「ふくれ織り」は、美しく華やかな見た目の織物です。
今回は他にはない見た目と特徴を持っている「ふくれ織り」の魅力について紹介したいと思います。
ふくれ織り
ふくれ織り
「ふくれ織り」とは、二重織で表面をふくれ上がらせて、模様を浮かびあげる織物です。ジャガード織と二重織で作る組織で、織組織や糸の収縮差を利用して、部分的にくっついた箇所と浮いた(膨れ上がった)箇所を作ることで、綿詰めしたような立体感のある柄を生み出します。ジャガード織とは紋紙(もんがみ)と呼ばれる型紙に穴を開けて、織機にどの糸を通すかを示し、それに従って織ることで模様を作り出します。ジャガード織自体、組織を変化させながら立体感な柄を作り出しますが、ふくれ織りはさらに二重組織になっているので、よりふくらみ感や立体感が強まります。この膨れたような見た目から、ふくれ織と名付けられました。
海外ではふくれ織りは、「matelasse(マトラッセ)」や「cloqué(クロッケ)」と呼ばれる組織です。マトラッセはフランス語で”詰め物をした・キルティングした」といった意味があり、クロッケは同じくフランス語由来でで“水ぶくれ・水泡”という意味があります。
ふくれ織りの作り方
ふくれ織りが膨らんだような柄に浮かび上がるには、組織と糸の収縮差によって作られます。二重の組織のうち、表側に無撚糸を使用し、裏側には収縮する強撚糸を使用することで、精練で糊や不純物を取り除き、熱を加えた際に、裏側の強撚糸だけが縮むことで、表側の糸が浮いたように膨れ上がります。表糸と裏糸を結合する箇所と離す箇所を作ることで、離す箇所の部分だけが浮いたように仕上がります。
ふくれ織りのメリット
立体的な柄が作れる
ふくれ織りの最大の特徴は、なんといっても立体的で浮かび上がったような柄が作れることでしょう。立体感のあるジャガード織やドビー織と比べても、特に凹凸が強い組織です。刺繡をしたようなデザインで、ビジュアルインパクトのある生地に仕上がります。
デザイン・柄のパターンが豊富
ジャガード組織を基にしているので、幅広いデザインを再現することができます。幾何学模様や花柄、大きな柄や小さな柄、統一性のないランダムな柄を作ることも可能なので、思い通りのデザインを描くことができるでしょう。凹凸感が強い分、より柄の部分を強調することができるので、華やかで目立ったデザインに仕上げることができます。
さらに二重構造の組織のため、1枚生地よりもデザインの幅を広げることができます。二重織だからできる組織に、絵を描いたようなデザインも再現できるジャガード組織を組み合わせることで、制限がないほどデザインの幅が広がります。異なる素材の糸や装飾糸を混ぜ込むことで、一味も二味も違った生地を作ることができます。
ハリと厚みがある
二重の組織になっているので、生地にハリと厚みがでます。へたりにくくしっかりしているので、服に仕立ててもきれいなシルエットで、体に張り付き過ぎることない生地に仕上がります。二重構造のため、重さも出るので、重厚感を出すこともできます。
高級感がある
立体感や陰影があり、複雑性もある組織のため、高級感のある見た目になります。二重織組織でもあるので、生地にある程度の厚みがあり、ペラペラな安っぽい生地とは異なり、高価に見える理由の一つでもあります。ラメ入りの糸を使用して、より華やかで高級感のあるふくれ織りもあります。
奥行きのある色合いが出る
凹凸や陰影のある組織によって、1色で染色しても、組織や柄の場所によって、濃色・中濃色・淡色などと分かれて見えるので、奥行きのある色に仕上がります。さらには、複数の素材の糸を使用することで、より複雑性が増して、素材によっては染め分けすることも可能です。複数色でかつ色の濃淡がでれば、味わい深い生地ができるでしょう。
また、染色しない場合でも、立体感があるので、陰影によって、柄がはっきり見えるでしょう。ホワイトで染色したり、環境面で無染色(糸を収縮させるために精練は必要となります)の生地に仕上げる場合でも、模様が浮かび上がるので、単調にならずオリジナリティや個性を出すことができます。
ふくれ織りのデメリット
引っかかりや摩擦に注意
組織の一部が浮いているので、糸が引っかかりやすかったり、摩擦などの影響で糸切れや糸ほつれを起こしやすくなります。洗濯機を使うよりも、なるべく手洗いで優しく洗う方が、製品寿命を長持ちさせることができるでしょう。
生産場所が限られる
ジャガード織機でしか、織ることができないので、ジャガード織機を持っている工場に生産が限られます。流通量も少なく珍しい生地ともいえるでしょう。どこでも作れるわけではない希少性がある点は、メリットともいえます。
リードタイムがかかる
ジャガード織と同じような工程で作られるので、デザインを起こしたり、複雑な組織のため織るスピードもあまり早くありません。さらにジャガード織機は台数が限られている分、一度に大量生産を対応できる工場は少ないでしょう。どうしても一般的なタフタ組織などに比べるとリードタイムが長くなってしまいます。
在庫を抱えている問屋で好みのデザインが見つかるかもしれないので、一度チェックしてみるのもいいかもしれません。
コストのかかる高級品
ジャガード織自体が、紋紙での柄起こしや組織を変更しながら織るので、手間や時間がかかり高価になります。紋紙は最近では電子データ化されて手間を省略することもできるようになりましたが、古い機械の場合は手作業での紋紙が必要になるケースもあります。さらに、二重の組織にする分、糸の使用量も2倍になるので、かなりのコストがかかってしまうのは避けられません。それでも、流通量も少なく貴重な生地であり、プリントや他の組織では再現できないような立体的な模様に価値を見出し、使用する方は多くいます。
特に着物や着物の帯などのきらびやかで非日常的なお祝い事で着るような服などや、コートやバッグ、またインテリア用品やカーテンなどの単価の高い製品に使用されるケースが多いようです。
まとめ
ふくれ織り
- 二重織で表面をふくれ上がらせて、模様を浮かびあげる織物
- 別名:matelasse(マトラッセ)、cloqué(クロッケ)
ふくれ織りの作り方
- 二重組織で表糸と裏糸の収縮差を利用して、糸を浮かせる
ふくれ織りのメリット
- 立体的な柄が作れる
- デザイン・柄のパターンが豊富
- ハリと厚みがある
- 高級感がある
- 奥行きのある色合いが出る
ふくれ織りのデメリット
- 引っかかりや摩擦に注意
- 生産場所が限られる
- リードタイムがかかる
- コストのかかる高級品
希少で高級な生地ですが、ふくれ織りの美しい見た目は多くの人を虜にするでしょう。他とは被らないデザインを取り入れたい方は、ふくれ織り生地はおすすめの生地の一つです。