「タスラン加工糸」と言えば、糸加工の中でも代表的な加工法で作られる糸です。
柔らかくコットンのような風合いを持った糸で、さまざまな用途に使用されている加工糸です。今回は、「タスラン加工糸」について紹介したいと思います。
タスラン(Taslan)加工糸とは?
タスラン(Taslan)加工糸
タスラン(Taslan)加工糸とは、フィラメント繊維をふんわりとかさ高に加工した糸を指します。英語ではATY: Air Textured Yarnと表現される通り、タスランは空気を利用して加工されます。同じようにかさ高になる加工として、糸に撚りをかける撚糸加工もありますが、タスラン加工糸の場合は、撚りをかけずにかさ高性を作るため、軽い糸に仕上がります。
タスランの加工法とは?
タスラン加工糸は、2本の糸で構成され、芯糸と浮糸で構成されています。2本の糸をそれぞのスピードを変えながらタスランノズルに送り込み、ノズルを通過する際に、空気の力を使ってフィラメント同士が絡み合わせる加工法です。フィラメント糸に小さいループをつくり強く結束させることで、かさ高性のある糸に仕上がります。芯糸に浮き糸がカバーするように巻き付くので、「カバリング糸」とも呼ばれています。圧搾空気を噴射して作られるのですが、撚糸のように一定間隔でのループを絡めることは難しく、糸のループ形状は少しランダムに仕上がります。
タスラン加工糸の特徴
かさ高性がでる
タスラン加工糸は、撚りがかかっていない真っ直ぐなフィラメント糸でも、かさ高性のある糸に仕上げることができます。かさ高性があることで、空気を膨らんだようなふっくらした生地に仕上がります。
スパン糸のようなナチュラルな風合い
タスラン加工糸は、よく「スパンタッチ」や「コットンタッチ」とも表現されます。無加工のフィラメント糸の場合、滑らかでフラットに仕上がるため、コットンなどのスパン繊維特有の表面感のある手触りにはなりません。タスラン加工糸は、繊維長が均等で長い糸でありながらも、スパン糸が持つコットンのような風合いに近づけることができます。
化学繊維は比較的に安価で安定して生産ができることや、高い耐久性があることから、使いやすい糸ではありますが、生糸(無加工糸)の場合は化学繊維らしいツルっとした表面感が苦手な方もいるでしょう。化学繊維をナチュラルでやさしい手触りに仕上げてくれるので、コットンのような風合いが好みの方には適した糸加工です。生地の加工段階で、シワ加工の工程を加えることで、よりナチュラルな仕上がりになります。
光沢感が抑えられる
タスラン加工を施すと、ギラギラした光沢感は抑えられ、柔らかい印象に仕上がります。長繊維の無加工糸の場合は、表面がフラットになり、反射率が上がるため、光沢感が強くなります。それに比べてタスラン加工糸は、細かいループがあるので、光が屈折して反射するため、テカリ感や光沢感を抑えたマットでナチュラルな見た目になります。
強度が高い
タスラン加工糸は、スパン糸と比較すると強度が高い糸です。スパン糸は短い繊維を撚りで紡ぐため、ほどけやすく長繊維ほどの強度はありません。タスラン加工糸のほとんどは、強度の高いポリエステルやナイロンなどの合成繊維のフィラメント糸で作られているので、糸が途中で解けることはありません。
化学繊維の耐久性を持っていて、スパン糸のような風合いをも併せ持つので、ファッション系から強度が必要とされるアウターやスポーツウェアなどにも幅広く使用されています。
見た目以上に軽い
タスラン加工糸で作られた生地は、同じ厚みの生地と比較しても軽い生地に仕上がります。かさ高性がありながらも、空気を含む量の多いので、見た目の厚みよりも軽い印象を受けるでしょう。
上品で高級感のある見た目
ほどよい光沢感と手触りのよさがあるので、タスラン加工糸で作られた生地はチープな印象にはなりません。生糸で作られたポリエステルなどの生地の場合、ペラペラした生地に仕上がり、安っぽく見えてしまう可能性があります。タスランはふくらみのある糸のため、軽やかながらも生地に程よい厚みとハリが出るので、高級ゾーンにも使用される加工糸です。
毛玉になりにくい
アルパカ繊維は、ウールなどと比較してもキューティクルがきめ細かいので、滑らかな表面をしています。そのため、繊維同士が絡みにくいので、毛玉ができにくい素材です。ウールなどの繊維は、ふんわりとした風合いが魅力ですが、毛玉ができやすい点が難点です。ニットなどの毛玉ができやすい組織でも、アルパカ繊維は、毛玉ができにくいので、取り扱いがしやすい繊維でしょう。
シワになりにくい
かさ高性のある糸のため、生地が折れても跳ね変える反発力があり、シワが付きにくくなります。アイロンの手間を減らすことができるので、家事の時間短縮に大いに役立つでしょう。
シワになりにくいので、折りたたんで持ち運ぶようなパッカブルジャケットなどにも使用されます。
ドライタッチな風合い
タスラン加工糸で作られた生地は、ドライタッチに仕上がります。無加工糸で作られた生地の中には、生地が肌に張り付くようなベッタリした生地もあるので、着心地が悪いと感じる方もいるかもしれません。ドライタッチな手触りが好みの方に、タスラン加工糸はおすすめです。
タスラン加工糸の注意点
タスラン加工糸のデメリットは少ないですが、いくつか注意点もシェアしたいと思います。
ほこりが付きやすい
細かいループが芯糸に巻き付いてあるので、ほこりや汚れが絡まりやすくなります。糸くずなどがついてしまうと、なかなか自然には脱落してくれないこともあるので、生地にダメージのつかない程度にブラシなどで表面を清潔に保つといいでしょう。
ビビッドな色は不得意
ふんわりとしたエアリーな糸が特徴のタスラン糸は、蛍光色やビビッドな原色には染まりにくくなります。彩度が高い染料を入れても、ふわふわした糸が色の印象をぼかしてしまいます。この点は逆にやわらかな色の印象を与えるので、メリットにもなりえます。
細デニールはナチュラルタッチな風合いがあまり感じられない
デニールは、糸の重さだけではなく太さも表します。そのため、デニール数の少ないタスラン糸はその分糸のふくらみ感も小さいため、天然繊維のようなナチュラルな風合いを感じにくいこともあります。
まとめ
タスラン(Taslan)加工糸
- フィラメント繊維をふんわりとかさ高に加工した糸
- 英名: ATY(Air Textured Yarn)
タスラン加工糸の特徴
- かさ高性がでる
- スパン糸のようなナチュラルな風合い
- 光沢感が抑えられる
- 強度が高い
- 見た目以上に軽い
- 上品で高級感のある見た目
- ドライタッチな風合い
タスラン加工糸の注意点
- ほこりが付きやすい
- ビビッドな色は不得意
- 細デニールはナチュラルタッチな風合いがあまり感じられない
タスラン加工糸を使って作られる生地は、天然繊維のようなやさしい手触りながら、化学繊維の持つ耐久性を持ち合わせている魅力ある生地に仕上がるでしょう。見た目もザ・化学繊維というよりも、ナチュラルでやわらかい印象を与えるので、タスラン糸で作られた製品を好む方も多いでしょう。