「短繊維綿」「中繊維綿」「長繊維綿」の違いと特徴とは?

カジュアルなシャツから、ビジネス用に着るYシャツなど、身近にあるあらゆる衣料品には、コットンが使われていますよね。一言でコットンと言っても、カジュアルからフォーマルまで幅広い用途に使用され、さまざまな表情のあるコットン。実は、コットンの中でもたくさんの種類があります。 今回は、コットンのバリエーションについて、紹介していきたいと思います。

目次

コットンの種類とは?

コットンの分類

綿花は、繊維の長さの違いで大きく3種類に分類されます。

  • 短繊維綿:21mm以下
  • 中繊維綿:21-28mm程度
  • 長繊維綿: 28mm以上

コットン自体は、短繊維で元々繊維長としては長くありません。そのため、ほんの数ミリの違いでも「短繊維綿」「中繊維綿」「長繊維綿」に分けられます。少しの差に感じるかもしれませんが、糸の性質や特徴は大きく変わります。基本的には、繊維の長さが長いほど、繊維が細く繊細になり、上質でランクが上がります。

短繊維綿

短繊維綿の繊維長は、21mm程度を下回る繊維に該当します。紡績には向かず扱いづらいため、糸にされることはなく、クッションや布団の中綿などに使用されることが多いです。

有名な糸では、インドやパキスタンなど南アジアで栽培される「デシ綿」が挙げられます。太くて繊維の短いデシ綿は、弾力性に富んでいて、クッション用途としては最適です。また、コシのある繊維で、医療用の脱脂綿などにも使用されます。

繊維綿

中繊維綿の繊維長は、短繊維綿と長繊維綿の間に位置する21~28mm程度の綿を指します。繊維が細く柔らかいので、衣料品や化粧品のコットンパフなどに使用されます。コットン全体でも、中繊維綿が大部分を占めていて、衣料品のほとんどは、この中繊維綿が使われています。衣料品以外にも、身近なコットン製品には、この中繊維綿がたくさん使用され、コットン=中繊維綿と言っても過言ではありません。

世界のコットン製品の9割近くを占めていると言われているのが、中繊維綿である「アップランド綿」です。原産地はメキシコですが、現在ではアメリカ・オーストラリア・中国・インドなどの地域でも栽培されています。流通数も多く、比較的に安価に取引されています。

長繊維綿

長繊維綿は、28mm程度の繊維長を超えるもので、生産量も少なく希少で高級品として扱われています。長繊維綿の中でも特に繊維長が35mmを超える綿を、超長綿と呼ばれています。繊維が長いことに加えて、繊維が細く繊細で、シルクのような肌触りが特徴です。肌触りの良さと、コットンの特徴でもある吸湿発散性から、高級寝具などに使用されます。

アメリカが産地の「スーピマ綿」は、繊維長が35mm~40mmで、長繊維の中でも超長綿に該当します。スーピマ綿の名前の由来は、「Superior Pima(高級なピマ綿)」から来ていて、その名の通り、最高ランクのコットンです。ピーマコットンという綿花の品種の中でも、アメリカ西南部で栽培された超長綿繊維に限定されたピーマコットンを指します。生産量は、コットン全体の1%も満たず、希少価値の高い品種です。

同じく長繊維綿で有名な「ギザ綿」は、エジプトで採取される貴重な超長綿で、カシミヤのようなやわらかな風合いと、シルクのような美しい光沢を持ち合わせています。

スーピマ綿」と「ギザ綿」は、中国の「新疆綿(しんきょうめん)」と並ぶ世界三大綿としても知られています。

「カード糸」・「コーマ糸」とは?

カード糸(Carded Yarn)

コットンの糸を作る際に、綿繊維を撚り合わせた糸の表面上に出る不要な繊維を取り除く工程を「カーディング工程」と呼びます。カードと呼ばれるカーディングの機械には、剣山のような針がついています。この針のついたロールを回転させることで、綿の繊維を1本1本分離して、平行に引き揃えていきます。このカーディング工程で、細かいゴミや不要な繊維を除去していきます。カード糸とは、このカーディングの工程がされた状態の糸を指します。

表面に出る糸は、あまり取り除かれないため、毛羽が多い糸に仕上がります。カ―ディング工程で取り除かれる不要な表面繊維は、約5%程度となります。カード糸は太番手の糸が多く、繊維長も短めの糸に仕上がります。糸が太く、光沢感が抑えられた毛羽の多いカード糸は、コットンの中でも特に、カジュアルな印象を与えます。

カード糸で使用される綿の多くは、中繊維綿のアップランド綿です。カード糸は、太くて丈夫なため、耐久性や強度に優れています。

  • 毛羽が多い
  • 光沢感がない
  • カジュアルな印象
  • 硬めの風合い
  • 丈夫な生地に仕上がる
  • 安価である

コーマ糸(Combed Yarn)

「コーマ糸」は、先ほどの「カード糸」のカーディング工程に加えて、「コーミング」と呼ばれる工程で、繊維を削って伸ばす工程が施された糸です。髪の毛をくしで梳くように、表面が整えられます。

この工程により、カ―ディングでは取り除ききれなかった不要な糸を落とし、より均整な糸に仕上がります。コーミング工程で、表面の不要な繊維は約20%取り除くことが可能と言われています。この工程のおかがでコーマ糸は、カード糸よりも毛羽が少なく、ツヤのある上質な糸になります。

コーマ糸は、カード糸に比べて除去される糸が多い分、1つの綿花から採取できる糸の量も少なくなります。また、工程も多いことから、コーマ糸はカード糸よりも高級な糸になります。 綿花の原料は、中繊維綿や長繊維綿が使用されます。繊維長が長く、毛羽の取り除きもされるので、艶のある柔らかい糸に仕上がります。特に長繊維綿が原料の場合、糸自体に光沢感があり、原料自体の品質もいい高級品のため、シルクのような滑らかな仕上がりになります。洗濯後も、毛羽が出にくいので、清潔できれいな状態を保てます。

  • 毛羽が少ない
  • 光沢感がある
  • 上品な見た目
  • 糸が細く、柔らかい
  • 高級な糸

「カード糸」も「コーマ糸」も、それぞれの良さがあります。どのような見せ方や手触りにしたいかで、原料や紡績工程を使い分けることで、コットンの魅力を最大限に引き出すことができます。

まとめ

POINT

コットンの分類

  • 短繊維綿:21mm以下
  • 中繊維綿:21-28mm程度
  • 長繊維綿: 28mm以上

カード糸

  • カーディング工程が施された糸
  • 毛羽が多く、カジュアルな仕上がり、丈夫な糸

コーマ糸

  • コーミング工程が施された糸
  • 毛羽が少なく、光沢感がある、上品で柔らかく高級感のある仕上がり

コットンと一括りに言っても、繊維長の長さだけでも、大きく特徴が変わります。ほんの数ミリの差が、使用用途や風合いなど、ここまで大きな差が出るのは、驚きではないでしょうか?

カジュアルから高級感のある仕上がりまで、さまざまな表情を持つコットンの万能性を紹介させていただきました。

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