引用:日本化学繊維協会化学繊維のかたち|日本化学繊維協会(化繊協会) (jcfa.gr.jp)
レーヨンの原料は木材パルプから成っています。そして、長繊維も短繊維も両方の生産がされています。
長繊維・短繊維の両方を使用して、アパレルから産業用など幅広く使用されています。
レーヨンの特徴と言えば、人絹と書くだけあって、シルクの特徴と似ています。先ほど紹介した光沢感といった外観だけではなく、肌触りの良さや、吸湿性に優れている点が特徴です。湿気を吸ってくれるため、着心地はとてもいいこと間違いなしでしょう。
デメリットとしては、水を吸うと縮むことと、強度が下がります。また、耐摩耗性が弱いため、洗濯が容易ではないことが難点です。幅広い用途に使われていますが、洗濯には最大限の配慮が必要です。なるべく短時間で、刺激を減らし優しく手洗いするといいでしょう。
原料:木材パルプ(成分:セルロース)
特徴(メリット)
- 光沢感がある
- 発色性がいい
- 肌触りがいい
- 吸湿性・吸水性がいい
特徴(デメリット)
- 水に濡れると縮む、強度が弱くなる
- 摩耗耐性がない
- 洗濯が難しい
- シワになりやすい
キュプラ
キュプラはスーツの裏地などに主に使われている高級繊維です。ベンベルグ®と呼ばれることもありますが、ベンベルグ®は、旭化成が持つ商標になります。
キュプラは吸放湿性に優れているため、「呼吸するような繊維」と言われています。湿気を吸って、外に放出するので、ムレにくい素材です。
糸が丸いのが特徴で、滑りがよく肌触りがいいです。また、静電気も逃がしてくれるので、裏地として活躍していることに納得ですよね。
引用:日本化学繊維協会化学繊維のかたち|日本化学繊維協会(化繊協会) (jcfa.gr.jp)
さらに注目されているポイントは、生分解性が高いことです。生分解性とは、土に埋めた時に土に分解される(土に還る)ことで、キュプラはこの生分解の速度が速いのです。ペットボトルのように自然界に残留することがないため、サステイナブル素材として知られています。
そんなキュプラの原料は、コットンの種の産毛(コットンリンター)を溶解して、糸にします。
原料:コットンリンター(成分:セルロース)
特徴(メリット)
- 吸放湿性がある
- 静電気が起きにくい
- 肌触りがいい
- 生分解性が高い
特徴(デメリット)
- 水に濡れると縮む、強度が弱くなる
(レーヨンよりは若干改善されている)
- 摩耗耐性がない
- 洗濯が難しい
ポリノジック
ポリノジックはレーヨンに非常に似ている繊維です。
原料はレーヨンと同じく、木材パルプ(成分:セルロース)のため、特徴や扱い方もレーヨンとほぼ同等です。
ポリノジックはレーヨンの短所をカバーするために、作られた繊維と言われます。
比較するのであれば、レーヨンより吸水性が下がります。そのため、水に濡れると弱くなる点は、ポリノジックでは若干改善されています。しかし、レーヨンと同じく洗濯には注意が必要で、短時間で洗濯することが望ましいです。
原料:木材パルプ(成分:セルロース)
特徴(メリット)
- 光沢感がある
- 発色性がいい
- 肌触りがいい
- 吸湿性・吸水性がいい(レーヨンより劣る)
特徴(デメリット)
- 水に濡れると縮む、強度が弱くなる
(レーヨンよりは若干改善されている) - 摩耗耐性がない
- 洗濯が難しい
- シワになりやすい
リヨセル
リヨセルの原料はユーカリの木材です。ユーカリの葉は、コアラの好物としても認知されていますよね。
また、リヨセルを使った商品が、テンセルと表記されていることがあります。
かって、リヨセルはオーストラリアのレンチング社の商標で、テンセルはイギリスのコートルズ社が商標としていました。
2004年にこの2社が合併をしたことにより、現在ではレンチング社が”テンセル”をブランド名とし、”リヨセル”は総称として呼ばれています。テンセルブランドとして、テンセルリヨセル、テンセルモダールを展開していますが、実際の商談などの際、テンセルは、テンセルリヨセルを指していることが多いです。
リヨセルの特徴は、他の再生繊維にも当てはまりますが、シルクのような光沢感があります。吸湿性も高く、湿気を吸った後にも縮みにくい素材であると言われています。繊維の形状はキュプラのように丸く、肌触りがいいことも特徴です。
リヨセルのデメリットは基本的には、他の再生繊維と似ています。特筆すべき点としては、白化がしやすい素材です。白化とはフィブリル化とも呼ばれていて、生地の表面が白っぽくなる現象です。原因としては、摩擦によるケバ立ちになります。
下記の写真で、突出している繊維がリヨセルですが、周りの繊維に比べて白化しているのが分かります。
原料:ユーカリの木材(成分:セルロース)
特徴(メリット)
- 光沢感がある
- 肌触りがいい
- 吸湿性・速乾性がいい
特徴(デメリット)
- 水に濡れると、強度が弱くなる。
(レーヨン・キュプラよりは若干改善されている) - 摩耗耐性がない
- 洗濯が難しい
- 白化しやすい
基本的にどの素材も吸湿性や肌触りの良さ、また天然由来であることから生分解性があります。吸湿性があると静電気が起きにくいので、全体として似た特徴があります。
まとめ
再生繊維とは、天然繊維を一旦溶解して、再紡糸された繊維
再生繊維の種類
レーヨン(原料:木材パルプ)
キュプラ(原料:コットンリンター)
ポリノジック(原料:木材パルプ)
リヨセル(原料:ユーカリの木材)
再生繊維の特徴
生分解性
吸湿性
静電気耐性
天然由来の肌触りの良さ
水には弱く、洗濯の取り扱いは注意!!
摩擦に弱い
天然繊維より強度アップしながら、合繊(ナイロンやポリエステル等)にはない、天然繊維の特徴も残した再生繊維は魅力的な素材ですよね。近年、環境に対する取り組みも進歩しているため、再生繊維の特徴である生分解性は今後もニーズが高まることでしょう。