「紙布(しふ)」というワードを聞いたことがあるでしょうか?
紙を使った布ですが、流通量が一般的な布地と比べて少ないので、聞き馴染みのない言葉かもしれません。紙布にしかない特徴もあるので、ぜひ注目いただきたい素材です。
今回は、「紙布生地」について紹介していきたいと思います。
「紙布(しふ)」とは?
紙布
「紙布(しふ)」とは、その名の通り、紙で作った布地です。普段ノートなどに書いている紙を想像すると、布地になるイメージができないかもしれませんが、紙も繊維でできています。紙布と言われる布地は、主に「和紙」を使用して作られます。日本の伝統的な製法で作られた和紙を使った布は、日本の伝統的な着物を筆頭に、さまざまなアパレル製品やインテリア製品に展開して使用されています。
和紙とは?
和紙とは、日本古来の製法で作られる紙です。麻・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)などの植物を原料に作られます。日本の和紙は、西洋の紙に比べて圧倒的に丈夫という特徴を持ちます。洋紙に比べて和紙は、繊維の長さが長く、強度があります。洋紙が100年の寿命とすると、和紙は1,000年持つと言われ、和紙の耐久性と丈夫さは製紙の中でもトップクラスです。紙布は、そんな和紙を使用して作られています。
紙布の作り方
- 麻などの原料から和紙の原料となる繊維を取り出します。
- 和紙の製法に使用される機会漉き(すき)技術を使って、紙を漉きます。
- 漉いた紙を数ミリ幅の細かいテープ状に裁断します。
- 裁断したテープに撚りをかけて和紙糸を作ります。
- 製織
和紙布の特徴とは?
和紙で作った紙布には、他の繊維にない特徴を持ち合わせています。どのような特徴があるのでしょうか?
環境に優しい
循環型資源
和紙は植物由来でできているので、環境に優しい繊維です。化石資源から作られているポリエステルやナイロンなどの合成繊維は、有限資源として資源枯渇の危惧がされています。和紙は植物由来で、再生可能として循環資源の位置付けにあるため、化石資源を減らすことができるとして、環境配慮素材として知られています。加えて化石資源を減らすことで、温室効果ガスの低減に貢献できます。
カーボンニュートラル
植物由来のため、カーボンニュートラルとしてCO2の排出量削減に貢献します。「カーボンニュートラル」とは、植物が成長過程でCO2を光合成によって吸収するため、商品の生産・廃棄時に排出されるCO2は相殺されるという考えです。生産から商品出荷時の輸送等から排出されるCO2が、厳密に光合成で使用されるCO2と同等ではないのですが、商品のライフサイクル全体で見ると、二酸化炭素排出量削減に大きく貢献します。
とても軽い
和紙繊維はとても軽く、一般的な綿糸と比べると約1/3程度の重さです。シルクやウールと比べても、約2~3分の1程度で、とても軽い繊維です。
ドライタッチ
和紙の質感のように、紙布生地にはさらっとドライな肌触りをしています。汗をかいてもベトベトしないので、春夏向けの生地にもマッチします。濡れてもべっとりしないことから、汗冷えしにくい素材でもあります。夏場に外で汗をかいた後に、冷房の効いた室内に入ると体が冷えてしまう経験ってありますよね?紙布を使用した生地であれば、一般的な生地に比べて、汗冷えしにくく、さらさらした快適な着心地にしてくれるでしょう。
ハリがある
紙布にはハリとコシがあり、へたりにくい生地です。
吸湿性がある
和紙には湿気を吸う力が優れています。ムレにくい繊維として、衣料品にも適しています。
アパレル向けにはあまり関係ありませんが、音の吸収も高いことから、これの特性を活かして、和紙は壁紙などにも使用されています。
通気性・速乾性がある
和紙は通気性に優れていて、風通りのよさから、濡れた生地も早く乾きます。吸湿性もありながら、速乾性もあるので、汗をよくかく場面で重宝する素材です。速乾性は、コットンの5倍以上とも言われています。
油脂に対する吸収力がある
和紙は水分の吸収以外にも油の吸収力も優れています。これは他の繊維にはあまりない特徴のひとつです。和紙は昔から、「脂とり紙」として肌の皮脂を抑える目的で使用されています。脂汗をかいても、紙布生地であればしっかり吸収してくれます。
消臭力・抗菌力がある
和紙には、バクテリアなどの菌を抑える抗菌作用と消臭力が備わっています。汗をかくと臭いが気になると思いますが、和紙には臭いを防いでくれる効果が高く、さらにその消臭力・抗菌力の持続効果が高いことでも知られています。
毛羽立ちにくい
和紙は他の繊維に比べて毛羽が少ないことも特徴です。毛羽が多いと見た目以外にも着心地も悪くなります。肌が敏感な人にとっては、かゆみやアレルギーの原因を誘発する可能性もあります。和紙はこの毛羽立ちが起きにくいことから、肌への負担も軽く、敏感肌の人にとっては特におすすめの素材です。
耐久性が高い
和紙は、前述で洋紙よりもはるかに丈夫と紹介しましたが、布地にしても同様に高い耐久性を持っています。破れにくいので、長く着ることができます。耐久性が高いことで、製品の買い替えのスパンを伸ばしてくれることから、サステナブルとも言えるでしょう。
静電気を抑制する
和紙は静電気を発しにくい素材です。天然繊維は、静電気を発しにくいですが、和紙にも同様の特徴があります。静電気を発しないことにより、表面にホコリやダニなどが吸着しにくく、清潔に保つことができます。
紫外線カット
和紙は紫外線を通しにくい性質のため、紙布生地も高い紫外線カット効果が期待できます。紫外線は人体への悪影響を与えることが発表されてから、紫外線カットを謳う製品も増えてきました。高密度など織り方を工夫することで、かなり高い紫外線カットを実現することができるでしょう。
他の繊維との組み合わせ
和紙は値段が高い点と製織の点から、100%和紙で布地を作らずに、他の繊維と合わせて生地にすることがほとんどです。素材の組み合わせ次第では、和紙のメリットに加えて、別の素材のメリットを掛け算するような生地が出来上がります。コットンやキュプラなどの再生繊維などと組み合わせたりすることで、新たな風合いや機能を生み出すことができます。
まとめ
紙布(しふ)
- 主に和紙で作った布地
紙布の作り方
- 麻などの原料から和紙の原料となる繊維を取り出す
- 紙を漉く
- テープ状に裁断
- 撚りをかけて和紙糸を作る
- 製織
和紙布の特徴
- 環境に優しい: 循環型資源・カーボンニュートラル
- とても軽い
- ドライタッチ
- ハリがある
- 吸湿性がある
- 通気性・速乾性がある
- 油脂に対する吸収力がある
- 消臭力・抗菌力がある
- 毛羽立ちにくい
- 耐久性が高い
- 静電気を抑制する
- 他の繊維との組み合わせ
和紙で作られたものが、布になるとは意外ではなかったでしょうか?しかも、紙布生地には他の繊維では見られないさまざまなメリットがあります。環境にも肌にも優しい紙布生地を取り入れてみてはいかがでしょうか。