マイクロプラスチック問題とは?アパレル業界への影響とは?

    マイクロプラスチックというワードを聞いたことはあるでしょうか?

    数年前から、マイクロプラスチックの問題は、世界中のメディアで取り上げられています。今回は、マイクロプラスチックについてや、アパレル業界が関与するマイクロプラスチック問題に注目しました。

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    マイクロプラスチック問題とは?

    マイクロプラスチックとは?

    プラスチックは、石油を原料とした合成樹脂で、マイクロプラスチックとはその中でもさらに5mm以下からナノサイズまでのとても小さなプラスチックのことを指します。

    マイクロプラスチックには、「一次マイクロプラスチック」「二次マイクロプラスチック」に分類されています。

    一次マイクロプラスチックは、元から5mm以下のプラスチックのことを指します。プラスチック製品を作る原料などは5mm以下のため、一次マイクロプラスチックに該当します。

    二次マイクロプラスチックは、元は5mm以上あったサイズが外的要因などにより、5mm以下の状態になったプラスチックを指します。

    例えば、道や海捨てられたペットボトルやビニール袋、ストローなどプラスチック製品が、紫外線などにより劣化し、さらに風や波などの影響により、小さな破片となり、マイクロプラスチックが生まれます。

    小さなサイズになったプラスチックは、軽量で流されやすく、世界中の多くの海などに影響を与えています。

    マイクロプラスチック問題とは?

    マイクロプラスチック問題とは、この小さなサイズのプラスチックが引き起こす環境問題を指します。具体的にどのようなことが問題となっているのでしょうか。

    海洋汚染

     

    マイクロプラスチックの海洋汚染は、深刻な問題となっています。

    ナノサイズにまで小さくなったマイクロプラスチックは、波に流されやすく、海の汚染を広げ、そして蓄積されてきます。プラスチックは自然化には存在しない物質で、自然に分解されることなく残留する物質でもあります。海を漂い、海洋汚染だけでなく、海洋生物の生態系破壊の恐れもあります。

    マイクロプラスチックは、PCB、ダイオキシンなどの残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれる海中の有害化学物質を取り込みやすいことが明らかになってきました。このPOPsを含むマイクロプラスチックを誤って海洋生物が食べてしまうと、炎症反応や摂食障害などを発症する可能性があると言われています。また食物連鎖により、マイクロプラスチックを摂取した小魚が、中型や大型の魚に食べられることにより、海洋生物全体で有害なマイクロプラスチックが蓄積される可能性があります。

    人体への悪影響

     

    マイクロプラスチックの蓄積の可能性は、海洋生物だけにとどまりません。私たち人間も、マイクロプラスチックを摂取した魚を食べる可能性は十分にあります。マイクロプラスチックへの人体への影響としては、ガンの発生や免疫力低下などのさまざまな懸念があると考えられています。

    <マイクロプラスチックの人体への影響例>
    • 発がん作用
    • 免疫力低下
    • 臓器疾患
    • 細胞破壊
    • ホルモン異常
    • アレルギー発症
    • 生殖機能が低下する

    上記の例から分かる通り、マイクロプラスチックの人体に恐ろしい悪影響を及ぼします。これは、他人事ではなく、私たち一人ひとりが取り組み改善すべき問題です。

    アパレル業界のマイクロプラスチック問題

    アパレル業界のマイクロプラスチック問題

    マイクロプラスチックの排出は、ペットボトルだけに限りません。アパレル業界でも、マイクロプラスチック問題は大きな注目を浴びています。安価で生成が容易なナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、プラスチックを原料にファイバー状に成形して作られています。この合繊繊維が洗濯などにより、大量に川や海にマイクロプラスチックが流れ出ていることが分かりました。

    IUCN(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)の「Primary Microplastic in the ocean/2017」の中の発表によると、一次プラスチックの排出量の一番を占めるのは合繊繊維によるものでした。実に35%もの割合が、合繊繊維による排出だったのです。

    35.0%化学繊維
    28.0%タイヤ
    24.0%都市の塵
    7.0%道路舗装
    3.7%船体の塗料
    2.0%洗顔料や歯磨き粉などのマイクロビーズ
    0.3%プラスチックペレット

    2011年にエコロジストのDr. Browneによって、1回の洗濯で流れ出るマイクロファイバーは、約1,900本と発表されました。世界中で毎年500億回も衣服を洗濯すると言われています。都度1,900本以上の繊維が海に流れ出ると考えると恐ろしい量が蓄積されていることが、明らかです。

    参照:Washing machines’ microplastic filters ‘untested’ – BBC News

    マイクロプラスチック問題の対策

    マイクロプラスチック問題の対策として、取り組まれる主な対策はどのようなものがあるのでしょうか?

     

    • 化学繊維から天然繊維または生分解性繊維へのシフト
    •  ノンブラッシュ フリース
    •  組織の工夫

    化学繊維から天然繊維または生分解性繊維へのシフト

    化学繊維は、上記で記述した通り、自然界で分解されないため、蓄積される一方です。

    そのため、材料を化学繊維から天然繊維などの自然界で分解される繊維へのシフトに、力を入れる企業も出てきています。さらには、化学繊維に加工して生分解性を持たせた加工糸も誕生していて、化学繊維の強みである耐久力や糸強度をキープしながら、土に埋めると自然界で分解される機能を兼ね合わせる糸も開発されています。

     

    ノンブラッシュ フリース

    冬に大活躍のフリースですが、このフリースもマイクロプラスチック問題に大きく関与します。一般的にフリースを作るには、ブラッシュ(起毛)と呼ばれる糸を針で引っ搔いて繊維を切断して、故意的に毛羽立たせる工程があります。この工程中に、大量の細かい糸が抜け落ちたり、空気中に浮遊し、工場廃水とともに海や川に流されています。さらに、切断された繊維は抜けやすく、着てる間や洗濯でマイクロプラスチックファイバーが抜け落ちてしまいます。

    最近では、この起毛工程を減らすために、様々な工夫・開発がされています。

    センターカットというダブルラッセルの生地の真ん中をスライスして、有毛の生地を作る手法で、フリースの代替品を開発しています。起毛しないフリース素材で、パイルがしっかりと編みこまれているので、抜けにくい構造になっているマイクロプラスチック問題に対応した商品です。

     

    組織の工夫

    糸の抜け落ちの原因の一つは、組織にも関連します。高密度に組織を作ることにより、隙間が埋まることにより、繊維を抜けにくくすることができます。

    また、密度を上げることで、摩擦耐性が上がるため、着用時にも抜けにくくなることが考えられます。

    まとめ

    POINT

    マイクロプラスチック:5mm以下のプラスチック

    マイクロプラスチック問題

    • 海洋汚染:プラスチックの蓄積と海洋生物の生態系破壊
    • 人体への悪影響:健康障害

    アパレル業界のマイクロプラスチック問題

    • 衣料品の洗濯による大量のマイクロプラスチック流出
    • 対策:・化学繊維から生分解性のある繊維へシフト・ノンブラッシュ フリース・組織の工夫


    私たちが普段する洗濯で、このような深刻なマイクロプラスチック問題に繋がっていたのは驚きではないでしょうか。すでに、海洋生物のマイクロプラスチック摂取や健康被害は報告されています。今からでも私たちのできる対策に取り組んでいきましょう。

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