オーガニックコットンとは?通常のコットンとの違いとは?

天然繊維の代表格と言えば、コットンではないでしょうか。
最近ではSDGsの発足によるサステイナブル思考が高まり、天然繊維の中でも、さらに自然環境や労働環境に配慮された「オーガニックコットン」が注目を浴びています。
そんなオーガニックコットンとはどのような繊維でしょうか?通常のコットン栽培と比較しながら、見ていきましょう。

目次

コットン栽培の現状・真実

農薬・化学肥料 

コットンに対して、”天然繊維で環境に優しいといったイメージ”を持っている人は少なくないかもしれません。

ですが、実は世界の農薬の40%が綿花栽培に使用されていると言われるほど、膨大な量の農薬や化学肥料を使って育てられているのです。農作物の中で最大級の農薬使用が使用されています。中には未だに人体に悪影響を及ぼす毒性の強い薬品が使用されることもあるようです。

劣悪な労働環境

コットン農家の労働環境は、過酷な上に低賃金で働くといった劣悪な環境だと言われています。

体に悪い薬品を使用するにも関わらず、農薬について正しく理解する勉学の機会が与えられず、貧しい農家では防護服が買えずに体調を崩すこともまれではありません。毎年多くのコットン農家が中毒死でなくなっているのが現状です。

正しく理解されていないため、使用済み薬品の瓶やボトルが捨てられ、それを拾った人が水を組む容器として使用されることもあります。危険な薬品と知らずに、その容器で水を飲み、健康被害が報告されるケースもあります。

また、途上国では学校で教育を受けられずに、コットン栽培で働く児童労働問題もあります。このような過酷で重労働な労働環境のため、まだ体の小さい子どもたちが毎年たくさん命を落としています。

コストダウン

コットンの栽培地の99%がアジア・アフリカや南アメリカなどのコストが安い貧しい国で栽培されます。

コットンの種や、農薬などの値段が高騰しているにも関わらず、収穫したコットンの売値は下がっている傾向にあります。そのため、多くの貧しいコットン農家は借金に苦しんでいるのです。

コットン栽培には大量の化学薬品が必要なためコストがかかります。また、化学薬品を大量に使用し続けることにより、土壌の劣化が始まり、収穫量が縮小していくのです。労働賃金カットに加え、薬品の高騰、収穫量の低下となれば、借金を抱えてしますのにもむ売りはありません。

毎年数千人のコットン農家が、借金を理由に自らの命を絶つ選択をしていると言われています。いかにコットン農家が苦しい環境にいることが、一目瞭然ですよね。

オーガニックコットンとは?

オーガニックコットンとは?

オーガニックコットンとは、厳しい基準にクリアした一部のコットンのことを指します。

2-3年以上農薬や化学肥料を一切使わずに、有機肥料のみで育てられた綿花のことです。また、環境だけではなく、農家の労働環境も配慮され、この基準を満たしたものがオーガニックコットンとして、生産されるのです。

コットン産業の中で、オーガニックコットンの割合は1%以下だと言われています。残りの99%は非オーガニックであり、大部分が上記で述べた環境の中で収穫されています。コットン農家たちを守るためにも、オーガニックコットンの市場拡大が広がることを願います。

オーガニックコットンの認証機関はいくつかありますが、代表的な認証機関である「OCS(オーガニック・コンテント・スタンダーズ)」や「GOTS(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)」が有名です。これらの認証機関の基準をクリアしたものだけが、オーガニックコットンとして商品化されます。

コットンとオーガニックコットンの違いとは?

コットンとオーガニックコットンが製品になった際に見分けることは容易ではありません。

では具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

生産工程

まずなんといっても、栽培方法が異なります。

上記でも述べた通り、通常のコットンは農薬や化学薬品を大量に使用して育てられます。しかし、オーガニックコットンの場合は、農薬や環境に悪い薬品の使用が禁止されています。

通常のコットンオーガニックコットン
化学肥料使用する使用しない
防虫対策防虫剤・殺虫剤の使用植物由来の防虫エキス等の
使用
除草対策除草剤使用手作業での除草
収穫方法落葉剤を使用して、葉や茎を
枯らして機械で刈り取りする
状態を見分けながら、手作業で収穫
染色方法漂白剤を使用して、染料を
入りやすくする
化学薬品を使用しない
天然染料や無染色

環境汚染・人体負荷

通常のコットンとオーガニックコットンで、環境や人体負荷がどのように差が出るのでしょうか?

通常のコットンオーガニックコットン
土壌汚染化学薬品により、劣化有機肥料のみのため、
環境に優しい
水質汚染化学薬品により、汚染する農薬を使用しないため、
水質汚染に繋がらない
水の消費量大量に消費する雨水使用を推奨されているため、
節水できる
空気汚染殺虫剤などの大気汚染により、
奇形児や健康被害を受ける
化学薬品を使用しないため、
空気汚染に繋がらない
薬剤残留洗い工程でも取り切れない薬剤が
残留したまま服になることも
化学薬品を使用しないため、
人体負荷がない

コットン栽培には大量の水が使用されます。コットン栽培が盛んなカザフスタンとウズベキスタンにまたがる「アラル海」は、コットン栽培の影響により、ほぼ消滅の危機にあります。アラル海は世界で4番目に大きい塩湖で、1960年代には6万8,000㎢の面積がありましたが、今や3,300㎢と20分の1のまで縮小してしまいました。これはたった40年で、東北地方全体の面積が鳥取県の面積まで、塩湖面積が減ったことになります。

オーガニックコットンでは雨水の利用を推奨されています。これにより、通常のコットンより約90%も使用水量を抑えることができています。世界の水を残すためにも、オーガニックコットンの市場拡大が望まれます。

まとめ

POINT
  • コットン栽培の真実
    – 99%のコットンは、環境汚染や劣悪な労働環境の元で生産されている
  • オーガニックコットンとは、化学薬品を使用せず、労働環境も配慮されたコットン
    • 土壌・水質・大気汚染を防げる
    • 水の消費量を90%も抑えられる
    • 農薬を使用しないため、衣料品に化学薬品が残留することがない

私たちの身近なコットン衣料の生産背景を知って、驚いた方もいたかもしれません。

天然繊維であるコットンの99%は、厳しい環境の中で育てられています。オーガニックコットン生地の採用や、消費者として買うことによって、環境だけではなく、コットン農家の人たちを守ることができます。健康被害に悩む農家や、まともに勉学を受ける機会を得られないまま亡くなる子どもたちのためにも、私たちができることから取り組んでいきましょう。

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