無地もいいですが、柄物も素敵ですよね。個性を表現したり、ありきたりな印象を変えてくれたり、気分を上げてくれたりと様々な視覚効果があります。
デザインの幅を広げてくれる加工はたくさんありますが、今回はその中のひとつ、「オパール加工」について紹介したいと思います。
「オパール加工」とは?
オパール加工
オパール加工とは、織物に薬品を使って部分的に溶かすことで、模様をつける加工方法です。部分的に溶かすことで、生地に透け感を持たせたり、立体感のある3D模様をつくることができます。宝石のオパールが由来で、本来は生地にオパール調の模様を出すオパール捺染という意味から名付けられました。熱を加えて加工することから、英語では「Burn-Out Finishing(バーンアウトフィニッシング)」と呼ばれています。
通常、このように部分的に透かしたり、模様を作ったりするには、ジャガード織機を使って作られるジャガード織物が代表的です。ジャガード織物は、織技術でプリントのようなデザイン性のある柄を再現した生地で、織物の組織を変えながら柄を作られます。それに対して、オパール加工は、織り上がった生地に後加工で模様をつけていきます。
オパール加工の素材
オパール加工の素材には、酸に強い「ナイロン」「ポリエステル」「シルク」などの繊維と、酸に弱いセルロース系の「コットン」「レーヨン」「キュプラ」などの2種類の繊維を使って作られた生地に加工を施します。これらの2種類の糸を合撚(2種類以上の糸を一緒に撚り合わせて撚糸すること)したり、カバリング(芯糸に鞘糸を巻きつけた糸)や交織することで、作られる生地に対して、オパール加工は施されます。
オパール加工の製法
代表的な加工のやり方は下記の製法で行われます。
① 薄い硫酸で作った酸性の糊を使って模様をプリントします。(素材によっては、異なる薬品が使用されることもあります。)
② 熱をかけて、酸に弱いセルロース系繊維を炭化する性質を利用して、繊維を溶かします。
炭化 有機物が加熱によって熱分解反応を起こし、炭素分に富んだ物質に変化することを指します。
③ 炭化した部分を取り除き、酸に強い繊維だけを残すことで、部分的に透け感のある生地を作り出します。
オパール加工のメリット
プリントのような柄模様を作れる
組織を工夫しなくても、プリントのような模様を作り出せます。ジャガード組織よりも自由度は高く、スクリーンプリントやデジタルプリントのよりも立体感があるので、ジャガード織物とプリントのいいところ取りをしたような仕上がりです。通常のプリントに飽きた方には、おすすめの加工法です。
立体感のある模様ができる
溶ける繊維と溶けない繊維を組み合わせることで、凹凸が生まれ、立体感のある生地に仕上がります。
ベルベットなどの表面に毛羽のある生地をコットンやレーヨンの繊維にすることで、より模様に立体感をつけることができます。奥行きが出るので、フラットな生地より、高級感のある雰囲気を演出してくれます。
透け感が出る
溶かした分が透けるので、春夏にぴったりの清涼感のある生地に仕上がります。穴をあけた加工もできるので、レース生地のような模様もオパール加工で作ることができます。女性向けのワンピースやブラウス、カーテンなどにも使用される加工法です。
溶けた繊維分だけ軽くなる
炭化して溶けた繊維の分だけ軽くなります。通常のプリントであれば、模様を付けても軽くなることはありませんが、繊維を溶かすオパール加工では、生地を軽くすることができる点もメリットのひとつです。
フェミニンな印象を与える
透け感があることで、女性らしい雰囲気が出ます。水玉や花柄などを組み合わせるとさらにフェミニンな印象を与えることができます。透け感のあるオーガンジーのような素材に柄を付けて、ブライダルドレスなどにも使われています。女性らしさを引き立たせてくれるとして、晴れ着やイベントドレスに大活躍する加工法です。
デザインの幅が大きく広がる
プリントのような柄、立体感、素材の組み合わせ、組織の組み合わせによって、デザインの幅が大きく広がります。薄地や厚地生地、柄を変えたり、色を変えることで、同じオパール加工でも、別物の仕上がりになります。オリジナリティ溢れる生地も作れるので、他と被りたくないデザインをしたい方にもおすすめです。
オパール加工のデメリット
強度は弱くなる
溶けてしまう分、強度は下がってしまいます。組織の工夫をしたり、溶かすパーツの模様を考えながら作らないと、破れやすい生地に仕上がる可能性があります。
下記の写真のように地の生地(溶けない生地)をしっかり残すことで、強度低下を防ぐことができます。
ベルベット生地は、基布に溶けない繊維を使用することで、穴が開くような不安定な組織になりません。パイル部分だけ模様をつけることで、オパール加工の良さを引き出しながらもデメリットをある程度カバーできます。
素材が限られる
オパール加工の製法上、酸に強い繊維と、酸に弱い繊維のコンビネーションでないと加工することができません。素材が限定されるので、好きな素材の組み合わせや、肌触りや風合いを好みの仕上げにできない可能性があります。
糸ほつれに注意が必要
規格にもよりますが、薄い生地の場合は洗濯時や摩擦によって糸ほつれが起きる可能性があります。薄い生地をさらに、薬品で溶かして薄くするので、生地の強度は弱くなります。そのため、摩擦などの影響を受けると糸切れを起こし、ほつれる可能性も考えられます。
また、穴の開いた模様の場合、その穴から引っかかることで、糸ほつれを引き起こす可能性があります。カーテンなどのように固定の場所で使用する分は問題ありませんが、衣料品のように動き回る生地は注意が必要です。
まとめ
オパール加工
- 織物に薬品を使って部分的に溶かすことで、模様をつける加工方法
オパール加工素材
- 酸に強い繊維と、酸に弱いセルロース系の繊維の2種類を使う
オパール加工の製法
- 薄い硫酸で作った酸性の糊を使って模様をプリント
- 熱をかけて、酸に弱いセルロース系繊維を炭化させる
- 炭化した部分を取り除き、酸に強い繊維だけを残す
オパール加工のメリット
- プリントのような柄模様を作れる
- 立体感のある模様ができる
- 透け感が出る
- 溶けた繊維分だけ軽くなる
- フェミニンな印象を与える
- デザインの幅が大きく広がる
オパール加工のデメリット
- 強度は弱くなる
- 素材が限られる
- 糸ほつれに注意が必要
柄を作ると言えば、プリントがまず思いつくかもしれませんが、平面的なデザインで物足りなさを感じることもあるかもしれません。そんな時は、オパール加工も検討してみてはいかがでしょうか?