グラデーションといえば、美しい色合いと奥行きのある色合いで魅力的な色ですよね。
生地にもグラデーションの生地はたくさん作られています。今回は「グラデーション生地」の魅力や効果について紹介したいと思います。
グラデーションカラー(gradation color)生地とは?
グラデーションカラー(gradation color)生地
グラデーションカラー生地は、グラデーションが施された生地を指します。グラデーションカラー(gradation color)といえば、色が段階を追って変化している状態を指します。色彩のぼかしや濃淡、色調に少しずつ変化を付けることで表現されます。徐々に変化をつけることで、色の分かれ目がパキッとしないので、色の変化が馴染みよく仕上がります。複数色でグラデーションを付ける場合でも、色同士の馴染みがいいため、まとまりよく見えます。グラデーションカラーには、濃淡や明暗が交差することで、より深みのある色になります。
絵画などでグラデーションを表現することは比較的に簡単ですが、生地でグラデーションを再現するとなると容易ではありません。それでも、グラデーション生地の柔らかな色彩変化は魅力的ですよね。
グラデーションカラーの種類
グラデーションを作るには、いくつかの種類があります。
同じ色調で濃淡を表現する
例)濃い青から薄い青へのグラデーション
図では右から左にかけて、青色の濃度が徐々に薄くなっています。同じ色調の青色でも、色の濃淡をつけることで、単調な印象にはならず、青色の深みを感じることができるでしょう。
異なる色調での色調変化
例)青から赤へのグラデーション
図では、異なる色調の青色と赤色のグラデーションですが、真ん中にかけて両方の色が混じるようにブレンディングされているので、色の境界線がぼやけて色調の変化の馴染みもいい仕上がりになります。もし、グラデーションでない場合は、下記の図のように境界線がくっきり分かれるので、インパクトのある印象には仕上がりますが、グラデーション特有の馴染み感や柔らかさ、色の深みは感じにくい印象です。
複数色での色調変化
例)青から黄色、黄色から赤のグラデーション
グラデーションは、3色以上の複数色でも作ることができます。3色混ぜても色が隣同士喧嘩しないので、まとまりよく仕上がっているのが伝わるかと思います。
グラデーション生地の作り方
グラデーション・ヤーンを使用する
先染めで染色されたグラデーション・ヤーンを使用することで、製織・製編でグラデーション生地を作ることができます。糸自体がグラデーションのため、加工や生産での懸念点は少ないでしょう。しかし、理想とするようなグラデーションのカラー展開の糸を見つけられるとは限りません。また、グラデーションのピッチ(間隔)は、仕上げの幅やグラデーション・ヤーン自体のピッチに左右されるため、思ったより間隔が狭い、または広いリピートでのグラデーションに仕上がる可能性もあります。
プリント加工をする
比較的に容易なのが、プリント加工でグラデーションを再現する方法です。しかし、プリントでグラデーションを再現するには、中間色なども含めると色数も多く、グラデーションを再現できるプリント機械は制限されます。
スクリーンプリントやロータリープリントでは、型を作ってプリントするため、徐々に色彩が変化するグラデーションプリントには不向きです。
スクリーンプリントは、版(プリント型)と呼ばれる枠に色ごとに柄を作成し、色を重ねてプリントしていきます。1色ずつの版作成となるため、徐々に色が変わるグラデーションを再現することは、スクリーンプリントでは難しくなります。
ロータリープリントも、ロールに型を彫ることで柄を作ります。ロータリープリントもスクリーンプリントと同様に、色ごとに版をシリンダーに彫り、ロータリー版を作成します。グラデーションは、掘って再現することは難しく、微妙な色彩変化を表現するのは、ロータリープリントでは不可能になります。
そのため、グラデーションを再現するにはインクジェットプリントやデジタルプリントでの加工法に限定されます。デジタルプリントは、通常のプリントで使用されるデザイン型を作成することなく、デジタル化された図柄を生地または転写紙に直接プリントする手法です。私たちがよく使用するコピー機などのプリンターにイメージが近く、データ化された図柄通りに、プリンターが柄出しをします。微妙な色彩変化もデジタルプリントでは再現することができ、グラデーションするカラー展開やピッチをコントロールしやすい点は、プリントのメリットです。
組織でグラデーションを作る
グラデーションは、組織でも作ることができます。先染めされた糸を使用して、打ち込み方を調整することで、グラデーションを作ることができます。例えば、青色と白色の2色の糸でグラデーションを作る場合、下記のような打ち込みを変えることで、グラデーションに見せる生地が仕上がります。
上記の図の場合、青い糸を5本打ち込み1本白色の色を打ち込み、続けて青色を4本打ち込み、白色の糸1本打ち込み、徐々に2色の打ち込みバランスを調整することで、グラデーションを生地が仕上がります。間隔を広げたり狭めたりを、好みで変えることができることがメリットです。また、2色の糸を撚り合わせた杢糸(メランジ糸)を使用することで、より色の境目がぼやけるので、より自然なグラデーションに近づけることができます。プリントのような自然なグラデーションまでは再現できない点はデメリットです。
グラデーション生地のメリット
複数色でも色馴染みがいい
これは、「グラデーションカラーの種類」の項でも紹介した通り、色調変化の境目がぼやける分、どんな隣り合わせになる糸でも、馴染みや統一感が出るので、まとまりのいい印象に見えます。
遠近感・立体感が出る
グラデーションの配色や濃度をうまく利用することで、生地自体に遠近感や奥行きのある立体感が出ます。縫製パーツをうまく使い分けることで、着瘦せ効果のある製品作りを狙うこともできます。
おしゃれな見た目になる
単色での濃度コントロールでも、単調にならず一味違う印象を与えることができます。グラデーション生地単体で目を引くおしゃれな印象の生地になり、グラデーションの配色や色彩をコントロールすることで、他の製品との差別化もできます。複数色を使用しても、ただの派手な生地といったこともなく、まとまり感があるので、個性を持たせつつ、ごちゃごちゃした印象にはなりません。
まとめ
グラデーションカラー(gradation color)生地
- 色が段階を追って変化している状態の生地
グラデーションカラーの種類
- 同じ色調で濃淡を表現する
- 異なる色調での色調変化
- 複数色での色調変化
グラデーション生地の作り方
- グラデーション・ヤーンを使用する
- プリント加工をする
- 組織でグラデーションを作る
グラデーション生地のメリット
- 複数色でも色馴染みがいい
- 遠近感・立体感が出る
- おしゃれな見た目になる
グラデーション生地は、目を引く美しさと奥行きがあります。無地染めと比較しても、他の製品と被りにくいです。また、服の場合パーツの取る位置によって、2つとない製品を作ることもできるので、個性を出したい方にはおすすめです。