夏はもちろんですが、冬でも侮れない紫外線(UV)。
昔は、太陽を浴びることで健康になるなんて言われていましたが、今や太陽の紫外線は人体に影響を及ぼす危険なものとされています。それに伴い、UVカットを謳う服をよく見かけるようになりましたよね?一体どんな生地がUVカットするのでしょうか?
UV(紫外線)カットする生地とは?
そもそもUV(紫外線)とは?
「UV」とは、ultravioletの略で、紫外線を指します。紫外線の定義は、波長が「10~ 400 nm(ナノメートル)」の電磁波です。目に見える可視光線より短い波長で、同じく不可視光線のX線よりは長い波長に位置します。1960年以前では、菫外線(きんがいせん)とも呼ばれていたようです。
ちなみに紫外線は、ultraviolet=紫を超えたという意味を持っています。この由来としては、人間の視覚は、波長の短い光を「紫色光」として感じとり、その波長は360 – 400 nmとされています。それ以上短い波長は、人間の目ではみることができません。そのことから、見えない電磁波である紫外線は、紫を超えたとういう意味を込めたultravioletになったとされています。
紫外線は研究の結果、人体にさまざまな影響を与えることが分かってきています。
紫外線には、「殺菌消毒」「ビタミンDの合成」「生体に対しての血行や新陳代謝の促進」「皮膚抵抗力の昂進」などが有用な作用としてあります。しかし、その反面でさまざまな悪影響もあると言われています。
UV(紫外線)の人体の悪影響とは?
紫外線は波長別に、「UV-A (400–315 nm)」、「UVB(315–280nm)」、「UVC (280 nm 未満)」に大きく分けることができます。それぞれ、人体に与える影響は異なります。
UV-A
地球上に到達する99%は、この「UV-A」とされています。
・老化
皮膚の奥(真皮層)まで達し、コラーゲンやエラスチンなどのタンパク質を変性させ、それによりシワやたるみの原因となります。老化の原因の8割が、紫外線によるものだとも言われるほどです。驚きの数値ではないでしょうか?また、活性酸素を発生させることから、体内の老化を促進させてしまいます。
・目の炎症
UV-Aの65%は目の中の水晶体を通過し、網膜まで到達すると言われています。これにより、炎症や充血の原因を引き起こすとされています。
・アレルギーの誘発
かゆみや赤みなどの症状が出る日光じんましんや薬剤性光線過敏症といった「光線過敏症」を誘発する可能性があります。
UV-B
太陽光線のうち、0.5%が大気を通過するとされています。UV-Bで及ぼす影響は下記となります。
・日焼け
・角膜炎、白内障
・免疫低下
UV-C
オゾン層で守られている地表には到達しないとされていますが、オゾン層が薄くなりオゾンホールができることで、地上への到達が懸念されている光線です。
恐ろしいことに、人の皮膚の培養細胞にUV-Cを照射すると、多くの細胞が死んでしまうと言う実験結果が出ています。まともにUV-Cを受けることになると皮膚がんや失明の懸念もあると言われています。
UVカット生地とは?
本題のUVカットする生地とはどのようなものがあるのでしょうか?
UVカット微粒子を練り込む
代表的な方法の一つとしては、フルダル糸などのような酸化チタンや特殊セラミックの微粒子を化学繊維に練り込むという方法です。酸化チタンや特殊セラミックには紫外線を吸収・乱反射させる効果があります。高濃度に練り込むことで、紫外線が肌に到達することを軽減することが期待できます。
紫外線吸収剤を塗布する
糸の段階で紫外線対策の微粒子が練り込めなくても、後加工で「紫外線吸収剤」を塗布することができます。化学繊維だけでなく天然繊維にも有効ですが、糸自体に練り込んだものと比べると効果は使用の度にUVカット効果は落ちやすくなります。
糸形状で光を反射させる
糸の形状によって、光の反射率が大きく変わります。ほとんどの糸は、球体状の形をしていますが、扁平糸(へんぺいし)や十字型、星型にするなどの工夫をして、光を乱反射させることで、UVカット性能に繋がります。
引用:特殊な断面加工で高い光透過性を持つインテリアファブリック|ベルスクェア®|原糸・衣料資材・工業資材などの先端繊維メーカー【KBセーレン株式会社】 (kbseiren.com)
透けにくい生地を選ぶ
光を透過させないためには、透けない生地を選ぶことでUVカットが期待できます。実際に多くのUVカットを謳った服は、「防透け性」を備えた生地になっているかと思います。例えば、酸化チタンを多く含んだフルダル糸は、同じデニールのセミダルやブライト糸に比べて透けにくい糸です。反対に、透け透けと言えるほど、透過率の高い生地には、加工などを施したとしても高いUVカット効果は期待できません。「防透け性」は、UVカットにおいて、非常に重要な要素です。
厚みがあり高密度生地を選ぶ
密度の高い生地は、隙間がなくなるので、光の透過率を抑えることができます。高密度かつ、厚みのある生地であれば、特殊な糸や特殊な加工を施さなくてもUVカット生地になりえます。
濃色を選ぶ
UVカットと言えば、「黒」などの濃色をイメージしませんか?夏に日傘をさす方も、黒の日傘を使っている人が多い気がしますよね。同じ生地でも、淡色か濃色かによって、UVカット率が変わります。より高いUVカット効果を望むのであれば、濃色の生地を選ぶことがベターです。
UVカット率を記載している生地を選ぶ
極論、本当にUVカットがどれくらいの効果なのか分からない場合は、やはりタグや商品説明に乗っているUVカット率を参考にしましょう。特にUVカットを謳っていなくても十分にUVカットとして成立する生地はたくさんありますが、不安な場合はUVカット表記のあるものから選ぶこともいいかもしれません。
衣料品の場合、「UPF OO」(UPF 30)などといった表記がされています。日焼け止めクリームなどを購入したことがある方は、なんとなくイメージがつくかもしれません。UPFの数値が高いほど、UVカット効果が高いことを示します。
ちなみにUPF50+は、UVカット率が95%以上で、最高値の紫外線カット表記となります。UPF50は、紫外線対策を何もしない状態に比べて、50倍の遮蔽能力があることを指します。
まとめ
UV(紫外線)
- 波長が10~ 400 nm(ナノメートル)の電磁波
- 人体に様々な影響を及ぼす
- UV-A: 老化・目の炎症・アレルギー誘発
- UV-B: 日焼け・角膜炎・白内障・免疫低下
- UV-C: 細胞破壊
UVカット生地
- UVカット微粒子を練り込む
- 紫外線吸収剤を塗布する
- 糸形状で光を反射させる
- 透けにくい生地を選ぶ
- 厚みがあり高密度生地を選ぶ
- 濃色を選ぶ
- UVカット率を記載している生地を選ぶ
紫外線の影響が原因で、想像以上に人体への悪影響があるんですね。紫外線対策はもはや、女性の美容や日焼け対策だけではなく、全ての人に関わる問題となっています。紫外線は夏だけでなく、年中地上に降り注いでいます。将来の自分のためにも、UVカット生地にもぜひ注目してみてはいかがでしょうか?