生地の帯電防止(静電気防止)法とは?

少し前に、静電気と繊維の関係と、静電気が身体に与える影響について紹介させていただきました。静電気によるさまざまなデメリットがある中で、どのように対策すればいいでしょうか?

今回は、「生地の帯電防止(静電気防止)法」について記事を書きたいと思います。

目次

帯電防止(静電気防止)

帯電防止(静電気防止)

帯電とは、摩擦などの影響によって、電気を通しにくい物体に電子が蓄積し静電気を帯びる現象です。帯電防止とは、簡単に言うと“静電気を防ぐ”ことを指します。生地に帯電した状態で、着脱を行うことで、摩擦が発生して、放電することで、バチっと静電気による痛みを生じたり、生地が体にまとわりついたりするなどの影響を及ぼします。

生地の帯電防止法とは?

衣料品に多く消費されるポリエステルやナイロン、アクリルなどの化学繊維は、電気を通しにくい性質を持っています。つまり、電気を通しにくい分、電気が溜まりやすい=帯電しやすい繊維となります。細かく分けると、プラスに帯電しやすいのがナイロンで、マイナスに帯電しやすい繊維が、ポリエステルとアクリルに分かれますが、いずれも中間の帯電しにくい繊維から離れた位置にあることが、上の図で分かるかと思います。

主に化学繊維や帯電しやすい繊維には、どのような帯電防止策が有効でしょうか?生地には、帯電防止策として、紡糸加工や後加工などいくつかの方法があります。

帯電防止加工

帯電防止加工とは、後加工で静電気を起こりにくくする方法です。帯電防止剤(主に界面活性剤などの親水化薬剤)を混ぜることで、静電気を抑制させます。染色加工後に、帯電防止剤をコーティングするなどして、加工がされます。

親水化薬剤を塗布することで、空気中の水分を吸着して、電気を通しやすくします。そうすることで、導電性が高まり、生地の摩擦を減らすことができるので、静電気発生の抑制に繋がります。化学繊維や合成繊維は、電気を通しにくい性質のため、帯電防止剤を塗布することによって、導電性の高い生地に変わります。

しかし、加工で上から載せるので、洗濯や摩擦等で薬剤が落ちるため、耐久性には欠けます。永久的ではない点は、理解する必要があります。

導電性繊維

導電性繊維とは、化学繊維などに帯電しにくい性質を持たした繊維です。例えば、導電性がよくなる“金属繊維”や“カーボンブラック”などを混ぜ込んで作られる糸があります。

金属繊維

金属は、導電性が非常に優れていることは有名ですよね。金属繊維は、ステンレス鋼のような金属を繊維化したり、金属酸化物を繊維に練り込んだり、繊維の表面を金属でコーティングすることなどで作られています。金属は、熱伝導性にも優れているので、体温を逃がさない保温効果なども一緒に得られます。静電気が発生しやすいのは、空気が乾燥する寒い冬の時期のため、熱伝導性の高い金属繊維は、うれしい付加価値となるでしょう。

カーボンブラック

カーボンブラックとは、直径3~500mmほどの黒色をした炭素の微粒子です。一般的には、石炭乾留(不揮発性の個体有機物を空気の含まない状態で熱分解することで、揮発性有機物と不揮発性物質に分けること)によって副生されるクレオソート油や、石油精製等で副生される芳香族油などの油やガスを不完全燃焼させることで、作り出すことができます。また、炭化水素を熱分解することでも製造されます。これらの不完全燃焼で生まれる黒色の炭素の微粒子(スス)が総称してカーボンブラックと呼ばれます。

カーボンブラックの一番の用途は、車などのタイヤに使用されます。多くのタイヤが黒いのは、カーボンブラックによるものです。ゴムの馴染みとよく、補強材として使用されることが多いのですが、「導電性付与剤」としても使用されます。

カーボンブラックを繊維に練り込むことで、化学繊維を導電性繊維へと変えることができます。カーボンブラックの配合量にもよりますが、粒子自体が黒いので、透明や真っ白の糸ではなく、黒みを帯びた糸となるでしょう。原料自体に練り込むことで、導電性の効果は後加工とは異なり、半永久的に持続します。

帯電防止効果が薄れた時は?

特に、後加工などで帯電防止剤をコーティングした場合は、使用による摩擦や洗濯などを繰り返すことで、効果が落ちてしまいます。その度に新しいものを買うこと以外にも、持続性を持たせる方法はあります。

静電気防止スプレーを使用する

手っ取り早く帯電防止効果を付加するには、市販で売られている「静電気防止スプレー」の使用がおすすめです。無香料タイプや香り付きのタイプ、花粉防止などと、静電気防止以外にもさまざまな機能を持ち合わせた静電気防止スプレーも数多く売られています。静電気を抑制することで、花粉やPM2.5などが生地に付着することも防いでくれるので、アレルギーのある方には、ぜひ試してみていただきたいです。スプレーによっては、使用用途が限定されるものもあるので、服や人体に影響がないかはよく確認してから、購入しましょう。

静電気防止効果のある柔軟剤を使用する

柔軟剤を使用することで、生地の表面が滑らかになり、摩擦防止に役立ちます。柔軟剤の多くには、界面活性剤が含まれていることが多く、水分の吸着率を上げることや、生地を滑らかにすることで、摩擦が起きにくくなります。摩擦が発生しにくくなると、静電気も抑えることが期待できます。柔軟剤も手軽に取り入れられる静電気防止対策となりますので、悩まれている方は、柔軟剤にも注目してみてはいかがでしょうか。

クリーニング屋で帯電防止加工を施す

クリーニングも会社によっては、帯電防止加工を行っているところもあります。定期的にクリーニング業者に依頼することで、日々のメンテナンスを省くことができます。毎日のスプレーが面倒になれば、クリーニング屋で加工してもらうのも手です。

加工以外でも、肌の保湿をすることで、水分が肌に含まれるため、静電気防止へと繋がります。女性は肌に直接触れるストッキングなどを着用した際に、静電気の発生を経験したことがあるのではないでしょうか。肌の保湿も一つの対策となるようなので、静電気が気になる方は保湿を心がけることで軽減されるかもしれません。

まとめ

POINT

帯電防止

  • 摩擦などの影響によって、電気を通しにくい物体に電子が蓄積し静電気を帯びる帯電現象を防ぐこと

生地の帯電防止法

  • 帯電防止加工
  • 導電性繊維: 金属繊維、カーボンブラック

帯電防止効果が薄れた時は?

  • 静電気防止スプレーを使用する
  • 静電気防止効果のある柔軟剤を使用する
  • クリーニング屋で帯電防止加工を施す

静電気は、これから冬に向けての悩みの一つとなりますよね。せっかくのお気に入りの服も、静電気が発生すると少し着るのを避けたくなります。静電気防止策としての工夫は、手軽に取り入れるものもたくさんあるので、ぜひ試してみてください。

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