ベネシャンとは?由来や特徴とは?

「ベネシャン(Venetian)」って聞いたことがありますか?

スーツに詳しい方は、もしかするとベネシャン生地には馴染みがあるかもしれません。

今回は、「ベネシャン生地」について、由来や特徴を解説したいと思います。

目次

「ベネシャン(Venetian)」とは?

ベネシャン(Venetian)

ベネシャンとは、生地の表面に斜めに鋭い角度で細い畝を持つサテン組織あるいは、ツイルの変化組織で作られる織物生地です。

元々は毛織物として、ウールなどの紡毛糸で作られていましたが、現在は多様化されてコットンやポリエステルなどの合成繊維でも作られるように多様化してきています。 ベネシャンは急角度の畝が特徴の生地で、「5枚サテン(経糸が4本浮いて、1本沈む)」と呼ばれる織組織で作られることが多いです。この組織は、経糸が多く浮いていて、緯糸がほとんど表にでない織物となっています。経糸と緯糸の交差している箇所が目立たないことが特徴です。

「ベネシャン」の由来とは?

ベネシャンの名前の由来は、イタリアの「Venice(ベニス)/Venetia(ベネチア)」という都市で作られたことから来ていると言われています。Veniceといえば、イタリアの北東部に位置し、アドリア海に面した都市で、「水の都」とも呼ばれる都市として有名です。

発音の違いから、ベネシャン生地は他にも「ベネシアン」「ベネ」などと呼ばれています。

「ベネシャン」の特徴とは?

鋭角な細い畝

ベネシャンの特徴でもある斜めに入る鋭角な細い畝が、表面に見えます。大きな畝ではなく、密な細かい畝で構成されるため、遠目から見ると畝が確認しにくいですが、近くで見ると細かい畝が確認できます。

マイルドな光沢感

マイルドな光沢感もベネシャンの特徴の一つです。鋭角なサテン組織は、糸によっては光沢感の強い組織に仕上がりますが、ベネシャンは元々ウールなどの紡毛糸で作られていたため、糸自体がマットで柔らかい印象を与えます。しかしながら、サテン組織の影響もあり、角度を変えてみると柔らかい光沢感が感じられます。光の当たり方で、マットな見た目にも、ツヤ感のある見た目にも変化できることが、ベネシャンの強みです。

主張の強すぎない落ち着いた光沢感のため、カジュアルからフォーマルまで幅広い用途で使用することができます。

深みのある色合いに仕上がる

ベネシャンは、マット感と光沢感の両方を持ち合わせているため、染色すると色に深みが出ます。鮮やかな色や濃い色とも相性がよく、上品でクラシカルな印象を生み出します。

ほどよいハリと厚みがある

ベネシャンは、目を詰めて高密度で織られるので、生地にある程度の厚みとハリがあります。控えめな光沢と厚みのある生地は、高級感のある素材に見せてくれるでしょう。厚みがあるため、コートやスーツなどにも使用される素材です。

なめらかな風合い

畝が細かいので、表面はなめらかな風合いをしています。高密度で作られた生地は固い印象がありますが、サテン組織で作られるベネシャンには、柔らかさと滑るようななめらかさが特徴です。

ドレープ性がある

ベネシャンはドレープ性があるので、ジャストサイズでの縫製品よりも、ややオーバーサイズで落ち感を活かすことがおすすめです。適度にハリと厚みもあるので、スカートやワンピースなどにも美しいシルエットを作り出してくれます。また、美しい落ち感があることから、カーテンなどのインテリア素材にも活躍しています。

シワになりにくい

ベネシャンはシワになりにくく、座ったり立ったりを繰り返すようなボトムスにも使いやすい生地です。シワになりにくいことで、清潔感のある見た目を保つことができます。シワが付きにくいことで、手入れの手間が大幅に減ることもメリットとなります。

耐久性がある

目が詰まっていて厚みのある生地のため、型崩れもしにくく、耐久性のある生地です。特にポリエステルなどの合成繊維を使用して作られる場合は、より耐久性の向上と取り扱いのしやすい生地に仕上がります。

風を通しにくい

高密度に織られているベネシャンは風を通しにくいので、冬物のコートやジャケットにも使用されます。多少の防風性を持っているので、冬の強い風にも負けない生地です。ウールベースで作られる場合は、ウール自体の保温効果によって、より寒い冬から身を守ることができます。そのため、秋冬のアウターには活躍できる素材です。

反対に、通気性が低いため、暑い夏にはあまり適さない生地になります。

ベネシャンスーツとは?

ベネシャンと聞くと懐かしい響きと感じる方もいるかもしれません。

今から30~40年ほど前に、日本でベネシャンのスーツが流行していたのです。今のカチッとしたジャストサイズに近いスーツスタイルとは異なり、ソフトスーツとしてのカテゴリーに落ち感のあるベネシャンの生地が使われていました。肩幅が広く、肩パットが入れられたオーバーサイズのダブルスーツで、昔のバブル期の日本のイメージで想像するようなスーツ地に、ベネシャンは多く使われていた人気の素材だったのです。

現在でもシルエットを変えてベネシャン生地はスーツ地に使われていますが、見かける機会は減っています。

まとめ

POINT

「ベネシャン(Venetian)」とは?

  • 表面に斜めに鋭い角度で細い畝を持つサテン組織あるいは、ツイルの変化組織で作られる織物
  • 元々は毛織物で、紡毛糸で作られていた
  • 5枚サテンでの織組織で作られることが多い

「ベネシャン」の由来とは?

  • イタリアの「Venice(ベニス)/Venetia(ベネチア)」という都市で作られたことが由来

「ベネシャン」の特徴とは?

  • 鋭角な細い畝
  • マイルドな光沢感
  • 深みのある色合いに仕上がる
  • ほどよいハリと厚みがある
  • なめらかな風合い
  • ドレープ性がある
  • シワになりにくい
  • 耐久性がある
  • 風を通しにくい

ベネシャンはマット感とツヤ感を持ち合わせている珍しいタイプの生地です。風合いのよさや耐久性も兼ね備えているバランスのいい生地のため、アパレルやインテリア素材などさまざまな製品に使用されています。

一度は流行を築き上げたベネシャンも、今では目にする機会が減りつつあります。トレンドが1周回って、形を変えながらベネシャン生地を多く目にする日も来るかもしれませんね。

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