難燃生地とは?防炎・不燃との違いや製造法とは?

「難燃生地」を使用したことはありますか?あまり気にしなくても、身近にあるインテリア素材などが難燃性の素材で作られた生地であったりするかもしれません。

命にも関わる重要な役割を担う「難燃生地」について、紹介したいと思います。

目次

難燃生地とは?

難燃生地

難燃(なんねん)生地とは、燃えにくい生地を指します。燃えにくい原料を使用して紡糸したり、糸の製造段階で、燃えにくくなる分子を練り込んだりなどして加工することで、燃えにくい素材の生地を作ります。

消防庁によると、令和2年度の1年間で、日本で起きた総出火件数は、34,691件報告されています。1年365日で単純に割り返すと、1日95件近くの出火が日本のどこかで発生していることになります。火災は命の危険を脅かすほど危険で、毎年1,000人以上の人が火災で亡くなっています。いつどこで起きるか分からない、身近なものです。こういった危険を減らすためにも、難燃生地は大いに役立ちます。

参考:000775441.pdf (soumu.go.jp)

「難燃」・「防炎」・「不燃」の違いとは?

「難燃」・「防炎」・「不燃」は、どれも燃えにくい意味を持っているので、混同したり、どれも同じ意味と認識されている方もいるかもしれません。しかし、それぞれ異なる意味合いがあり、使われ方も違います。

難燃

難燃には、「素材自体が燃えにくいもの」という狭義の意味合いが含まれ、具体的に繊維やその基布自体が燃えにくいことを指します。

防炎

防炎とは、“燃えにくい”という点は、難燃と同じですが、「後加工によって燃えにくいもの」を指します。難燃の場合は素材自体が燃えにくいですが、防炎の場合は、素材自体は燃えやすい可燃性の生地に、防炎効果のある剤を塗布加工したり、染色時の染料と一緒に剤を混ぜたりするなどして、素材への後加工で燃えにくい生地を作ります。

防炎加工は、洗濯や水洗いなどで効果が薄れてしまう可能性があるので、難燃生地の方が耐久性が高いと言えます。水洗いする機会が多いものには、難燃や不燃生地を使用するなどの用途によっての使い分けが重要です。

不燃

不燃とは、「燃えないもの」を指します。難燃は燃えにくいですが、燃える可能性はあるので、不燃とは異なります。ガラス繊維などは燃えない不燃の性質を持っています。

難燃性を示す「LOI値」とは?

難燃性を数値で測定するには、「LOI値」が用いられます。LOI値は、窒素と酸素の混合気体において、物質の燃焼を持続させるのに必要な最少酸素量の容積百分率で表した数値です。数値が大きいほど、燃焼するのに必要な酸素が多くなるので、燃えにくいことが分かります。

難燃性の目安として、一般的にLOI値が27以上を超えると難燃性のある生地として扱われます。22以下であると、可燃性のある生地のため、火を取り扱う際には燃え移りには十分に注意しましょう。

難燃繊維の製造法とは?

難燃繊維はさまざまな方法で作られています。繊維自体が難燃性のあるものや、繊維によっても加工法を変えながら製造されます。そもそも燃焼は、素材が熱分解されることによって発生する可燃ガスと酸素が結合することにより、起こります。難燃性を持たせるには、可燃ガスと酸素の結合を妨げる必要があります。

原料自体に難燃性がある

元々燃えにくい性質のある素材はたくさんあります。LOI値が27以上(=難燃性)を期待できる繊維は、「アラミド繊維」・「ポリ塩化ビニル」・「塩化ビニリデン」・「モダクリル」などがあります。このような難燃性のある素材を使用することで、難燃効果を得られます。

ハロゲン系化合物の使用

ハロゲン系化合物を混ぜることで、難燃効果が得られます。ハロゲン系化合物とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかの原子を含む化合物を指します。ハロゲン系化合物を重合させることによって、熱分解によりハロゲン系の不燃性ガス発生します。この不燃性ガスが酸素濃度を薄めるため、酸素結合の量が妨げられ、燃焼の進行を抑えることができます。紡績時、または染料などに混ぜ込んで後加工で難燃機能を付帯させる方法があります。

しかし、ハロゲンは人体に蓄積して、分解されにくいことが発表されてから、ハロゲンに関する規制が検討されています。一部の企業からは、ハロゲンフリーの動きが進められています。

リン系化合物の使用

リン系化合物を混ぜ込むことで、燃焼時に繊維から水素と酸素を奪うことで、炭化現象が起きます。炭化は、炭を作る過程でも行われる製法です。炭化が起きると酸素結合が妨げられるので、燃焼の促進が抑えられます。紡績時、または染料などに混ぜ込んで後加工で難燃機能を付帯させる方法があります。

難燃生地の使用用途とは?

難燃性生地は、多くの用途で求められます。

消防服

一番イメージしやすいのは、消防服ではないでしょうか?時には火の中で、消防活動を行うことのあるため、消防服は高い基準を満たす難燃性のある生地が使用されます。主に耐熱性の高いアラミド繊維などが使用されています。アラミド繊維の融点は、400~500℃で、高い耐熱性があり、燃えにくい素材です。

キャンプ用品

最近流行りのキャンプ用品も、火を使うことを想定して、難燃性素材の生地が使用されます。テントやスリーピングバッグなどのさまざまなキャンプ用品を買う際に、難燃性に関する情報が記載されているのを見かけることがあるでしょう。

カーテン・カーペット

カーテンやカーペットなどの素材にも、難燃性の生地が使用されます。防炎生地(後加工)が使われることもあり、高層マンションや百貨店やホテルなどの不特定多数の人が出入りする施設には、消防法により、防火性のあるカーテンを使用することが義務付けられています。

作業着・ユニフォーム

作業着や仕事でのユニフォームなども、労働環境の改善や見直しの観点から、火災への被害リスクを減らすために難燃性のある生地の需要が増えてきています。専門の職種や特別な人だけでなく、普段使いのものにも、取り入れていくことで、少しでも安心な生活を送ることができます。

まとめ

POINT

難燃生地

  • 燃えにくい生地
  • 燃えにくい原料を使用したり、糸の製造段階で、燃えにくくなる分子を練り込んだりなどして加工される

「難燃」・「防炎」・「不燃」の違い

  • 難燃:素材自体が燃えにくいもの
  • 防炎:後加工によって燃えにくいもの
  • 不燃:燃えないもの

難燃性を示す「LOI値」

  • 窒素と酸素の混合気体において、物質の燃焼を持続させるのに必要な最少酸素量の容積百分率で表した数値
  • 数値が大きいほど燃えにくい

難燃繊維の製造法

  • 原料自体に難燃性がある
  • ハロゲン系化合物の使用
  • リン系化合物の使用

難燃生地の使用用途

  • 消防服
  • キャンプ用品
  • カーテン・カーペット
  • 作業着・ユニフォーム

火災は気を付けていても、毎年世界各地で発生しています。乾燥が酷い時は、自然発火で大規模な山火事や町が燃えるニュースも耳にします。いつ何があるか分からないからこそ、身の回りに備えておきたいですね。

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