リサイクル繊維の枯渇問題とは?

アパレル業界は環境汚染産業第2位として、不名誉なランキングに位置しています。これを機に、各アパレル企業ではさまざまな環境対策に力を入れてきています。その中でも、最近では店頭にリサイクル繊維使用のタグやポップがついた製品を多く見かけるようになってきました。リサイクル繊維は、消費者にとっても分かりやすい環境配慮商品として、人気がありますよね。しかし、そんなリサイクル繊維も供給不足や枯渇問題に面しているのです。

目次

リサイクル繊維の枯渇とは?

リサイクル繊維の現状

「リサイクル」とは、不要になったものを回収して、原料にまで戻して再利用することを指します。例えば、ペットボトルのリサイクルの場合、ペットボトルを回収して、PETフレークやペレット状に加工します。これを溶解して、原料まで戻し、さまざまなPET製品に形を変えて再利用されます。このように、完全に形を変えて、原料ベースまで戻してから、再利用される手法が、「リサイクル」です。

アパレル業界では、リサイクルポリエステルやリサイクルナイロンなどの繊維が開発され、商品化されています。市場に出回っているリサイクル製品の多くは、ナイロンよりもリサイクルポリエステルの方が多く流通しています。

リサイクルナイロン

リサイクルナイロンは、リサイクル前のナイロンの生産量の少なさや、回収の難しさによって安定的に供給することは容易ではなく、特にコロナウィルスの流行以降はリサイクルナイロンの供給は非常にタイトになってきています。

最近ようやく店舗での不用品回収ボックスなどを見かけるようにはなりましたが、衣料品のリサイクル化は、実はあまり進んでいないことが現状です。1着の服でも、特にアウターなどになると複雑な素材を掛け合わせてつくられています。例えば、ダウンジャケットなどは表素材に中の中綿素材、フードや内側のライニング生地が違う素材を使っていたりと、さまざまな素材を掛け合わせて作られていることも多いのです。そのような製品を回収して、素材別に仕分けするのは非常に手間とコストがかかるのです。

リサイクルポリエステル

ナイロンよりも比較的に安定した供給ができているポリエステルは、衣料品からの回収以外にもペットボトルのリサイクルによって、リサイクルポリエステル糸を作ることができます。その上に、ポリエステルは繊維業界でもトップを占める生産量です。ペットボトルや生産量の多いポリエステル繊維は、リサイクルポリエステルを生み出しやすいのです。

リサイクル繊維の枯渇

すでにリサイクルナイロンでは、供給不足などの問題に直面していますが、今後はリサイクルポリエステルでも供給不足に陥るのではないかとも言われています。

リサイクル化の加速

新しくポリエステルやナイロンの繊維を生み出さず、リサイクル繊維のみしか使用しなくなると、いつかリサイクル資源の枯渇に直面するでしょう。特に最近では、リサイクル繊維の使用を宣言する企業も年々増えていっています。そうなると、資源の取り合いになることは避けられないでしょう。

ペットボトルリサイクルの繊維化の廃止

ペットボトルリサイクルでは、回収されたペットボトルから再生した原料を使ってポリエステル繊維を作ることができます。ペットボトルから繊維への再生化の比率は高く、リサイクルポリエステルもこのペットボトルリサイクルを資源として頼りにしています。しかし、最近ではペットボトルを再生ペットボトルへの生産に使用するとの案が挙げられています。ペットボトルを溶かして原料ベースまで戻すと、さまざまな製品に展開が可能です。しかし、エネルギー消費を抑えて効率よくリサイクル化するには、ペットボトルは新たな再生ペットボトルとして使用するのが一番いいと言われているのです。そのため、ペットボトルの再生繊維化を廃止することが検討されています。そうなると、将来リサイクルポリエステルの原料も枯渇問題に面する可能性があります。

リサイクルよりリデュースへ

一から大量の石油やCO2を排出して生産するより、リサイクルの方が環境にはやさしいでしょう。しかし、回収してリサイクルするには原料ベースまでに戻す工夫など、再生するには多くのエネルギーが必要となります。それよりも、そもそも環境に悪い素材は原料を減らす活動に重きを置くことが重要との声も多く上がっています。ペットボトルを使わずにマイボトルを持ち歩くことや、新しい服を極力買わずに、いいものを長く着ることを大事にするなど、価値観は徐々に変わってきているのです。そうなると、リサイクル資源がなくなることも容易に想像できます。

リサイクル繊維の枯渇→次のステップとは?

リサイクル繊維の枯渇が進むと、アパレル業界はどのような動きを取ればいいのでしょうか?また新たに不足分を生産するとなると、環境は改善しないでしょう。

リサイクル回収の強化

リサイクルボックスの設置などにより、回収するための努力はしています。衣料品の場合、現状は回収されるよりも廃棄されて、焼却処理されることがはるかに多いのです。日本の場合、衣料品の廃棄物は年間100万トン排出されていると言われていて、そのうちリサイクル化できているのは、実に10%程度とも言われています。残りの90%は焼却処理で廃棄されるのが現状です。

回収の難しさの課題は多々ありますが、やはりここは強化して回収率を上げる工夫をしないといけません。衣料品の回収ボックスは、一部の店舗などとあまり見かけることがありません。身近な場所に、衣料品回収のボックスを作るなど、衣料品リサイクルの認識強化などの対策が必要でしょう。

バイオ繊維への切り替え

石油由来の合成繊維は、環境負荷の大きい繊維として知られていますが、天然繊維や植物由来繊維などに切り替えることで、化石資源を減らすことができます。また、植物由来繊維の中には、持続可能な原料を使用して生成されるものもあります。

例えば、木材パルプを使用して作られる再生繊維のリヨセルは、森林伐採で採取されるのではなく、管理の上育てられた原料から作られています。そのため、森林破壊に繋がらない「持続可能な木材」を原料として作られます。また、パルプの原料であるユーカリの木は、成長が早く、殺虫剤や化学肥料も不要なため、土壌汚染に繋がらず、循環して同じ土地で栽培することができるのです。このような持続可能な原料を使用した繊維へ切り替えることで、リサイクル化の代わりに環境負荷を低減することができるでしょう。

まとめ

POINT

リサイクル繊維の枯渇問題

  • リサイクル化の加速
  • ペットボトルリサイクルの繊維化の廃止
  • リサイクルよりリデュースへ

リサイクル繊維の枯渇→次のステップとは?

  • リサイクル回収の強化
  • バイオ繊維への切り替え

ようやくリサイクル繊維の商品化が進み、店頭でも見かけるようになったかと思えば、新たな課題が出てきました。しかし、よりよい社会や環境を目指して、常に悩みながらモノつくり・消費していくことは必要不可欠です。

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