アセテート繊維にはどのようなイメージがあるでしょうか?
衣料品に使用されるのは、ポリエステルやコットンなどがメジャーのため、あまり多く見かけることはないかもしれません。
今回は、そんなアセテート繊維のメリットやデメリットについて紹介したいと思います。
アセテート繊維とは?
アセテート繊維
アセテート繊維とは、木材パルプを原料としたアセチルセルロースに、酢酸を結合して作られる繊維です。アセテートは繊維だけではなく、メガネフレームなどにも使用される素材です。
アセテートは、化学繊維の中の「半合成繊維」に分類されます。半合成繊維とは、木材などを原料としたセルロースやたんぱく質を部分的に改質したものから作られる繊維を指します。天然の原料に、化学薬品を用いて繊維状に加工して生成されます。100%天然素材でもなく、100%合成素材でもない両方の性質を持っています。セルロース系の半合成繊維の代表としてはアセテートやトリアセテートなどがあります。たんぱく質系には、プロミックスがあります。
半合成繊維は、再生繊維と混同されることがあります。再生繊維の中には、同じくセルロースを原料にして作られるレーヨンやキュプラなどがありますが、再生繊維の場合は一度セルロースを溶解して再紡糸することで作られます。
アセテート繊維のメリット
環境にやさしい
アセテート繊維は環境にやさしい繊維として、注目が浴びています。
天然の原料からできている
アセテートは前述した通り、木材パルプを原料に作られます。天然由来の素材で、人体への悪影響は少ないと言われています。
合成繊維は、化石資源から作られており、有限資源として資源枯渇の危惧がされています。アセテートは、植物由来で、循環資源の位置付けにあるため、化石資源を減らすことができるとして、環境配慮素材として知られています。
生分解性がある
生分解性とは土に埋めた時に土に分解される(土に還る)ことです。アセテートは天然繊維を原料としていて、その天然繊維分子をそのまま活かして製造されます。そのため、土の中で微生物の働きによって分解され自然に還る生分解性があります。
石油由来の合成繊維は、分解されることがないため、焼却処理等で処分しない限り蓄積され続けます。木材パルプを原料にするアセテート繊維は、生分解性があるため、土に埋めると分解される性質があり、環境にやさしいと言われています。
軽い
コットンやレーヨンなどの繊維と比べて、アセテートは軽い繊維です。軽いと製品にした時に体の負荷なく着られるので、非常に着心地のいい生地に仕上がります。
シルクのような光沢感がある
アセテートには、シルクのような美しい光沢感があります。繊維の断面はクローバーのような形をしていて、再生繊維のレーヨンにも似ている繊維断面をしています。レーヨンは、「人絹(人造絹糸)」と書かれるように、人工的な絹を作るために開発されました。レーヨンと同様に、円形の繊維より、光をよく反射するため、シルクのような、光沢感やツヤのある繊維に仕上がります。
引用:化学繊維のかたち|日本化学繊維協会(化繊協会) (jcfa.gr.jp)
ふんわりした風合い
アセテート繊維の特徴として、毛のようなふんわりとした弾力性のある風合いをしています。アセテートは化学繊維に該当しながら、天然繊維のようなふっくらした肌触りはまさに半合成繊維らしく、天然繊維と合成繊維の要素の掛け合わせした性質を持ち合わせています。
適度な吸湿性がある
天然素材の特徴でもある吸湿性は、アセテートにも該当します。衣服内の汗やムレからでる水蒸気を吸い上げ、外に放湿することで、べたつきにくい生地として人気があります。軽くて吸湿性を持ち合わせていることから、夏などの高温多湿の環境にも活躍する素材です。
プリーツやシワ加工に向いている
アセテートは、熱可塑性があります。熱可塑性とは、常温では変形しないが、熱をかけると溶けて、冷えると固まる性質があります。この性質を活かして、熱でシワやプリーツ加工などを施すと、その形状をキープすることができます。アイロンなどで熱をかけて伸ばさない限り、洗濯してもシワ感をキープすることができます。アセテート素材を使って、デザイン性の高い生地に仕上げることもできます。
天然素材にはない熱可塑性は、合成繊維の要素を持ち合わせているからこそアセテートは持ち合わせており、合繊繊維でも天然繊維にも含まれない特殊な地位に位置するのも納得です。
発色性に優れている
アセテート繊維は、とても美しく染め上げることができます。発色性がいいので、鮮やかな色も再現することができます。
アセテート繊維のデメリット
強度が弱い
アセテート繊維は、他の繊維と比べると耐久性に劣っています。強く引っ張ったり、摩擦が起こりやすい激しいスポーツをする際には、適さない素材かもしれません。
摩擦に弱い
他の繊維より摩擦に弱く、摩擦によって生地にダメージを受けてしまいます。洗濯は摩擦が起こりやすく、洗濯時間を短くしたり、摩擦が発生しやすい脱水はなるべく控える方がベターです。手洗いでやさしく汚れを落とす方が、生地の寿命を延ばすことができて、長く着続けることができます。
シワがつきやすい
シルクのような光沢を持つアセテートですが、シルクのような耐シワ性は持ち合わせていません。洗濯などで濡れた生地で、シワがつくとシワが残ってしまうので、なるべくシワがつかないように生地を伸ばして乾かすことに気を付けるなどの工夫が必要です。
除光液などに注意
マニュキュアや除光液に含まれる薬品に反応して、溶けるので、使用の際は注意が必要です。美しい光沢と風合いの良さから、レディース向けの生地にもよく使われるアセテート生地ですが、おしゃれに欠かせないマニュキュアとは相性がよくないようです。できる限り、アセテート素材の服を着用中はマニュキュアやマニュキュアを落とすための除光液を使用することは避けましょう。
まとめ
アセテート繊維
- 木材パルプを原料としたアセチルセルロースに、酢酸を結合して作られる繊維
- 半合成繊維に該当
アセテート繊維のメリット
- 環境にやさしい: 天然の原料からできている、生分解性がある
- 軽い
- シルクのような光沢感がある
- ふんわりした風合い
- 適度な吸湿性がある
- プリーツやシワ加工に向いている
- 発色性に優れている
アセテート繊維のデメリット
- 強度が弱い
- 摩擦に弱い
- シワがつきやすい
- 除光液などに注意
アセテート繊維は、環境にもやさしい素材でありながら、天然繊維にはない熱可塑性も持ち合わせるまさにハイブリッドな半合成繊維です。取り扱いには少し注意が必要にはなりますが、それ以上に他の繊維にはないたくさんの特徴を持ち合わせています。