サテン生地とは?由来やベネシャン、ドスキン、ラチネとの違いとは?

「サテン」生地といえば、ドレスやスカーフなどによく使用される生地です。結婚式で花嫁が着る美しいドレスなど様々なシーンで私たちの生活に溶け込んでいます。

今回は、「サテン」生地の魅力について紹介したいと思います。

目次

サテン生地とは?

サテン

サテン(Satin)は、独特の光沢感と滑らかな質感を特徴とする織物の一種です。サテンという名前は、素材そのものを指すのではなく、織組織の名前です。平織、綾織と並んで「三原組織」と呼ばれ、織物の中でも最も基本的な織り方の一つでもあります。朱子織り(しゅすおり)と呼ばれる技法を使用しており、この織り方によって表面が非常に滑らかで光沢が生まれるのが特徴です。

サテンは、元々シルクを素材として作られることが一般的でしたが、現在ではポリエステルやナイロン、さらにはレーヨンなどの合成繊維を使用したサテン生地も広く普及しています。このように、素材の種類によって仕上がりや特性が異なるため、さまざまな用途に対応できる汎用性の高さが魅力です。

サテン組織の特徴

サテン織りは、経糸(たていと)または緯糸(よこいと)を長く浮かせる織り方です。3本飛んで交差する「3本上/1本下」の場合、「4枚朱子」と呼びます。飛ばした糸の本数によって名前が変わります。経糸を浮かせたものを経朱子、緯糸を浮かせたものを緯朱子と呼びます。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の交差点が少ないため、どちらか一方の糸のみが表面にでることで、滑らかで均一な表面が作り出されます。この織り方により、以下のような特徴が生まれます。

  • 表面の光沢: 経糸が浮いているため、光を反射しやすく、光沢が際立ちます。
  • 裏面のマットな質感: 表面とは対照的に、裏面は光沢が少なく、マットな仕上がりとなります。バックサテンシャンタンなど企画によっては、あえて裏使いをすることもあります。
  • 高級感: 見た目に上品で豪華な印象を与えるため、高級品に多く使用されます。
  • スナッギング:サテンのデメリットとして、経糸と緯糸の交点が少ないため、ひっかりやすいという欠点があります。スナッグ試験をする場合もあります。

バックサテンシャンタン

サテン生地の由来

発祥は中国

サテン生地の歴史は非常に古く、発祥は中国とされています。サテンという名前は、かつて中国の港町であった「泉州(Quanzhou)」のアラビア語表記「Zayton(ザイトン)」に由来しており、古代から東西を結ぶシルクロードを通じて広まったことがわかります。この背景から、サテンはシルクを使った贅沢な素材として世界中で評価されました。

中世ヨーロッパへの伝播

サテン生地は、12世紀ごろにアラビア商人を通じてヨーロッパへ伝わりました。当時は、シルクを素材とするサテンは非常に高価であり、主に貴族や上流階級向けの衣服や装飾品に使用されていました。特に、教会で用いられる祭服や宮廷のガウンなど、格式の高い場面で重宝されていたのが特徴です。

世界的な広がりと変化

産業革命以降、繊維産業の技術が発展し、シルク以外の素材を用いたサテン生地が製造されるようになりました。ポリエステルやナイロンといった合成繊維の登場により、サテンは一般消費者にも手の届く素材へと変化を遂げました。

日本での歴史

日本では、京都北部にある丹後産地などシルク生産が盛んな生地産地を中心にサテンが利用されてきました。特に江戸時代には、絹織物としてのサテンが着物の裏地や装飾品に使用され、明治時代以降は洋装の普及に伴い、ドレスやスカーフなどのファッションアイテムとして取り入れられるようになりました。その後、人工絹糸と呼ばれたレーヨンの製造からシルクを合繊に置き換えたサテン生地の生産が活発になりました。シルクに近い、上質な素材感と扱いの良さ、コストダウンを可能にしたため、帝人、三菱レイヨン(現在の三菱ケミカル)、クラレなど現代の日本の大手合繊メーカーを中心に普及していきました。特にトリアセテートは三菱ケミカルが「ソアロン®」というブランド名で展開しており、トリアセテートサテンは海外メゾンでも採用されるベストセラー商品となっています。


サテン生地の特徴

光沢感と滑らかさ

サテン生地の最大の特徴は、表面の光沢感と滑らかな手触りです。織り方によって経糸(または緯糸)が表面に多く現れるため、光を反射しやすく、見た目に豪華で高級感があります。このため、パーティードレスやランジェリーなど、エレガントさを求められる衣料品に多く使用されます。

ドレープ性

サテンは柔らかく、しなやかな生地であるため、自然に流れるようなドレープを作り出すことができます。この特性により、滑らかな曲線を活かしたデザインや、体のラインを美しく見せる衣服に適しています。

サテンのデメリット スナッギング

サテンのデメリットとして、経糸と緯糸の交点が少ないため、ひっかりやすいという欠点があります。用途によっては、事前に検査機関でスナッグ試験をしておいたほうがいいでしょう。

サテンのデメリット 欠点が目立ちやすい

フラットな外観のため、欠点などがほかの組織に比べて、目立ちやすいです。シワになった場合も目立ちやすいため、扱いに注意が必要です。

サテン生地の用途

サテン生地は、その高級感のある光沢と滑らかな質感から、ファッションやインテリアなどさまざまな分野で活用されています。この章では、具体的な用途について詳しく解説します。

ファッション分野

サテンは、エレガントさと柔らかさを求める衣服に多く使用されています。

  • ドレス・ガウン
    サテン生地はパーティードレスやウエディングドレスによく使われます。その光沢が、上品で華やかな印象を与えるため、フォーマルな場に最適です。
  • ランジェリー
    滑らかで肌触りが良いため、ランジェリーやパジャマに採用されることが多いです。サテンの柔らかさは、快適さとともに高級感を提供します。
  • ブラウスやスカート
    サテンの光沢とドレープ性は、日常使いのブラウスやスカートにも適しています。特にシンプルなデザインの中にもエレガントさを演出したい場合に選ばれる素材です。

インテリア分野

インテリアアイテムにもサテンの魅力は活かされています。

  • カーテン
    サテン生地は、その光沢感が部屋を明るく見せる効果があります。また、ドレープ性に優れているため、窓辺に美しいラインを描くカーテンとして人気です。
  • クッションカバー
    ソファやベッドのクッションカバーに使われることも多く、部屋全体に高級感を与えます。
  • ベッドリネン
    サテンシーツや枕カバーは、その滑らかな肌触りがリラクゼーション効果を高めます。シルクサテンは特に人気があり、肌や髪に優しい素材として評価されています。また60、80番手の高密度の綿サテンも寝装品の定番規格で、P下(プリント用生地)としてもよく使われています。

特殊用途

サテン生地は、以下のような特定の分野でも活用されています。

  • 舞台衣装
    光沢が目立ちやすいため、ステージ用衣装に適しています。ライトを反射し、美しい演出効果を生み出します。
  • アクセサリー
    リボンやポーチなど、小物類にも使用されることが多く、ラッピング用のリボンはギフト包装用の素材としても人気です。
  • ハンドバッグやシューズの装飾
    サテンの滑らかさと光沢は、ハンドバッグやハイヒールのディテールとしても採用されています。

サテンとベネシャンとドスキンの違いとは?

サテンのほかにベネシャン、ドスキンも高級感のある光沢素材です。

ベネシャン

元々はコート、ジャケット用のウール生地でよく使われていました。高密度で急角度の畝が特徴の生地で、組織としては、「5枚サテン」のものが多いです。

ドスキン

ドスキンもウールの紡毛糸または、梳毛糸使いの礼服やオーバーコートなどに用いられるサテンのことを指します。ドスキンの由来は、外観が雌鹿の皮(doeskin)に似ていることから来ています。

ラチネ

ラチネ(別名、「トルコ朱子」)は、朱子織の一種でサテンと同様に光沢感と同時に、破れ綾と言われる組織感も感じられる組織です。

まとめ

POINT

サテン

  • 独特の光沢感と滑らかな質感を特徴とする織物
  • 経糸または緯糸を長く浮かせる織り方
  • 由来は中国からシルクロードを通して広まった

サテン生地の特徴

  • 光沢感と滑らかさ
  • ドレープ性
  • スナッギングに注意が必要

ベネシャンとドスキンとの違い

  • ベネシャン:サテンの一つ。高密度で急角度の畝が特徴の生地で、組織としては、「5枚サテン」のものが多い
  • ドスキン:ウールの紡毛糸または、梳毛糸使いの礼服やオーバーコートなどに用いられるサテン
  • ラチネ:別名、「トルコ朱子」。朱子織の一種でサテンと同様に光沢感と同時に、破れ綾と言われる組織感も感じられる組織

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