生地のコーティングとは?アクリルコーティングとウレタンコーティング

少し前までは、防水性を持たせた服は、カッパやスポーツウェアがメインでした。最近では、身近なアパレルブランドが普段使いできる防水機能付きのジャケットやパンツを見かける機会が多くなってきました。安価で軽い雨をしのげるとあって、人気が高まっています。

今回は、そんな防水ジャケットなどに使用される「生地のコーティング」について注目してみたいと思います。

目次

コーティング加工の目的と用途

生地へのコーティング加工にはいくつかの目的と用途があります。コーティングは主に、生地の裏面に塗布されます。用途や求める物性スペックに応じて、薄塗加工や2回塗布など調整して加工されます。

コーティング加工の目的

生地にコーティングすることで、生地の表面に膜ができて水の侵入を防ぐことで、防水性を持たせることができます。コーティング加工は傘などにも使われていて、ある程度の雨や水が生地の中に浸透してくれるのを防いでくれます。

防水性を測るテスト法として、耐水圧テストが一例としてあります。耐水圧テストでは、水圧を生地にかけて、どのくらいホールドすることができるかを測ります。コーティングの場合は、フィルムを貼り合わせるラミネート加工に比べると耐水圧は劣ります。

耐水圧数値の目安としては下記が一般的な例として知られています。

コーティングの場合は、生地との相性にもよりますが、200mm程度から10,000mm程度の間に収まることが多いです。この数値は表生地の厚みや密度、ストレッチ性に加えて、コーティング塗布量の厚みなども影響して大きく数値が変わります。アウトドアアクティビティ向けの生地は、大嵐などのいかなる厳しい自然環境に対応が必要です。場合によっては命の危険性もあるので、慎重な生地選びと後加工選びが必要となります。

生地にハリがでる

コーティング加工を施すことで、生地に樹脂が浸み込みハリと硬さが出ます。コーティングを薄塗することで、生地本来の風合いをなるべく残したり、コーティングの浸透量によっては、パリっとしたペーパータッチの風合いになることもあります。コーティング有無で風合いは変わるので、なるべく現物の加工品に触れていた方が、後々のギャップはないでしょう。アセテート繊維は環境にやさしい繊維として、注目が浴びています。

通気度を抑える

コーティング加工によって、空気を通す量を抑えることができます。コーティングにより、通気性は落ちますが、風を通さないウィンドブレーカーなどに使用されます。

値段を抑えた加工ができる

防水性を持たせる加工として代表的なのは、コーティングとラミネート加工です。コーティングの場合は、ラミネート加工に比べて比較的に安価に加工ができるので、求める物性にハマっているならコーティングの方が値段を抑えることができるでしょう。

コーティング加工の用途

コーティングする用途として使われるのは様々です。

レインウェア・傘・テント

防水性を利用したレインウェアや傘、テントなどの用途に使用されます。基本的に小雨程度であれば、コーティング加工でも十分に対応ができます。大雨などの場合は、生地と加工によっては水が中に浸透する可能性があるので、耐水圧テストを目安に生地のスペックを判断してみるのもいいかもしれません。

ウィンドブレーカー

ウィンドブレーカーと言えば、風が生地を通り抜けにくく、風による体温低下を防いでくれるガーメントです。ランニングやハイキング、サイクリング向けはもちろん、普段使いのタウンユースとしても幅広い用途で活躍します。

中綿・ダウンジャケット

コーティングすることで、通気が止まるので、ダウンプルーフジャケットや中綿ジャケット用途で加工されることもあります。密度の高い生地でないと、コーティング加工しても、ダウン抜けや中綿抜けが発生する可能性があります。

生地のコーティング

コーティング加工の種類

コーティング加工は大きく分けて、「乾式コーティング」と「湿式コーティング」があります。

乾式コーティング

乾式コーティングは、樹脂を生地に塗布して乾燥させる加工です。湿式コーティングに比べて安価に加工することができます。コーティングには孔はなく、無孔のコーティングです。

乾式コーティングの代表としては、「乾式アクリルコーティング」と「乾式ウレタンコーティング」があります。

湿式コーティング

湿式コーティングは、樹脂を生地に塗布した後、樹脂を固める作用のある凝固液の中に浸漬(しんし)して、コーティング膜に無数の孔をあけて作られます。この無数にあいた多孔膜のおかげで、水蒸気を発散することができ、透湿防水性を持たせることができます。

防水性は、無孔コーティングより下がる傾向にありますが、着用時のムレ解消には期待ができます。膜に孔が空いている分、孔のない無孔の膜に比べると厚みが出てしまいます。

また樹脂の塗布後、乾燥させる乾式コーティングに比べると、工程と手間が増える分、価格は高くなってしまいます。

湿式コーティングの代表としては、「湿式ウレタンコーティング」があります。

アクリルコーティング

アクリル樹脂をベースとしたコーティング加工です。ウレタン樹脂より安価な傾向があるので、安く仕上げることができます。

ウレタンコーティング

ウレタン樹脂をベースとしたコーティング加工です。ウレタンはゴムのように伸びる性質があるので、アクリルコーティングに比べてストレッチ性が出ます。また、ウレタン樹脂自体が柔らかいので、ソフトな風合いに仕上がります。

ウレタンコーティングの場合は、生地に透湿性を持たせる場合は湿式コーティング法が使われます。より安価で透湿性を特に必要としない場合は、乾式コーティング法で加工されます。

コーティング品のケア方法とは?

被膜がはがれない限りは、防水性能は続きます。しかし、摩擦などによって膜がはがれたり、洗濯・使用を繰り替えるうちに性能は劣っていきます。少しでも長く、コーティングの性能を保つためには、メンテナンスとケアが大切となります。

コーティングの寿命を延ばすためには、以下のようなケアが有効です。

  • 洗濯を極力減らす(できれば手洗いで優しく洗うとより良い)
  • 洗濯はケアマーク(タグに記載された洗濯指示)に従う
  • 吊り干し乾燥する(タンブルドライは摩擦が起こり、ダメージが起きやすい)
  • 陰干し、直射日光を避ける
  • 被膜箇所への摩擦やダメージを減らす
  • 熱をかけない
  • フィルムがむき出しになっているジャケットより、裏地がついているものを購入する

まとめ

POINT

コーティング加工の目的

  • 防水性
  • 生地にハリがでる
  • 通気度を抑える
  • 値段を抑えた加工ができる

コーティング加工の用途

  • レインウェア・傘・テント
  • ウィンドブレーカー
  • 中綿・ダウンジャケット

コーティング加工の種類

  • 乾式コーティング
  • 湿式コーティング
  • アクリルコーティング
  • ウレタンコーティング

コーティング品のケア方法

  • 洗濯を極力減らす(できれば手洗いで優しく洗うとより良い)
  • 洗濯はケアマーク(タグに記載された洗濯指示)に従う
  • 吊り干し乾燥する(タンブルドライは摩擦が起こり、ダメージが起きやすい)
  • 陰干し、直射日光を避ける
  • 被膜箇所への摩擦やダメージを減らす
  • 熱をかけない
  • フィルムがむき出しになっているジャケットより、裏地がついているものを購入する

コーティングは、防水には欠かせない加工法の一つです。塗布量や多孔・無孔などを調整することで、風合いや機能面も大きく変わっていきます。種類や特徴を抑えることで、生地選定時の助けになれば幸いです。

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