ヨガパンツやインナーなどのタグを見ると、素材にナイロンとポリウレタンを掛け合わせた素材をよくみかけませんか?100%ナイロンなどの単一素材で生地を仕上げることも多くありますが、このように異素材を掛け合わせて作られる生地もたくさん存在しています。
今回は、ナイロン x ポリウレタンのコンビネーションの魅力について紹介したいと思います。
コンビネーション素材:ナイロン x ポリウレタンの魅力とは?
素材の掛け合わせとは?
100%ナイロンやポリエステルなどにする方が、糸の手配も単純で加工もしやすくなります。異なる素材で生地を作ると、加工で注意が必要になります。例えば、耐熱温度に違いが出ると、どうしてもいずれか低い温度に合わせる必要があります。高い温度に合わせると、繊維にダメージを与えたり、最悪の場合溶けてしまうこともあります。そのため、加工では両方の特性を把握して、最善の加工法を見つけ出さなくてはなりません。
それでは、なぜそこまでして素材を組み合わせる必要があるのでしょうか?それは、素材同士のいいところを組み合わせて、今までにない特徴や効果を生み出すためです。デメリットを他の素材でカバーしたり、メリット同士を掛け合わせて、さらによりよいものを生み出したりすることができます。組み合わせることで、無限大の可能性があります。これが繊維業界の面白いところではないでしょうか?
ナイロンとポリウレタンのそれぞれの特徴とは?
ナイロン
ナイロンは石油由来の「ポリアミド」と呼ばれる合成樹脂から作られる繊維です。ナイロンは、合成繊維で生産量1位のポリエステルの次に多く生産される合成繊維です。
ナイロンの開発者でもあるデュポン社の開発当時のキャッチフレーズは「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」だったように、非常に強度に優れた合成繊維です。重い荷物を入れることから、強度や耐久性を重視されるリュックサックや、軍事服にもナイロンの素材は高頻度で使われています。耐久性において信頼度の高い繊維です。
ポリウレタン
ポリウレタンは、プラスチックから作られる化学繊維でストレッチ性に非常に長けた繊維です。ゴムの代用品として開発され、パンツやインナー、靴下などの伸びる生地に使用されています。ポリウレタンを使用した生地は、動きやすく着ていて快適になります。
しかし、ポリウレタンは経年劣化を起こしやすく、「加水分解」を起こします。加水分解とは、水に反応して分解される性質で、ポリウレタン合成樹脂で作られる安価なレザー風バッグが数年でボロボロにフィルムが剝れ落ちてしまうのは、この加水分解が原因です。空気中の水分からも影響を受けるため、完全に防ぐことは難しく劣化は起きてしまいます。
そのため、ポリウレタン100%繊維で生地を作り上げることはなく、表面をナイロンやポリエステルなどの糸でポリウレタン表面を覆うカバリングヤーンのタイプが使われます。
「ナイロン x ポリウレタン」生地の特徴
高い強度がある
ナイロンの特性である高い強度を持ち合わせます。伸びる糸に掛け合わせる糸が弱いと糸切れの可能性もありますが、ナイロンは強度が強くストレッチ糸と合わせても劣ることはありません。薄手の生地や組織の安定しないメッシュなどの生地でも強度と安定性が期待できます。
耐久性がある
ポリウレタンの経年劣化を、ナイロンの耐久性がカバーします。それでも水分を含むことで、ポリウレタンは劣化してしまいますが、ナイロンの糸を周りにカバリングすることや、ナイロンの比率をあげることで、ポリウレタンの弱点である耐久性をカバーします。ポリウレタンの最大の弱点でもある耐久性は、使用や取り扱いによっては、2年程度しか持たない可能性があります。あまり湿気の高い場所で保管しないなどの対策をすることで、通常のポリウレタンの寿命よりも長く着続けられることができます。
ポリウレタンの劣化は、主に加水分解が原因ですが、ナイロンには速乾性があるので、加水分解の進行を緩める効果が期待できます。
破れにくい
ナイロンは糸強度も強く、破れにくい生地です。破れやすさは、引裂強度というテストで測定するのですが、ナイロンはこの数値がいいです。合成繊維自体が、強度は強い傾向にありますが、同じく比較されるポリエステルと比べても、破れにくさはナイロンに軍配が上がります。ポリウレタンと掛け合わせることで、パンツ用途などにも使用されますが、破れるなんてありえませんよね。基本的にはしっかり作られているので、破れる心配はほとんどありませんが、スポーツなどの激しい運動では生地に負荷がかかるので、破れにくい素材は、重要な要素です。
ストレッチ性
ポリウレタンを3%程度含むだけで、十分なストレッチ性を得られます。ナイロン自体も同じ合成繊維のポリエステルに比べると伸度があるので、伸びに強い繊維です。ただし、ナイロン単体ではあまりストレッチと言えるほどの伸縮性はなく、糸を加工することで、ストレッチ性を持たせることはできるものの、ポリウレタンほどの大きな伸縮性は得られません。コンビネーションがあってこそ、高いストレッチ性を再現できます。
織物の場合、緯糸のみにポリウレタンを打ち込むことで、左右の2wayストレッチにしたり、経糸と緯糸の両方にポリウレタンを入れることで、上下左右すべての方向に伸びる4wayストレッチ生地にもできます。
ニットは組織上、輪っかを作りながら編むのである程度伸びますが、ポリウレタンを含むことで、ストレッチ性とキックバック性が高くなります。
シワになりにくい
ナイロン単体よりポリウレタンを含んだ方が、防シワ効果があります。伸縮性のない綿や麻などの繊維はシワができやすいですが、伸縮性の高いポリウレタンを使用することで、シワができにくくなります。洗濯してもアイロンいらずで、イージーケア商品としても扱えて、消費者にとってもありがたい機能です。
摩擦に強い
これは、ナイロンの特性でもありますが、摩擦には強い生地です。ストレッチのあるポリウレタンを含むことで、染色後は高密度になるので、さらに摩擦耐性は上がる傾向です。密度が高い方が、ひっかかりも少なくなり、摩擦耐久が上がります。
弾力がある
ナイロンは弾力のある繊維で、それに加えてゴムのように伸縮するポリウレタンを使用することで、弾力と膨らみ感が増します。ニットは得にループで弾力があるので、ナイロン X ポリウレタン素材は、クッションのような弾性が生まれます。なんともいえない柔らかでもちもちの感触は、これらの繊維の掛け合わせがあってこそ生まれる風合いです。
まとめ
素材の掛け合わせ
- デメリットを他の素材でカバー、よりよいものを生み出せる
- 加工はそれぞれの素材に注意を払って行う必要がある
「ナイロン x ポリウレタン」生地の特徴
- 高い強度がある
- 耐久性がある
- 破れにくい
- ストレッチ性
- シワになりにくい
- 摩擦に強い
- 弾力がある
ナイロン x ポリウレタン素材は、着心地がいい生地に仕上がります。ストレッチすることで、動きに制限がかからず、かつ風合いの良さもいいことから着心地のよさやストレスのなさを実感することができるでしょう。
デイリー使いから、生地の伸びが重要なインナーやヨガパンツなどさまざまな用途で活躍します。特にスポーツテイストを取り入れたアパレルブランドなどを企画する際は、ナイロン x ポリウレタン素材の生地を仕入れてみることをお勧めします。