ファッションでも色ってとても大事なキーポイントですよね?
服の見た目の印象を決める重要な要素です。涼しそうな色や温かみのある色など、色によって見た目や人の印象を大きく左右する「色」。
今回は、そんな色に繋がる「生地の染色法」について、フォーカスを当ててみました。繊維の染色法とは、どのような方法があるのでしょうか?
染色法の種類と特徴とは
先染め
先染めは、繊維や糸の状態で染める染色法です。先染めの場合は、後染めに比べて、水の使用量なども削減できることや、廃水や汚染を軽減できることから、サステイナブルな染色法として注目が浴びています。
糸染めの場合は、主に糸をボビンに巻いた状態で、染色します。通常のボビンは、内側まで染料が届かないため、穴の開いた染色専用のボビンに巻き直しされます。そのボビンを、染色窯に入れて、加圧しながら、糸が均一に染まるようにポンプで染液を循環させて、染めます。この染色法は、「チーズ染め」とも呼ばれていて、糸を巻いたボビンの見た目がチーズに似ていたことから、そう呼ばれるようになりました。
<メリット>
- 後染めに比べて、水の使用量を削減できる
- 糸自体に染料をしっかり吸着させるので、色落ちしにくい
- 糸に染料がしっかり入る分、深みのある色を再現できる
- 堅牢度に優れている
- 色違いの糸を組み合わせて織ることで、見た目の幅が広がる
<デメリット>
- カラーバリエーションに制限がある
- オーダー色の場合、ミニマムが大きくなる
後染め
糸の染色はせずに、生機の状態の生地を染めるやり方です。
後染めには、さまざまな染色法があります。先染めに比べて、色ごとのカラーミニマムが少ないため、小ロットオーダーやカラーブロッキングなどで何色かカラーバリエーションを使用したい場合には後染めの方が手軽にできるでしょう。
液流染色
液流染色は、英語では「Jet Dyeing」とも呼ばれます。生地をロープ状につなげて染液の水流に乗せて、高温・高圧の管内を循環させながら染色する方法です。水流で生地がもみ込まれることによって、風合いが柔らかく仕上がります。さまざまな素材にも対応する染色法のため、後染めの中でもよく使用される染色法です。
液流染色の特徴であるもみ込みは、ナチュラルなシワを作ることもできます。染色後に通常は、セットされる際に生地を伸ばした状態で幅セットされますが、この工程でナチュラルセットすることによって、染色に加えて液流のシワ感を残すこともできます。シワをあえてつくることで、生地に立体感や色の深みを出すこともできます。
ジッガー染色
ジッガー染色は、拡布染色法で、生地を平らにまっすぐ開いた状態で染色します。
ジッガー染色は、大きな2本のロールに生地を巻き付け、行ったり来たりしながら、染液に浸して染色していきます。浴中には、ガイドローラーと呼ばれるローラーがあり、シワが入らないように、ロールで伸ばしながら染色されます。シワの入りやすい繊細な高密度生地などに使用される染色法です。常圧ジッガーと高圧ジッガーがあり、常圧ジッガーはナイロンの織物に使用されるケースが多く、高圧ジッガーは、ポリエステルの織物に使用され、高温(130℃)の染色が可能です。
液流染色に比べると、もみ込みされないため、生地の風合いは固く上がりやすい傾向にあります。平らにしながら生地をローラーに巻き付けるのですが、投入時にシワがはいると、染色ムラや染色スジ、部分的に色が載らないなどのトラブルに繋がるため、注意が必要になります。
ビーム染色
パンチング孔のあるビーム管に生地を巻きつけ、生地を固定させて染色する方法です。生地をビーム管に巻き付けた状態で、染料液に浸して高温・高圧をかけて染色します。ビーム染色の特徴としては、生地が動くことがないため、フラットな仕上がりになり、特に目ヨレしやすい生地に適しています。
目ヨレは下記の写真のような、生地の目がヨレた状態で、密度が甘い生地や、糸の強度の弱いファインデニール(20d以下の細い糸)などによく見られます。液流染色はもみ込みながら染色されるため、軽量の生地には目ヨレが発生しやすくなります。ジッガー染色もテンションかけながら、行ったり来たりと生地が動くため、生地にダメージを与える場合があります。そのため、生地を固定するビーム染色が目ヨレのしやすい生地には向いています。
ビーム染色の場合は、色の安定性のため、巻き付ける生地の量を一定にする必要があり、染色のミニマム数量が大きくなりがちです。小ロットで染色できない可能性があります。
プリント染色
プリント染色も、後染めの染色法としてポピュラーな染色法です。
液流染色・ジッガー染色・ビーム染色は、大量の水を使用して、廃水作業が必要な上に、廃水の際のろ過作業など膨大なエネルギー消費量が使われます。それに比べてプリントは、水を使用する一般的な染色に比べて、水やエネルギーを大幅に削減することができます。そのため、サステイナブルに繋がる染色法とも考えられています。
プリントの場合は、染色には出せないカラフルな配色を乗せることも可能です。また、色だけではなく、柄付けや模様付けをすることができる点が、通常の染色法とは異なります。
プリントの染色には、細かい模様も再現することができる「デジタルプリント」や、シンプルなプリント柄に向いている「シルクスクリーンプリント」や「ロータリープリント」、他にも「転写紙プリント」などのさまざまなプリント方があります。染色に比べて、初めは型起こしなどから初めて、マスと呼ばれるプリントの色合わせ工程など、ステップは多くなります。
ピグメント(顔料)染色
ピグメント染色は、顔料染色とも呼ばれ、染料を生地の上に乗せてコーティングの要領で染色します。
液流染色・ジッガー染色・ビーム染色やプリントは、染料を科学的に結合させて分子レベルで染色しますが、顔料染色の場合は、色の付いた細かな粒子状の樹脂を、生地の表面に接着することで染めています。科学的に結合させる染色法に比べて、どうしても色落ちしやすくなります。樹脂が洗濯後に落ちやすくなるため、色の退色の懸念や、他の生地への色移りの懸念もあります。顔料染色後に、洗い工程を強化することで、色落ちや色移りを軽減することはできます。しかし、堅牢度はあまり高くないことを、理解した上で採用するか考える必要があります。
少し難点はあるものの、ピグメント染色にしか出せない見た目も演出できます。顔料樹脂を載せた後に、洗うことで、樹脂がランダムに落ちてwash outしたようなビンテージルックに仕上げることもできます。
まとめ
先染め:
- チーズ染色
後染め
- 液流染色
- ジッガー染色
- ビーム染色
- プリント
- ピグメント(顔料)染色
先染めと後染めの主な染色法を紹介しましたが、染色法はまだまだたくさんありますよね。生地の素材によっても、染色法に制限がある場合があるので、紹介した方法が選択できないこともあるでしょう。
生地の素材や求める風合いによっても染色法を変えることがあります。染色だけでもたくさんの使い分けがされており、生地の奥深さを改めて感じました。