そろそろ衣替えを始める季節ですね。季節が変わると、生地の選び方も大きく変わりますよね。
春夏ものといえば、柔らかで清涼感のある生地が多くなりますよね。
今回はそんな季節にぴったりの「楊柳(ようりゅう)」生地について紹介したいと思います。
「楊柳生地」とは?
楊柳生地
楊柳(ようりゅう)とは、強撚糸を使って縦方向に凹凸のある細かいシボが入っている生地です。別の呼び方として、「京ちぢみ」や「ちぢみ」、英語では「Crape(クレープ)」と呼ばれています。英語のクレープは縮緬生地全体を指すので、「楊柳クレープ」などと呼ぶこともあります。楊柳の名前の由来は、楊柳シボが柳の葉のように見えることから名づけられたと言われています。
楊柳生地の歴史は古く、安土桃山時代に現在の中国にあたる明の織工によって日本に伝えられたと言われています。涼し気で、蒸れにくく着心地がいいことから、高温多湿の日本の環境に相性がよかったことから、日本全国に楊柳生地が普及していきました。その中でも特に、京都で繁栄して、盛んに生産されていきました。京都で栄えたことから、楊柳の別名である「京ちぢみ」と言われるようになりました。
楊柳の作り方
加工でシワ付けすることもありますが、楊柳シボは、織物の組織でシワを作り出します。
経糸には無加工糸や甘撚糸、緯糸にはS(右撚り)またはZ(左撚り)のいずれか一方向に強い撚りがかかっている片撚の強撚糸を使って、平織組織で織って作られるのが一般的なようです。
強い撚りのかかった強撚糸に、撚りを戻そうとする力が働き、縮まない経糸の間で盛り上がった時にシボができます。楊柳のシボは、組織によって均一で一定間隔に出るものもあれば、ランダムに表れるシボもあります。
ちなみに、経糸と緯糸の両方に片撚の強撚糸を使って、縦方向と横方向の両方に細かい楊柳シボを生み出す生地のことを「オジヤ」と呼びます。不規則で格子状にシボが浮かびあがり、楊柳よりも複雑な印象を与える生地もあります。
楊柳生地の素材
元々は、綿織物でしたが、今ではシルクやリネン、ポリエステルなどの合成繊維で作られたものも増えてきています。コットン、シルク、リネンなどの天然繊維は、吸放湿性に優れているので、春夏向けに活躍する楊柳生地にぴったりの素材です。また、ポリエステルは強度が高く、形状記憶性にも優れているので、型崩れにくいです。さらに安価で、天然繊維のように虫食いなどの心配がないことから、代替品として重宝されています。
楊柳生地の特徴
縦ジワ
楊柳の最大の特徴は、縦方向のみに形成される、縦ジワです。通常の織物は、フラットで平面的に対して、凹凸があることで、単調にならず生地にアクセントをつけることができます。細かいシワのため、フォーマルな場面でも使用することができる万能性も持ち合わせています。シワ自体がデザイン性を高めてくれるので、シンプルになり過ぎない生地です。
清涼感がある
薄手で透け感のある生地なので、涼しげな印象を与えます。シアー楊柳が多いので、トップスなどに使用する場合は中に着るインナーを引き立たせたりと、おしゃれな印象を与えるファッションに繋がります。ただの清涼感だけでなく、シワによるデザイン性を兼ね合わせている点も素敵ですよね。
肌への接地面が少ない
楊柳生地は、シワが入っているため肌への接地面が少なくなります。そうすることで、生地が肌にまとわりつかず、夏場で汗をかいてもべたつきにくい特徴があります。
溶けた繊維分だけ軽くなる
炭化して溶けた繊維の分だけ軽くなります。通常のプリントであれば、模様を付けても軽くなることはありませんが、繊維を溶かすオパール加工では、生地を軽くすることができる点もメリットのひとつです。
軽い
楊柳の生地は、密度も高くなく、薄手の生地のため、軽いです。重くないので、持ち歩きようの羽織などにも最適ですね。
通気性が高い
透け感のある生地であることや密度が甘い規格である楊柳生地は、空気の通りがよく、水蒸気や衣服内のムレを外に放出してくれます。
吸水・速乾性がある
素材にもよりますが、楊柳生地の多くはコットンやリネンなどの繊維が使われています。天然素材を使った生地は、吸水性や速乾性に優れています。さらに、楊柳生地の凹凸が肌にまとわりつかず、常に肌と生地の間に空気の層ができることで、速乾性が高まります。
シワになりにくい
着用中や生地を折りたたんでも、シワはつきにくい生地です。アイロンがけが不要になるので、家事の負担も減らすことができます。軽くて薄いので、持ち歩きにカバンに畳んで入れてもシワにならないのは魅力です。
マットな質感
楊柳は、撚糸を使っているため、糸の形状がねじれた状態になっています。そのため、真っすぐ撚りのない無加工糸に比べて、光が乱反射するため、光沢感を抑えて、マットな仕上がりになります。ギラギラした光沢感が苦手な方には、楊柳生地のような撚糸を使った生地がおすすめです。
立体感がある
シワがあることで、立体感を演出します。凹凸があることで、染色した時に奥行きがあり、影や凹凸の動きによって見え方が変わるので、豊かな表情を生み出してくれます。薄い生地は、安っぽく見えてしまいがちですが、立体感と奥行きがあることで、安見えしません。
ストレッチ性がある
ゴムのようには伸びないですが、撚糸が使われている点と、楊柳シボの凹凸がある分だけ生地を伸ばすことができるストレッチ性があります。大きくは伸びなくても、普段使いでは動きに制限かかることなく伸びてくれるので、着ていてストレスはかからないでしょう。
フェミニンな印象を与える
楊柳生地は、透け感と柔らかさのある生地のため、男らしさよりも女性らしい印象を与えます。実際の用途としても、女性用のブラウスやパジャマ、ボトムスなどに多く使用されています。春夏向けに使用される素材とあって、染色される色も春を連想する柔らかいパステルカラーのような色で染色された生地をよく見かけます。
まとめ
楊柳
- 強撚糸を使って縦方向に凹凸のある細かいシボが入っている生地
- 別名:京ちぢみ、Crape(クレープ)
- 柳の葉を重ねたように見えることから名づけられた
楊柳の作り方
- 経糸には無加工糸や甘撚糸、緯糸には片撚の強撚糸を使って、平織組織で織って作られる
楊柳の特徴
- ストライプシワ
- 清涼感がある
- 肌への接地面が少ない
- 通気性が高い
- 吸水・速乾性がある
- 軽い
- シワになりにくい
- マットな質感
- 立体感がある
- ストレッチ性がある
- フェミニンな印象を与える
いかがでしたでしょうか?
これからの季節に活躍すること間違いなしの「楊柳生地」。店頭で見かけることも多くなるかもしれませんね。ぜひ手に取って、生地の質感や特徴を触って感じてみてください。春夏の衣類としてはもちろん、その柔らかな見た目から、カーテンやベッドシーツなどにも使われています。