減量加工とは?原理や効果とは?

    生地の加工法の一つに「減量加工」という加工があるのは、ご存じでしょうか?「減量加工」は風合いに影響を与える加工法で、減量加工によって別物の生地に仕上げることができます。

    今回は、この「減量加工」について紹介したいと思います。

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    減量加工とは?

    減量加工

    減量加工とは、合成繊維のポリエステルに施される加工法で、減量することで、柔らかい風合いに仕上げることができる加工法です。ポリエステルは、同じ合成繊維のナイロンと比べると、剛直性があるので、硬い風合いになります。減量加工は、主にアルカリ液(苛性ソーダなど)を使用して、ポリエステルの繊維の表面を溶かすことで、柔らかい手触りに仕上がるのです。

    この減量加工によって、高級品であるシルクのような風合いに近づくとして、脚光を浴びた加工法です。安価で供給量の安定しているポリエステルにさらなる付加価値を与えることができるため、ファッション向けの生地には多く取り入れられる加工の一つです。

    減量加工の原理

    減量加工とは、どのような原理で柔らかい風合いをもたらすことができるのでしょうか?

    減量加工では、強いアルカリ液を使うことで、糸の表面の加水分解を促進させます。ポリエステル繊維は、エステル結合にて、ポリマーが構成されていて、アルカリでの加熱処理をすることで、加水分解反応が起きるのです。この性質を利用して、ポリエステル繊維のアルカリ減量加工が生み出されました。

    加水分解の反応のスピードは、繊維のデニール数(表面積)や共重合成分が含まれているのかなどによっても変わります。また、アルカリ液の濃度でも仕上がりの風合いや加水分解の進行度合いも異なります。減量の度合いは数%~50%くらいまでの減量率があり、素材によって使い分けられています。

    求める風合いに合わせるには、このように素材によって反応スピードが異なることも計算に入れながら、適した分量でのアルカリ液と時間処理のコントロールが必要になります。職人の経験や知識と技術が要求されます。

    減量加工がもたらす効果とは?

    風合いが柔らかくなる

    アルカリ減量処理を行うことによって、表面の繊維が加水分解することで溶けだし、柔らかい風合いに仕上げることができます。減量加工を行う主な理由が、この風合いの変化によるものです。シャリ感が強く硬いポリエステルの風合いを、柔らかくシルキータッチすることができるのが最大の魅力です。

    繊維を細くできる

    減量率を高くすればするほど、繊維が分解されることで細くなります。繊維1本1本が細く、柔らかくなることで、生地全体が柔らかな風合いに繋がります。

    軽くなる

    減量加工によって、繊維の表面が溶けだしているため、高い減量率で加工された素材は、加工前より加工後の方が軽くなります。ほとんどの場合は、染色などで染料が含まれたり、撥水処理などで撥水剤が塗布されることによって、加工後の方が生地は重く仕上がります。しかし、減量加工は名前の通り、生地を瘦せさせる分、軽く仕上げることができます。

    ドレープ性がでる

    繊維が芯を無くして柔らかくなることで、ストンと生地が落ちるようなドレープ性のある生地になります。繊維が細くなることは、曲げることに対する抵抗も減るので、ドレープ性のある生地に仕上がります。

    ドレープ性があることで、女性らしさを感じることができたり、服作りのシルエットが美しくなるので、スカートやドレスなどには、落ち感は重要な要素の一つになります。

    透け感がアップする

    糸が細くなるので、生地に透け感が出ます。特に細いデニールで粗い密度で作られる生地は、透け感が強くなるでしょう。透け感があると軽やかで、涼し気な印象になるので、春夏向けに活躍する生地に仕上がります。

    強撚糸との相性がいい

    ポリエステルの強撚糸は、元から硬めのポリエステル繊維をさらに硬くしてしまうので、一部の強撚糸はファッションには適さないものもありました。しかし、この減量加工が発明されてから、強撚糸の風合いも非常にソフトに心地よい肌触りにすることができるようになり、強撚糸の用途の幅が広がりました。強撚糸を使用して作られる、シフォン生地やジョーゼット生地などに、減量加工を施すことで、ドレープ性の高い柔らかい生地に仕上げることができ、ブラウスやドレスなどの多くの衣料品に使用されるようになりました。

    減量加工の注意点

    強度が低くなる

    減量加工することは、糸が痩せてしまうので、その分どうしても強度低下に繋がります。特にもともと細い糸の場合は、減量することで、手で引き裂けてしまうほどの強度に落ち込んでしまう可能性もあります。日常のちょっとした引っかかりでも破けてしまう服は、怖くて着てられませんよね。

    ある程度の強度を残すためにも、どのようなデニール数の生地で、どのような組織で作られた織物またはニットなのかによって、減量率を加減しなければなりません。そのため、減量は高い技術が要求され、加工場さんの中でも経験豊富な方が加工のコントロールを担うことが多いそうです。減量率を上げれば上げるほど、柔らかい手触りに仕上げることもできますが、強度や物性面のバランスを取ることが技術者の腕の見せ所になります。

    糸がスリップしやすくなる

    減量することによって、スリップ(糸が滑ること)しやすくなります。手で左右に開いた際に、糸が滑って本来の位置からずれてしまうことにより、部分的に繊維が寄ったり、穴が開いたように見えてしまう可能性があります。組織にも影響しますが、元々甘い密度のものは減量によってさらに糸がスリップしやすいので注意が必要になります。この点も職人の腕が試されるところでもあり、減量加工の難しさでもあります。減量加工した生地は、このスリップの抵抗力を表す「滑脱抵抗試験」で、品位を確認しておいた方がベターです。

    まとめ

    POINT

    減量加工

    • 合成繊維のポリエステルに施される加工法
    • 柔らかい風合いに仕上げることができる加工法

    減量加工がもたらす効果とは?

    • 風合いが柔らかくなる
    • 繊維を細くできる
    • 軽くなる
    • ドレープ性がでる
    • 透け感がアップする
    • 強撚糸との相性がいい

    減量加工の注意点

    • 強度が低くなる
    • 糸がスリップしやすくなる

    ポリエステルは、同じ合成繊維のナイロンと比較しても硬い繊維のため、着用するとシャカシャカ音がなったり、パリパリした風合いの印象があります。そのため、風合いの観点から、ナイロンが使用されたり、天然繊維が使用されたりするケースも多かったようです。減量加工が登場して以降は、加工で風合いをコントロールできるようになり、ポリエステル繊維の使用の幅をさらに増やす結果に繋がったと言われています。

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