
アクリル繊維といえば、化学繊維の中でもポリエステル・ナイロンと並んで流通量の多い合成繊維です。アクリルといえば、ウールの代わりとしても使用される素材です。衣料品はもちろん、毛布やカーペットなどのインテリア用品にも使用され、幅広い用途に使用されています。
今回は「アクリル繊維」について深堀りしていきたいと思います。
アクリル繊維とは?
アクリル繊維

アクリル繊維とは、石油や天然ガスから抽出したプロピレンとアンモニアを混ぜて作られるアクリロニトリルを主原料(CH2=CHCN)とした合成繊維です。ウールに似た性質を持っていることが特徴として知られています。「ナイロン」、「ポリエステル」と並んで「アクリル」は、3大合繊繊維と呼ばれています。
アクリル繊維は、1931年に初めてドイツの会社が紡績に成功し、1950年にデュポン社が初めて工業生産を始めました。それ以降、安価で大量に生産できるとして、アクリル繊維の流通量は増えていきました。
アクリル繊維は、合成繊維のため、紡糸の際の口金(ノズル)の形状を変えることで、さまざまな形の繊維を作ることができます。長繊維や短繊維のどちらも作ることができます。短繊維に紡糸すると、よりウールのようなふんわりとした生地に仕上がります。形を用途に合わせて自由に変えられる点は、合繊繊維ならではのアドバンテージです。
アクリル繊維とモダクリル繊維の違いとは?
アクリルには、アクリル繊維とアクリル系繊維と呼ばれる繊維に分類されます。
アクリル繊維
ポリアクリロニトリルを85%以上含む繊維です。
モダクリル繊維(アクリル系繊維)
モダクリル繊維とは、以前はアクリル系繊維とよばれていた繊維です。モダクリルとはポリアクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを混ぜ合わせて作られる繊維です。ポリアクリロニトリルの重量比は85%以下です。燃えにくい難燃性に優れた塩化ビニルが含まれているので、モダクリルは難燃性を持ち合わせた繊維です。難燃性を持ち合わせているので、カーペットやカーテンなどのインテリア素材にも使用されています。
アクリル繊維のメリット

軽い
アクリル繊維は、繊維の中でも軽い繊維です。似たような特徴を持ち合わせるウールと比較しても軽いので、負担が少なく軽やかに着ることができます。空気を多く含むアクリル繊維は、見た目のボリュームや厚み感とは裏腹に、軽い生地だと感じるでしょう。
ふんわりと弾力がある
アクリル繊維は、かさ高で弾力のある繊維をしています。合繊繊維ではあまり見られない特徴です。そのためウールのようなふんわりとしたボリューム感のある生地に仕上がります。短繊維で作られた生地の場合は、よりふっくらと膨らみのある生地になります。

引用:化学繊維のかたち|日本化学繊維協会(化繊協会) (jcfa.gr.jp)
シワになりにくい
アクリルの繊維は弾力性のある糸のため、シワになりにくい特徴があります。シワが入っても、水分を少し含ませることで、シワを直すことができます。洗濯してもシワになりにくいので、イージーケアとして人気があります。
保温性が高い
アクリルがウールのような繊維と言われる理由としては、ウールのように繊維内に空気をたくさん含むことで、高い保温性を実現している点です。保温性だけに注目するとウールよりは劣りますが、冬物の製品作りには欠かせない繊維の一つです。
発色がいい
アクリル繊維は、鮮やかな発色も再現できます。主にカチオン染料を使って染色していて、染料と繊維がイオン結合することで、色が染まります。染色性に優れている合繊繊維の中でも、特に発色性に長けています。カチオン染料は、発色性がよく、堅牢度も高いことで知られています。
耐光性に優れている
アクリル繊維は、他の繊維と比べても耐光性に優れています。太陽光での色落ちがしにくいので、洗濯ものも気兼ねなく外干しできます。また、長時間野外で運動するアウトドアスポーツやアクティビティ向けの生地にも、適しています。
熱可塑性がある
ポリエステルなどと同様に、アクリル繊維も熱可塑性を持ち合わせる繊維です。熱可塑性とは、熱をかけると溶けて、冷えた時に固まる性質です。熱可塑性がある繊維には、プリーツなどの後付けのシワ加工と相性がよく、一度熱セットしてしまえば形状はキープされます。ただしアイロンなどの高温でプレスすると、形状が変わる性質から型崩れを起こす可能性があります。
薬品耐性に優れている
酸やアルカリにも強く、薬品耐性にも優れています。
アクリル繊維のデメリット
静電気が起こりやすい

アクリル繊維は静電気が発生しやすいことがデメリットです。着用中に生地同士で摩擦が起きると、静電気が起こりやすくなるので重ね着をする際は注意が必要です。静電気により空気中の小さなゴミなどが表面につきやすくなるので、メンテナンスが必要となります。静電気防止加工などを施すことで、ある程度の改善が見込まれます。
毛玉が発生しやすい
アクリル繊維は毛玉が発生しやすことでも知られています。そのため摩擦が起きやすいインナーにはあまり使われていません。重ね着をしたり、腕などの摩擦が起きやすい部分は特に毛玉が発生しやすくなるので、注意が必要です。リュックサックなどのカバンを背負う部分に毛玉ができやすいので、衣服以外にも気にかけないといけません。
水洗い自体には問題ないですが、強く揉みこむと毛玉の原因となります。優しく手洗いするか、洗濯機を使用する場合はネットに入れるなどの対策が必要です。毛玉が発生した場合は、手で引っ張って取ると、生地を傷める可能性があるので、ハサミなどでカットするか毛玉取り器を使用して処理した方がベターです。
まとめ
アクリル繊維
- 石油や天然ガスから抽出したプロピレンとアンモニアを混ぜて作られるアクリロニトリルを主原料(CH2=CHCN)とした合成繊維
- 3大合繊繊維の一つで、ウールに似た性質を持ち合わせている
アクリル繊維とモダクリル繊維の違い
- アクリル繊維:ポリアクリロニトリルを85%以上含む繊維
- モダクリル繊維:ポリアクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを混ぜ合わせて作られる繊維
アクリル繊維のメリット
- 軽い
- ふんわりと弾力がある
- シワになりにくい
- 保温性が高い
- 発色がいい
- 耐光性に優れている
- 熱可塑性がある
- 薬品耐性に優れている
アクリル繊維のデメリット
- 静電気が起こりやすい
- 毛玉が発生しやすい
ウールの置き換えとして活躍するアクリル繊維ですが、ウールの良さと合成繊維の良さを掛け合わせた繊維です。ウールよりも安価で生産できるとして、ウールの代替品として長く使用されてきました。機能面でも優れた点が多く、風合いとともに魅力のある繊維です。


