「ファーフリー運動」とは?動物を守る取り組みとは?

私たちの着ている服には、さまざまな素材が使われています。

コットン、ポリエステル、ナイロン、シルク、ウールなどのたくさんの素材が目的別に使用されているのです。その中でも、「動物繊維」はそれぞれの動物の独自の風合いや機能を持ち合わせているとして重宝されている繊維の一つです。

そんな「動物繊維」ですが、一部では残酷な動物虐待されている現実から、本物の動物繊維ではなく、人工的に再現した繊維が生産されるようになっています。「ファーフリー運動」もその中の一つの活動です。今回は、「ファーフリー運動」に焦点を当ててみたいと思います。

目次

リアルファーからフェイクファーへ:ファーフリー運動

毛皮のコートや、ブルゾンやダウンなどのフードにも使われている長い毛足のファーも、動物から刈り取られる「リアルファー」と合成繊維でファーを再現した「フェイクファー」が存在します。

「フェイク」と聞くと、本物の値段に手を出せずに購入したり、素材そのものに安っぽさを感じてネガティブな印象があるかもしれませんが、近年では全くそうではありません。一部の毛皮を刈り取る生産者の中には、動物に麻酔をせずに無理やり刈り取る様子が報告されています。毛刈り専用の台に、動物の四肢をロープで拘束され、耳や首を乱暴に掴まれながら電動クリッパーなどで無理に刈り取られているのです。中にはそれにより深い傷を負う動物もいます。そのような動画が動物愛護団体の「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA: People for the Ethical Treatment of Animals)」を初めとする多くの団体から報告されるようになり、メディアやSNSなどを通して私たち消費者にも認知されるようになってきました。これにより、リアルファーを使用しない取り組み「ファーフリー運動」も活発化しているのです。

「フェイクファー」ではマイナスな印象があるため、最近では「エコファー」とも呼ばれるようになってきました。

ファーフリー運動

「ファーフリー運動」には多くのブランドが賛同しています。ファーフリー運動の先駆者と言っても過言ではないStella McCartney(ステラ・マッカートニー)は、ブランド設立当初から、本革や毛皮の取り扱いを一切行ってこなかったブランドです。デザイナーのステラ・マッカートニー自身も、菜食主義者で動物への虐待や殺すことに強く嫌悪を抱いているのです。本革や毛皮を使用しなくても、上質な製品を作れることを世の中にアピールしているブランドです。

他にも、Gucci(グッチ)、Armani(アルマーニ)、Versace(ヴェルサーチ)などを初めとする世界的に有名なブランドも、本革や毛皮の取り扱いを廃止して、ファーフリーを宣言するブランドが相次いでいます。

現在では、オランダのアムステルダムに事務局を設置している国際連盟 「Fur Free Alliance(FFA)」によって、本格的にファーフリーへのプログラムが進行されています。FFAでは、「FUR FREEブランド」としての認証をすることができます。ブランドが、毛皮の使用・販売をしないことを誓う宣誓書をFFAに提出して、規約を満たすことが証明された場合、そのブランドは「FUR FREEブランド」として認証されます。また、FFAでは“Fur Free Fox”の承認ロゴマークを発行することで、ファーフリーであることを分かりやすく示す活動をしています。日本では、この認証を「JAVA(JAPAN ANIT-VIVISECTION ASSOCIATION:NPO法人 動物実験の廃止を求める会)」が行っています。

リアルファーとフェイクファーの違い

リアルファー

リアルファーの繊維は、刺し毛(さしげ)と綿毛によって構成されています。

人工皮革スエードの特徴

刺し毛は「上毛(じょうもう)」とも呼ばれ、英語では「guard hair(ガードヘア)」とも表現されます。ツヤがあり、色彩や斑紋を持っていて、その動物の印象や特徴を左右します。弾力性や耐水性があり、体を守る役目があることから、ガードヘアと表現されます。

綿毛は、短めで細く柔らかい毛を指します。「下毛(かもう)」とも呼ばれ、英語では「underfur(アンダーファー)」と呼びます。刺し毛の周りに密集して生えており、この綿毛に空気の層ができることで、体の熱を外に逃がすことを防ぐことができます。厳寒な環境下で生活する動物の方が、この綿毛の密度が詰まっていて、より高い保温性に繋がります。一般的にはこの綿毛の密度が高いほど、良質なファーと判断されます。

動物の毛には人間と同じように、うろこ状のスケールがあり、他の化学繊維やコットンなどの天然繊維にはない獣毛独自が持つ特徴です。スケールは空気を含みやすく、保温性があります。また、吸放湿性にも優れていて、湿気を吸うとスケールが開き放湿し、水分が減少するとスケールが閉じます。この働きのおかげで、快適な水分状態を保つことができます。

さらに獣毛の場合、外からの環境(気温・直射日光など)から体を守る役割があるが体毛にあるため、衣料品への使用に適する利点がたくさんあります。

フェイクファー

フェイクファーは、合成繊維を使って作られ、その構造はタオル織やベロアなどと同様の、パイル織やパイル編みで作られます。パイル織または、パイル編で製織・製編された生地の、表面のパイル(輪っか)をカットした「カットパイル」組織です。パイルをカットした後は、起毛加工などで、毛皮の毛並みに近い質感を出すような工夫がされています。切り開いたパイル糸を長短に切り分けることで、刺し毛と綿毛のように作ることで、より感触を似せた仕上がりにすることもあるようです。染色やプリントすることで、よりリアルな動物の毛皮に似せた生地も作られています。

リアルファーとフェイクファーの見分け方

繊維を燃やす

動物繊維を燃やした時は、人間の髪の毛(たんぱく質)を燃やしたような焦げ臭い臭いがします。フェイクファーで使用されるナイロンやポリエステルなどの繊維を燃やした場合は、プラスチックのような臭いがするでしょう。プラスチックを燃やす機会はあまりないと思いますが、人の毛を燃やした時との違いは分かると思うので、繊維を燃やすことでリアルファーかフェイクファーを見分けることができます。

刺し毛に注目

本物の獣毛であれば、刺し毛があり、先端に行くにつれて細くとがっていきます。フェイクファーの場合、太さが同じ繊維を途中でカットしているので、先端がとがらずに切りっぱなしの状態に見えます。

手触り

本物の獣毛は、天然のオイルにより滑らかに滑るような手触りです。フェイクファーの場合、乾燥してごわついた手触りのため、比較すると明らかな違いが分かるでしょう。

まとめ

POINT

ファーフリー運動

  • リアルファーを使用しない取り組み
  • 数多くの有名ブランドもファーフリー運動へ賛同

リアルファーとフェイクファーの違い

  • リアルファー:刺し毛と綿毛がある、スケールがある
  • フェイクファー:合成繊維を使用して作られる、パイル織・パイル編組織が一般的

リアルファーとフェイクファーの見分け方

  • 繊維を燃やす
  • 刺し毛に注目
  • 手触り

日本でもバブル時代では、毛皮のコートがかなり流行していました。しかし、現在となっては、多くのブランドの毛皮の廃止や、メディアなどを通した動物愛護の活動により、毛皮の輸入量は大幅に減少しています。しかし、いまだに世界では動物の虐待を報告されているのが現実です。作る側も使う側も責任をもって選んでいく必要があります。

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