最古の繊維「麻」とはどんな繊維?種類や特徴とは?

皆さんは「麻(あさ)」と言えば、どのような印象がありますか?

「麻」は広い範囲の繊維を指すので、人それぞれ違うようなイメージを思い浮かべるかもしれません。麻の生地はそれほど奥深い繊維なのです。

今回は、「麻」に焦点を当ててみたいと思います。

目次

「麻」とはどんな生地?

「麻」とは?

「麻」とは、植物表皮の内側にある柔繊維または、葉茎などから採取される繊維の総称です。「麻」という名称は日本独自のものであり、従来はアサ科アサ属である「麻=大麻」を指していました。現在では植物から採れる繊維を、「麻」と総称して呼ぶようになっています。国際的には「麻」とまとめずに、原料となる植物によって、それぞれの名称で呼ばれています。例えば、「ヘンプ(大麻)」、「リネン(亜麻)」、「ラミー(苧麻-ちょま)」などのような名称があります。

日本では広義の意味では、前述した通り「植物から採れる繊維の総称」ですが、日本工業規格(JIS)による家庭用品品質表示法により、衣類のタグに麻の名称で流通させてよい繊維は、「亜麻」と「苧麻」のみの2種類となります。この2つ以外は、「麻」と表記せず、指定外繊維に含まれます。本来、麻は大麻を指していたのにも関わらず、JIS規格では大麻は含まれていないという、少し複雑な背景があります。

「麻」の品質表示

麻の名称としては、家庭用品品質表示法により、「リネン(亜麻)」、「ラミー(苧麻-ちょま)」の表記になるのですが、「麻」または「F」と表記されている生地見本を見たことがないでしょうか。

特に安価な綿麻混紡素材などに多いのですが、リネン、ラミーということのトレーサビリティが取れず、麻原料の総称であるフラックス(Flax)を記載している場合があります。

「麻」の語源

「麻」とういう漢字は、「广 (まだれ)」と「林」から成っています。「广 (まだれ)」は、家の屋根の象形から「家」を意味します。そして「林」は、人が麻を水に浸し、繊維をほぐして皮を剥いでいる様子を指すとされています。この二つを掛け合わせて、「麻」とういう漢字は「小屋の中で人が集まって麻の皮を剥いている様子」を表していると言われています。

「麻」の歴史

「麻」の歴史は非常に古く、人類最古の繊維とも言われています。アサ科の植物は、日本にとどまらず、世界中のあらゆるところで自生する植物です。種類も多いため、具体的な発祥の起源を辿るのは難しいとされています。諸説ありますが、麻の中でも「リネン(亜麻)」は最古の繊維と考えられ、紀元前8000年には世界文明の発祥の地、チグリス・ユーフラテス川に自生していたと言われています。

確認されている麻としては、紀元前約1万年前の新石器時代の遺跡や紀元前の古代エジプトのミイラからリネンの生地が発見されています。古代エジプトでは、リネン製のカラシリスと呼ばれる巻衣が、「神に許されたもの」として、神官の衣服や神事に用いられていたことが、歴史学者によって解き明かされています。

中世ヨーロッパではテーブルリネンやベッドリネンなど、生活のあらゆる場面に使われるようになり、その文化は今日まで受け継がれています。

日本の麻の歴史

日本で最古の麻が発見されたのは、縄文時代早期の鳥浜貝塚の集落遺跡(福井県三方町)で発掘された「大麻製の縄」です。この遺跡からは六種類の縄が出土していますが、この中で2種類は麻で作られた縄でした。考古学の分析から、縄文草創期(約一万年前)のものであると報告されています。

引用:鳥浜貝塚 – Wikipedia

弥生時代には、麻製の布生地が使用されていたことが確認されています。さらには、奈良時代末期(7世紀後半)に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集である「万葉集」の中にも、麻を詠んだ歌が二十首以上も納められています。麻は1万年以上に渡り、私たちの生活の中で欠かせない繊維として、日本文化を支え続けていることが分かります。

「麻」の種類

「麻」とひと言で言っても、その中でも原料となる植物によって、たくさんの種類に分けられています。麻の種類は20種類近くあり、それぞれ異なる性質を持ち合わせている奥の深い繊維です。

麻繊維は、「靭皮(じんぴ)繊維」と「葉脈(ようみゃく)繊維」の2つに大別することができます。「軟質繊維(軟質麻)=「靭皮繊維」と「硬質繊維(硬質麻)=葉脈繊維」とも表現することもあります。


靭皮(じんぴ)繊維

靭皮繊維は、茎の靭皮部分(樹木の外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)から採取して作られる繊維です。靭皮繊維は葉脈繊維よりも柔らかい軟質繊維です。

靭皮繊維の代表的な種類であげられるのは、「亜麻(リネン)」「苧麻(ラミー)」「大麻(ヘンプ)」「黄麻(ジュート)」」「洋麻(ケナフ)」「莔麻(インディアンマロー)」などがあります。

現在日本で流通している麻のほとんどは、「亜麻(リネン)」と「苧麻(ラミー)」が占めます。

葉脈(ようみゃく)繊維

葉脈繊維は、葉脈・葉っぱの部分から作られる硬質繊維です。葉脈繊維の代表的な種類は、「マニラ麻(アバカ)」「サイザル麻(サイザル)」「ニュージーランド麻(マオラン)」などがあります。

太くて硬いため、紡績や織物には適さないので、ロープなどの資材用に使用されることが多いです。

「麻」の特徴

麻の特徴は、採取される植物によって、変わりますが、代表的に挙げられる麻の特徴は、下記の通りです。麻と言えば涼し気で夏のイメージがないでしょうか?夏に愛用される理由がたくさんあります。

放熱性がある

麻繊維は、放熱性が高く、衣服の中の熱がこもらないように放出し、快適に保ってくれます。そのため、厚い夏には麻繊維はとても優秀で、手放せない繊維です。放熱速度も速いため、熱中症などが心配になる猛暑日には、ぜひ身に着けたい生地です。

通気性が高い

麻は通気性が高く、ムレにくい素材です。汗を搔いた後の不快な水蒸気も、外に放出してくれるので、快適な衣服環境をキープします。

吸水速乾性が高い

麻繊維の特徴として、吸水性が高いことも挙げられます。蒸気や汗を素早く吸収し、蒸発も早いことから、速乾性もあります。高温多湿と言われる日本の夏にはぴったりの生地です。

クールタッチ

麻は水分吸収率が高いことから、触るとひんやりとクールタッチに感じられます。麻製のシーツなどに肌が触れると、心地のいい冷たさを感じたことはないでしょうか? 通気性も高く、暑苦しくならない素材から、寝具類やシーツには麻の素材がたくさん使われています。

強度が高い

麻繊維は、天然繊維の中でも特に丈夫な繊維として知られています。水に触れると強度が増すので、洗濯をできることも魅力です。水に触れると極端に強度が下がるデリケートな天然繊維も多いので、水洗いをしっかりできることは大きなメリットになります。

繊維自体も丈夫なので、普段使いで生地が破れる心配もあまりないでしょう。

まとめ

POINT

  • 植物表皮の内側にある柔繊維または、葉茎などから採取される繊維の総称
  • 人類最古の繊維

麻の種類

  • 靭皮繊維: 亜麻、苧麻、大麻、黄麻、洋麻、莔麻など
  • 葉脈繊維: マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻

麻の特徴

  • 放熱性がある
  • 通気性が高い
  • 吸水速乾性が高い
  • クールタッチ
  • 強度が高い

麻繊維は人類最古の繊維として知られる、歴史ある繊維です。遥か昔から、日本や世界で使用され、いまだに愛用されているとは考え深いですね。

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