さまざまな染色法:合成染料の種類と特徴とは?

染色とは、繊維を染めることを指しますが、その方法には数多くの種類があります。それぞれの素材に適した染料選びは欠かすことができず、素材に合わない染色法では染めることができません。

繊維を染色するには、主に合成染料か天然染料を使用して染色されます。今回はその中でも、「合成染料」に焦点を置いて紹介したいと思います。

今回は、そんな絡み織にフォーカスして、紹介したいと思います。

目次

合成染料の種類と特徴とは?

直接染料

「直接染料」とは、染料をお湯または水に溶かして繊維を染色する方法です。家庭で染色してオリジナルの商品を作れるようなキットを見かけますが、家庭用の染色はほぼ100%この直接染料の手法で染めているでしょう。手軽に染色することができますが、合成繊維などの化学繊維は染めにくく、染色可能な素材が限られています。主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどに使われる染料です。洗濯後の色落ちや汗や日光に対する堅牢度がよくないことが多いので、染色後の取り扱いには注意が必要となります。

酸性染料

「酸性染料」は、染色時の染液に「酸」を加えることから、酸性染料と呼ばれています。分子内に、スルホ基(-SO3H)やカルボキシ基(-CO2H)などを持つ染料で、水によく溶けて安定的な染色が可能です。酸性染料で主に染める素材は、動物繊維のウールやシルク、合成繊維のナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの繊維の染色に使用されています。

反応染料

「反応染料」とは、染料と繊維を化学反応によって結びつける染色法です。染液の中で繊維に染料を吸収させた後に、アルカリ剤を加えて染料と繊維を化学反応で結合させることで染色します。化学反応によってしっかりと分子レベルで結合するので、色の定着性がよく、耐久性に優れた染料です。しかし、染色の条件を厳密に守らないとうまく反応しないため、知識と経験が要する染色法です。

反応染料は、主にセルロース系の染色時に使用され、コットンやリネン、レーヨン、キュプラなどの天然繊維や天然の植物を原料とした再生繊維などを染めることができます。直接染料よりも、より鮮やかで濃度の高い染色を再現することができます。

分散染料

「分散染料」は、不溶性の細かい微粒子状の染料を水に分散させて、繊維の間に染料を入れ込んで染色します。主に合成繊維に使用される染料で、ポリエステルやアセテートなどの染色時に使用されます。彩度の高い色に染められたり、温度管理に気を付ければ、耐久性に優れた染料です。

ポリエステルやアセテートは、温度が低い状態では、分散染料が中に入っていかないので、高温高圧の環境下で繊維の間に隙間を作りながら分散染料を入れて染色します。分散染料が入った状態で、冷却処理することで、染料を閉じ込めて外にでないようにします。

分散染料を使用する際の注意点は、繊維の中に入らずに表面に残った染料をしっかり洗い落とさないと、色移りの原因となります。また、分散染料で染めた生地に、高温のアイロンをかけると繊維が開いて分散染料が外に出てしまう可能性があります。色落ちや色移りの原因となるので、注意が必要です。

カチオン染料

「カチオン染料」は、イオン結合により化学的に染色されるため、通常のポリエステルで使用される分散染料よりも発色性がよく、染色堅牢度も優れています。そのため、蛍光色などの色鮮やかで発色性が要求される色に染める場合に使用されることがあります。カチオン染料では、アクリル繊維やポリエステルの一種でもあるカチオン可染糸の染色に使用されます。

通常のポリエステルは、非イオン性でカチオン染料の分子と結合することができないため、染まりません。カチオン糸は、ポリエステルにスルホン酸基を科学的に配合することによって、イオン結合が可能になり、カチオン染料で染めることができるのです。

硫化染料

「硫化染料」は、染料に硫黄原子を含む染料で、硫化ナトリウムを加えたアルカリ性還元浴で染色します。硫化染料は、主にコットンやリネン、レーヨンやテンセルなどのセルロース系の植物原料の素材を染色します。安価で、黒や紺などの濃色系の色彩の染色に特化しています。しかし、現在では公害規制によって、環境汚染の懸念から、他の染料に置き換えされているので、あまりメジャーな染料ではなくなってきています。

建染染料(バット染料)

「建染染料」は、バット染料とも呼ばれていて、還元染法を使用して染めます。染料を還元して染まることを「建てる」と表現していたことから、建染染料と呼ばれています。

水に溶けない不溶性の染料をアルカリ性の水溶液で還元することによって、水溶性となり、その状態で繊維に染料を吸着されます。染料を吸着した生地を空気にさらすことで、酸化することによって繊維の中で元の不溶性の色素に戻して染色します。

染色酸化することで、元の色に戻る藍染め(インディゴ染料)もバット染料の一種です。染着力が弱いため、濃色を出したい場合は、複数回染色を繰り返す必要があります。主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどに使われる染料です。

ナフトール染料

「ナフトール染料」は、アゾイック染料とも呼ばれ、発色染法で染色します。染料になる一歩手前の下浸剤(したずけざい)のナフトールと顕色(発色)剤のジアゾニウム塩の2つを、繊維上で化学反応によって、反応させて染色させます。主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨン、キュプラやポリプロピレンなどの染色に使われる染料です。

ナフトール染料は、1880年にイギリスの「ホリデイ兄弟(Holliday Brothers)」が、ナフトールのアルカリ溶液に木綿を浸漬させ、ジアゾ化液で処理して赤色の染色に成功したことを機に、開発・発展が進められました。現在ではさまざまな種類の下漬剤や顕色剤が実用化されていて、優れた耐光堅牢度と洗濯堅牢度を有しています。

まとめ

POINT

直接染料

  • お湯または水に溶かして繊維を染色する
  • 主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどを染色

酸性染料

  • 染液に「酸」を加えて染色する
  • ウールやシルク、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなどの繊維を染色

反応染料

  • 染料と繊維を化学反応によって結びつける染色法
  • 主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどを染色

分散染料

  • 不溶性の細かい微粒子状の染料を水に分散させて、繊維の間に染料を入れ込んで染色
  • ポリエステルやアセテートなどを染色

カチオン染料

  • イオン結合により化学的に染色
  • アクリル繊維やポリエステルの一種でもあるカチオン可染糸を染色

硫化染料

  • 染料に硫黄原子を含む染料で、硫化ナトリウムを加えたアルカリ性還元浴で染色
  • 主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどを染色

建染染料(バット染料)

  • バット染料とも呼ばれていて、還元染法を使用して染色
  • 主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどを染色

ナフトール染料

  • アゾイック染料とも呼ばれ、発色染法で染色
  • 主にセルロース系のコットン、リネン、レーヨンやキュプラなどを染色

生地の染色と一言で言っても、素材によってさまざまな染色法を駆使して染められています。一つの生地を仕上げるのに、たくさんの職人の知識と経験が活かされモノつくりがされているのです。

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