前回は、シルクの歴史や紡糸などの製法に着目してお伝えしました。今回は、シルクの具体的な性質や特徴にフォーカスをあててみたいと思います。
シルクには、衣料品にするにはもってこいの要素がたくさんあります。そんなシルクのメリットとデメリットについて紹介したいと思います。
シルクの特徴とは?メリットとデメリットとは?
シルクのメリットとは?
シルク繊維は他の繊維にはないくらい、たくさんの優れた性質を持っています。
天然の長繊維
シルクは、天然繊維の中でも唯一の長繊維です。化学繊維は、薬品などを多く使用するので、人体に悪影響を及ぼしたり、環境の悪化にも繋がります。シルクは天然繊維のため、そのような懸念はなく、人にも環境にも優しい繊維です。
敏感肌にも優しい繊維
シルクは人の肌にも近い成分で構成されているので、繊維の中でも特に肌への刺激が少ないです。多くの敏感肌の人にも愛用されていて、最近では不織布マスクの肌荒れから悩む人のために作られたシルク製のインナーマスクがとても人気を集めています。不織布マスク指定の会社もあるので、肌荒れを救う救世主として、シルクが注目されています。
うるおいを保つ
化粧品にも使用されるシルクは、体のうるおいを保つ性質を持ち合わせています。シルクには、人の肌の成分に近いアミノ酸でできていて、コラーゲンの主な成分となるアミノ酸が含まれています。この天然のアミノ酸によって、肌に優しくうるおいを保持する効果が期待されています。肌をいたわるためのパジャマや髪を保護するナイトキャップや枕カバーなどにも使われていて、保湿の高さから、肌や髪への変化を感じる方は多くいらっしゃるようです。
静電気が起きにくい
シルクは静電気が発生しにくい繊維です。冬場によくある「バチッ」とくる静電気は嫌ですよね。さらには静電気が起きにくいことで、ほこりやダニなどが吸着しづらく、生地の表面を清潔に保つことができます。
美しい光沢感
シルクと言えば、美しい光沢感を思い浮かべるのではないでしょうか?光沢感=シルクが浸透しているので、他の光沢を持つ繊維も、頻繁に「まるでシルクのような光沢感」などと表現されることが多々見られます。それほど、代表的な特徴の一つです。
ちなみにほとんどのシルクは光沢感がありますが、精練工程でフィブロインを覆うセリシンを取り除くことで光沢が生まれます。セリシンを取り除き、三角の形状をした断層のおかげで、プリズム効果が発揮され、光を乱反射することで光沢を強く感じることができます。
吸湿性と放湿性がある
シルクは、天然繊維に見られる吸湿性と放湿性に優れた繊維です。汗や水分を素早く吸収して、そとに放出する力を持っています。そのため衣服内がムレにくく、快適な着心地を保ってくれます。夏場の暑い季節や、就寝中は汗をかきやすくなるので、パジャマとしても活躍してくれます。
保温性に優れている
シルクはあまりイメージがないかもしれませんが、保温性にも優れています。シルクの繊維には、細かい孔があいている多孔質構造となっているので、空気を多く含み断熱性に優れています。温かい空気を外に逃がさないので、保温性に優れています。
通気性に優れている
シルクの繊維は通気性に優れているので、衣服内のムレを抑制してくれます。また濡れても、通気性がいいことで、速乾性を期待できます。
強度が強い
シルクの糸は、非常に細いのですが、その細さとは裏腹に糸自体の強度は高く丈夫な素材です。天然繊維は、合成繊維と比べると強度の弱さが懸念されますが、シルクは天然繊維の中でも特に丈夫です。引っ張っても糸切れが起きにくいので、衣料品を作る上では頼もしい強度があります。
心地です。さらには、その糸の細さとは裏腹に、引っ張りに対する繊維の強度が強いため、衣服を作る上では、強い味方の繊維です。
ソフトな風合い
シルクの繊維は非常に細いので、1本1本がしなやかで柔らかい繊維でできています。そのため、生地の仕上がりも非常に柔らかく、心地のいい風合いをしています。快適な着心地には、ソフトな風合いは重要視されるので、シルクの製品は病みつきになる着心地に仕上がるでしょう。
紫外線を吸収する
シルクを作る繭は、サナギを守るために作られています。そのためサナギの間、紫外線からダメージを受けないように、シルクの繊維には紫外線を吸収する力が備わっています。
染色性が高い
シルクは染料の入りがよく、染まりやすい繊維です。鮮やかで美しい色に仕上がるので、染色しても楽しめる天然繊維です。
シルクのデメリットとは?
シルクにはさまざまなメリットが多くありますが、やはりデメリットな点も存在します。どのような点を気を付けるべきなのでしょうか?
黄変しやすい
シルクは、紫外線を吸収しやすい分、黄変しやすい繊維です。黄変とは、生地が時間が経つに連れて黄色く変色してしますことを指します。真っ白な服を買ったのに、時間が経つにつれて黄ばんでしまった経験はないでしょうか?ナイロンなどの繊維も黄変がしやすいのですが、シルクも同じく黄色く黄変しやすい繊維として知られています。
水に弱い
シルクは、水に濡れると縮みやすい特徴があります。そのため、多くの製品のケアインストラクションでは、洗濯機を使用して長時間洗うのではなく、手洗いで優しく洗うことが推奨されています。水分が部分的につくと、シミのように残ってしまう可能性もあるので、シルク製品を洗う際は注意しましょう。
摩擦に弱く、デリケート
シルクは繊維が細く、束にして紡糸されますが、その繊維の束が摩擦の影響で、外に飛び出すと毛羽立ってしまいます。
虫食いの懸念がある
シルクはタンパク質でできているので、合成繊維とは違い、虫食いの可能性があります。風通しのいい日陰で定期的に干すことで、害虫から守ってくれます。
カビが生える
湿気の多い場所で保管するとカビが発生する可能性があります。シルクの保管には注意を払う必要があります。
まとめ
シルクの特徴:シルクのメリット
- 天然の長繊維
- 敏感肌にも優しい繊維
- うるおいを保つ
- 静電気が起きにくい
- 美しい光沢感
- 吸湿性と放湿性がある
- 保温性に優れている
- 通期性に優れている
- 強度が強い
- ソフトな風合い
- 紫外線を吸収する
- 染色性が高い
シルクの特徴:シルクのデメリット
- 黄変しやすい
- 水に弱い
- 摩擦に弱く、デリケート
- 虫食いの懸念がある
- カビが生える
シルクは、天然繊維でありながら、フィラメント糸で、強度も高い、合成繊維の要素も持ち合わせている繊維とあって、さまざまな特徴を持ち合わせている繊維です。肌にも、環境にも優しい上に、機能面でも多くの魅力があります。手入れさえしっかり行えば、メリットだらけの優れた繊維なのです。