コートやアウターの裏についている裏地生地には、カラフルなものやプリント柄が施されたものまで、多種多様な種類の生地がありますよね。おしゃれのために裏地があると思われている方も多いかもしれませんが、裏地にはたくさんの役割があるのです。
今回はそんな「裏地生地」にはどのような目的があって使用されているのかについて紹介したいと思います。
裏地の役割とは?
裏地にはたくさんの種類の生地が使われています。そもそも裏地とは、どのような目的で使われているのでしょうか?
表面のすべりをよくして、着脱しやすくする
裏地といえば、なめらかですべりのいい表面をしていますよね。その目的は、衣服を着脱する際に引っかかりなくスムーズに着ることができるためです。上着などを切る際は、肌に直接触れる場合もありますが、何か下にインナーなどを着用することがほとんどですよね。コットンのようなすべりの悪い生地をインナーと上着で着る場合、着脱時につっかえてしまうことがあるでしょう。裏地をつけることで、そのような生地同士の引っかかりを防ぐことができます。
他にも、ストレッチ性の全くない服は脱ぎ着するのに一苦労しますが、そのような伸びない生地にも表面がツルツルした裏地を使用することで、着脱しやすくなります。全面に裏地を付けるものや、腕や背中の上側の特に着脱に影響する部分にのみ裏地を付けることもあります。
肌への摩擦負担を軽減する
表面がなめらかな裏地を使用することで、肌の摩擦を軽減することが期待できます。表地の素材によっては、ごわついている生地や、チクチクして肌への負担となる生地もあります。例えお気に入りの服でも、着る度にかゆくなったりすると、タンスの奥に眠ってしまうのではないでしょうか?肌に直接ふれる場合は特に裏地の重要性に気付かされるのではないでしょうか?
肌のべたつきを防ぐ
裏地には吸湿性を持ち合わせた素材も多く使用されます。裏地を追加することで、2枚生地が重なる分、ムレやすいイメージがあるかもしれませんが、むしろ裏地を付けた方がムレを解消することもあります。吸湿性のあるコットンやキュプラなどの素材は、湿気を吸収して外に放出する力があるので、裏地にはおすすめの素材です。
静電気を抑制する
表面がなめらかな裏地を使用すると、着脱の際の摩擦を抑えることができるので、静電気の発生を抑制してくれます。静電気を抑制することで、製品の寿命を延ばすこともできるので、見落としがちですが重要なポイントの一つです。
透け防止
分厚い生地であればいいのですが、軽くて薄い生地を使用する場合は生地が透ける可能性があります。特にパンツ向けの生地は、透ける生地は使用できません。薄手のパンツ生地には、透け防止として裏地が使用されます。
生地の補強となる
表地が薄手の生地や軽量生地の場合、生地の強度懸念があります。このような生地に裏地を付けることで、生地の補強としての役割も果たしてくれます。生地を傷める摩擦は、衣服と体に触れる部分で多く発生します。特に薄手の生地は強度が弱いので、破れたりダメージを受けやすくなりますが、裏地を使用することで、摩擦軽減のうえに1枚生地を追加するので、裏地なしと比べて長く着ることができるでしょう。
保温性を高める
裏地をつけることで、体温を外に逃がさない効果も期待できます。さらに裏地に起毛加工やフリースのような素材を使用することで、高い保温効果を発揮します。冬物には裏地は欠かせない存在です。
黄ばみや汚れを防ぐことができる
服が汚れるのは、外からの汚れだけとは限りません。体から出る汗や汚れが原因で、服の黄ばみに繋がってしまいます。裏地をつけることで、表素材へ汚れが移りません。
美しいシルエットとへたり予防
表地がペラペラでへたりやすい生地の場合、どうしても安っぽく見えたり、シルエットがきれいに仕上がりません。ここで裏地が活躍します。ある程度のハリやコシのある裏地を使用することで、ペラペラの生地に厚みが出てへたりにくくなります。シルエットを美しく保つことや、洗濯しても型崩れがしにくくなります。
おしゃれを2倍楽しめる
裏地って意外に動いた際にちらっと見えるものです。表地と印象の変わる色やプリント柄を施した生地を使うことで一気におしゃれな印象にアップグレードします。表地は落ち着いた印象でも、裏地には派手な色目やプリント柄を採用することで、2倍おしゃれを楽しめた気がしませんか?透け感のある表地には、裏地も表地の色目に影響を与えるので、透け感のある表地に濃色の裏地を重ねることで奥行きのある見た目になり、裏地が主役になることもあるでしょう。
見えないところにも気を遣うことで、おしゃれな印象を与えることができます。
高級感が出る
単純に1枚の生地より表地と裏地の2枚の生地を使用した方がコストも高くなります。その分、出来上がった製品には1枚使いの衣服よりも、高級感のある仕上がりになるでしょう。
特にスーツには裏地は欠かせないですよね。サマースーツなどで通気性を求めたスーツには、裏地は付いていないこともありますが、ほとんどのスーツには裏地が付いています。手触りはもちろん、裏地の柄や色も含めて成り立っているようなそんな存在感があります。ビジネスやフォーマルの場、パーティなどのワンランク上の場所に行く時に、スーツを着ることが多いと思いますが、安っぽい印象よりも、上品で高級感のある印象にも見られたいはずです。
付加機能をつけられる
裏地に加工することで、付加機能をつけることができます。例えば、衣服の内側は熱や汗がこもりやすくなりますが、防臭加工を施した裏地を使用することで、臭いの軽減に繋がります。他にも静電気防止加工などをすることで、肌へのダメージや衣服間の静電気を抑えたり、接触冷感加工などで夏でも快適に着られる服に仕上げることもできます。
まとめ
裏地の役割
- 表面のすべりをよくして、着脱しやすくする
- 肌への摩擦負担を軽減する
- 肌のべたつきを防ぐ
- 静電気を抑制する
- 透け防止
- 生地の補強となる
- 保温性を高める
- 黄ばみや汚れを防ぐことができる
- 美しいシルエットとへたり予防
- おしゃれを2倍楽しめる
- 高級感が出る
- 付加機能をつけられる
裏地は脇役であまり注目されることはないかもしれませんが、かなり重要な役割を担っていることが伝わったのではないでしょうか?アウターやコートは当たり前のように裏地がついていることが多いので、裏地なしでの使いにくさに遭遇する機会は少なかったかもしれません。裏地がないと着脱のしにくさや、製品寿命が短くなるなど、さまざまな不満が出てくるでしょう。ぜひ、裏地の重要さと選ぶ楽しさを追求してみてはいかがでしょうか?