ウールの吸湿性・弾力性・フェルト化とは?乾燥ボールやピアノで分かる羊毛の性質

ウールの吸湿性・弾力性・フェルト化とは?乾燥ボールやピアノで分かる羊毛の性質

最近、乾燥機に入れて使う「ウールボール(ドライヤーボール)」という便利グッズが人気です。乾燥時間が短くなり、静電気やシワも防げるという便利な道具です。実はこの効果は、ウールという繊維が持っている性質でほぼ説明できます。

この記事では、生地の性質を身近な道具を例に解説したいと思います。今回は、ウールを取り上げます。ウールの代表的な性質である吸湿性・弾力性・フェルト化を、ウールボールをはじめとする身近な道具を例に解説します。

目次

ウールの3つの性質の基本

吸湿性:空気中の水分を取り込む

吸湿性とは、空気中の水蒸気を繊維の内部に取り込む性質のことです。ウールは羊毛の主成分であるケラチン(髪や爪と同じたんぱく質)でできており、水となじみやすい構造を多く持っています。そのため、天然繊維のなかでもトップクラスの吸湿性があり、自重の30%前後の水分を含んでも表面はべたつきにくいといわれます。

さらにウールは水分を吸うときに熱を出す吸湿発熱という性質も持っています。「ウールは暖かい」と言われる理由のひとつです。

弾力性:縮れた繊維がバネになる

ウールの繊維をよく見ると、細かく波打っています。この縮れをクリンプと呼びます。クリンプがバネのように働くため、ウールは押しつぶされても元の形に戻ろうとします。ウールのセーターがシワになりにくく、ふっくらした風合いを保てるのはこのためです。

フェルト化:うろこが絡み合って固まる

ウールの表面は、スケールと呼ばれるうろこ状の層で覆われています。水分・熱・摩擦が加わるとスケールが開いて隣の繊維と引っかかり、一方向にしか戻れない状態で絡み合っていきます。こうして繊維が密に固まる現象がフェルト化です。織物をあえてフェルト化させて目を詰める加工は縮絨(しゅくじゅう)と呼ばれます。

身近な道具で見るウールの性質

ウールボール(乾燥ボール)

フェルト化で固く丸めたウールの玉です。乾燥機の中で衣類のあいだに入り込み、洗濯物がかたまりになるのを防ぎます。すき間ができて温風が通りやすくなるため、乾燥時間が短くなります。

  • 弾力性:つぶれずに弾み続け、衣類をたたいてシワをのばし、ふんわり仕上げる
  • 吸湿性:衣類から出た水分を一時的に吸い、温風の中で放出する。水分を含んだウールは電気を逃がしやすく、静電気の抑制にもつながる
  • フェルト化:何度転がっても形が崩れないので、繰り返し使える

ウールは燃えにくく熱で溶けない繊維なので、乾燥機のような熱のかかる場所にも向いています。

ピアノのハンマー

ピアノの弦をたたくハンマーの先には、高密度に固めたウールフェルトが巻かれています。固すぎず柔らかすぎない弾力が、弦に当たった瞬間にすっと離れ、豊かな音色を生み出します。調律師がフェルトに針を刺して硬さを調整する「整音」という作業があるほど、ウールの弾力性は音に直結しています。

テニスボール

テニスボールの表面の毛羽立った布も、ウールにナイロンなどを混ぜたフェルトです。フェルト化で丈夫に固まっているため激しい打球に耐え、弾力が打球感を柔らかくします。

ウールの敷きパッド・靴の中敷き

寝ている間や歩いている間にかく汗を、ウールの吸湿性が吸い取ります。蒸れにくく、冬は吸湿発熱で温かく感じられるのが特徴です。

羊毛フェルトの手芸

手芸の「羊毛フェルト」は、フェルト化を体験できる代表例です。石けん水をつけてこするウェットフェルトは、水・熱・摩擦でスケールを絡ませる方法です。先端に細かい返しがついた専用針で刺し固めるニードルフェルトは、針で繊維を機械的に絡ませる方法です。

洗濯でセーターが縮むのもフェルト化

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便利なフェルト化ですが、衣類にとっては困りものにもなります。ウールのセーターを洗濯機でふつうに洗うと縮んで硬くなってしまうのは、洗濯の水・温度・もみ洗いによってフェルト化が進むためです。ウール製品は「おしゃれ着用洗剤で、ぬるま湯か水で、押し洗い」が基本です。

このフェルト化を防ぐために「ウォッシャブル加工」が施されている商品もよく見られます。

ウォッシャブル加工の代表的な方法は、次の2つです。

塩素化処理:塩素系の薬剤でスケールの角を削るように処理し、引っかかりを弱める
樹脂加工:繊維の表面を薄い樹脂の膜で覆い、スケール同士が絡まないようにする

また、このウォッシャブル加工によって生地の風合いがよくなる副次的な効果もあり、婦人セーターなどで特によく見かけます。

また、ウールボールの説明書に「水に入れたり、衣類と一緒に洗ったりしないでください」と書かれていることがあります。これは吸湿性が高いぶん水を吸うと乾きにくく、カビの原因になるためです。

まとめ

POINT
  • 吸湿性:水分を取り込み、蒸れや静電気を抑える(敷きパッド、中敷き、ウールボール)
  • 弾力性:クリンプがバネとなり、つぶれても戻る(ピアノのハンマー、ウールボール)
  • フェルト化:スケールが絡み合って丈夫に固まる(テニスボール、羊毛フェルト、ウールボール)

羊が体を守るために備えた毛の性質は、乾燥機から楽器、スポーツ用品まで、さまざまな道具で活かされています。身近なウール製品を手に取ったとき、どの性質が働いているのか考えてみると、素材選びがもっと楽しくなるはずです。

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