さまざまな染色法:天然染料の種類と特徴とは?

    染色とは、繊維を染めることを指しますが、その方法には数多くの種類があります。

    繊維を染色するには、主に合成染料か天然染料を使用して染色されます。今回はその中でも、「天然染料」に焦点を置いて紹介したいと思います。

    天然染料は、扱いが難しく、さまざまな難点もありますが、今この天然染料が注目されつつあります。一体どのような特徴とどんな染料が存在するのでしょうか?

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    天然染料・草木染めとは?

    天然染料・草木染め

    天然染料とは、天然の植物や昆虫などから色素成分を取り出して作り出された染料です。

    天然の染料は、合成染料に比べると色ムラが起きやすく、均一に染めることは難しくなります。また、染料の長期保管することが難しく、色の耐久性を占める堅牢度も合成染料と比較すると劣ります。

    天然染料にはデメリットが多くあり、長期保管ができないことから現在ではあまり使用される機会は少なくなってきましたが、実は最近は環境にやさしい自然派志向に合わせて需要が増えてきています。また、大量に入手することができない希少性から、製品の差別化ができるとして、天然染料に注目が浴びています。

    天然染料と合成染料が誕生するまで

    天然染料は日本ではもちろん、世界中で古来昔から衣服を染めるために使用されてきました。合成染料が誕生するまでは、この伝統的な天然染料を使用して染色が行われていたのです。

    初めて合成染料(化学染料)が誕生したのは、1856年で166年前に誕生しました。当時18歳のイギリスの化学者のウィリアム・パーキンが、マラリアの治療薬に使用されたキニーネを合成する研究をしていました。その実験の途中で、シルクを紫色に染めることができる溶液を発見しました。これが初めて人工的に染色する染料として発見され、この初めての人工染料は「モーブ」と名付けられました。この発見以降、合成染料はたちまち世界中に広がり、私たちが着る衣料品のほとんどは合成染料によって染色されています。

    天然染料の種類

    天然染料は大きく分けると、動物性と植物性に分けられます。

    植物性天然染料

    植物性の染料は、植物の葉や花、根、樹皮などさまざまな部分から色素を抽出します。植物性天然染料の一例は下記があります。

    藍(あい)

    藍は、人類最古の染料とも言われる天然染料です。

    美しい藍色(青色)の色素含む染料で、自然界から抽出できる青色の染料の種類は数少なく、希少な染料です。初めて藍染めが行われたのは、紀元前2000年頃と言われていて、インドで染められていたと記録があります。藍は別名「インディゴ」とも呼ばれ、ギリシャ語の「indikon(意味:インドの染料)」から由来していると言われています。

    ジーンズの伝統的な染色法としも藍染めは有名ですよね。天然染料の中でも、「藍染め」という染色法をご存じの方も多いのではないでしょうか?

    茜(あかね)

    茜は、アカネ科アカネ属のつる性多年生植物に該当する植物です。茜の色素は赤色で、オレンジ色をしている根から、赤色色素を抽出します。茜の根を乾燥させて、それを煮出すことで、アリザリン・プルプリンという赤味の色素が出てきます。茜の染料を使って染めた生地は、赤味に加えて黄味の強いオレンジのような色目に仕上がります。煮出し時間によって仕上がりの色目が変わっていくので、複雑で奥深い色目に染め上がります。

    紅花(べにばな)

    紅花での染色も草木染めの代表的な染料として知られます。紅花の花弁には黄色の色素であるサフラワーイエローと紅色の色素であるカルタミンを含んでいます。紅花染は染色法を調整することで、黄色から紅花に染め分けることができます。しかし、紅色のカルタミン色素の含有率は極めて低く、紅花染で染められる紅色は貴重で高級品として知られています。紅花はエチオピアが原産と考えられていて、日本には6世紀ごろに伝わったとされています。

    紅色に染める場合は、紅花を水につけて水溶性であるサフラワーイエロー(黄色色素)を抽出します。黄色の色素を外に出した紅花を、アルカリ性の水溶液に浸すことで、紅色の色素を抽出します。そこにお酢を加えて水で希釈した染料を使って紅色に染色することができます。

    黄色に染める場合は、紅花を水につけてサフラワーイエロー(黄色色素)抽出します。抽出した色素を加熱して染色します。

    動物性天然染料

    貝紫(かいむらさき)

    貝紫染めとは、貝から染料を取り出して染色する方法です。貝紫染めの発祥は約3600年ほど前の地中海東岸で、フェニキア人が貝から染料を取り出して、美しい紫色に染められることを発見したと言われています。地中海沿岸に生息するツブリボラという小さな巻貝を砕いて、パープル腺と呼ばれる内臓を取り出し、そこから紫色の染料を抽出させていました。1gの染料を取るには、2000個ほどの貝が必要とされ、1つの服を染めるのには莫大な貝と作業量が必要のため、貴重で高価なものとして当時から取り扱われていました。

    日本でも、吉野ケ里遺跡から弥生時代に作られたとされる紫色の布地が発見されており、アカニシというアクキガイ科の貝紫めであったと判明しています。

    コチニールカイガラムシ(エンジムシ)

    動物性の染色法として、虫から染料を抽出して色素を出す方法があります。

    コチニールカイガラムシ(エンジムシ)は特定のサボテンに寄生する虫で、美しい赤色色素のカルミンが含まれています。この色素は乾燥させて砕いたメスのコチニールカイガラムシから採ることができます。オスのコチニールカイガラムシには含まれない色素となります。メキシコやペルーなどの南米の国に生息していて、衣料品の染料の他にも、口紅などの化粧品にも使用されることがあります。

    コチニールカイガラムシは、古代ミステク族(現在のメキシコ・オアハカ州)の時代から染料として利用されてきました。その後、この美しい深紅の色に魅了されたスペイン人を初めとするヨーロッパ諸国で、コチニールカイガラムシの染料は人気が高まりました。

    引用:コチニールカイガラムシ – Wikipedia

    まとめ

    POINT

    天然染料

    • 天然の植物や昆虫などから色素成分を取り出して作り出された染料

    植物性天然染料

    • 藍(あい)
    • 茜(あかね)
    • 紅花(べにばな)

    動物性天然染料

    • 貝紫(かいむらさき)
    • コチニールカイガラムシ

    天然染料はまだまだたくさん存在しています。一度に大量に生産するには向いていませんが、希少価値が高く、さらには環境への負荷が少ないことから、天然染料への注目は高まりつつあります。オンリーワンの生地に染めたい時にも、天然染料は活躍するでしょう。草木染め体験などの施設もあるので、まずは気軽に体験してみるのもいいかもしれません。

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