起毛加工とは?種類や起毛加工の効果とは?

「起毛加工」といえば、柔らかな風合いと手触りを出してくれる加工法です。

起毛加工と言っても、使用する素材や繊維長の長さ、機械や起毛の方法を調整することで、仕上がりは大きく変わります。奥深く、知識や経験知を求められる加工法です。

今回はそんな「起毛加工」について紹介したいと思います。

目次

起毛加工とは?

起毛加工

起毛加工とは、文字通り“毛を起こす”ことを目的とした加工法で、生地の表面の繊維を引っ掻くことで、毛羽を立たせる加工を指します。片側にのみ加工する片面起毛と表地・裏地の両面に起毛をかける両面起毛があります。フランネルやスエード生地などは、起毛加工の代表的な例です。

起毛加工の種類

起毛加工には、大きく2種類の「針布起毛(しんぷきもう)」と「サンディング起毛」に分けることができます。

針布起毛

針布起毛とは、針がついたローラーの針布起毛機を使って、針が生地のループをひっかけることで、繊維を表面に引き出します。起毛機の針の強度や弾力性、角度や生地に押し当てる圧力などが、起毛の仕上がりに影響を与えます。微妙な調整がうまくいかないと、生地が破けてしまったり、過剰にダメージを与えてしまう可能性があります。ダメージ以外にも、平等に圧力がかからないと、起毛ムラや起毛段、シワなどの欠点が発生しやすくなります。機械を取り扱う長年の経験が左右する、センシティブな加工方法です。

サンディング起毛

サンディングとは、やすりをかけて滑らかにする作業を指します。サンディング起毛は、サンドペーパー(やすり)を使って、繊維を毛羽立たせる加工法です。スエードなどの皮革生地は、表面にやすり加工が施されるサンディング起毛法で仕上げられます。滑らかでシルキーな表面タッチになることが特徴です。

圧力などの調整や生地との相性が悪いと起毛ムラや、起毛ヨレなどの欠点が起きやすくなります。この起毛法も、職人の経験値や知識が左右するテクニカルな加工法です。

起毛加工処理後は、必要に応じて、毛並みを整えるブラッシングや、毛足の長さを調整するシャーリングと呼ばれる工程をすることもあります。風合い向上にもなり、仕上がりに影響を与える重要な工程です。

起毛の歴史

起毛の明確な起源は定かではありませんが、2,000年近く前から起毛はされていたと考えられています。イタリアのナポリ近郊に位置していたポンペイと呼ばれる古代都市の遺跡から、織物を引っ掻くような壁画が残っていたことからこの頃には、起毛が行われていたと考えられています。

起毛機が誕生するまでは、「あざみ」などの植物を使用していました。あざみは、葉や総苞(つぼみを基部で包む小さいうろこ状の包の集まり)に鋭いトゲがあり、そのトゲを利用して、繊維を引っ掻くことで、起毛を行っていました。

1684年にはあざみを利用した起毛機が誕生し、1800年代後半になると現在使われているような針布起毛機も誕生しました。

起毛加工の効果とは?

表面が毛羽立つ

起毛することで、生地の表面がふわふわと毛羽立ちます。ほとんどの糸は、細かい繊維を撚り合わせたり、束ねたりすることで、まとまった1本の糸になります。起毛加工を施すことで、このまとまった糸の繊維をほぐして、繊維1本1本を起毛することで、繊維レベルの細くて柔らかい繊維が表面に出てきます。

ボリュームが増す

起毛することで、寝ていた繊維が立つことで、生地に厚みがでて、ボリュームのある生地に仕上がります。特に毛足の長い繊維を使用したり、ループの大きいニットを使用することで、厚みとボリューム感は増します。見た目のインパクトはもちろん、ボリュームがあると弾力のあるようなふんわりとした手触りになるでしょう。

ふんわりと柔らかい風合い

起毛することで、生地が柔らかくふんわりとした風合いになります。起毛なしと、起毛後の風合いの違いは明らかで、起毛をした方が柔らかな生地に仕上がります。硬い生地は、着心地が悪いですが、起毛することで、着心地の良さは格段に上がるでしょう。

外観がぼんやりする

起毛加工を施すことで、生地の織り目や編み目をぼやかし、やわらかな印象の見た目に仕上がります。特に毛足の長い生地に起毛をすると、生地の目が見えなくなるほど外観がぼやけます。

複数色で作られる生地は、隣同士の色がくっきり分かれるのではなく、境界線ぼかしてくれることで、馴染みのいいやわらかな印象に仕上がります。別々に染色された繊維同士が起毛によって、混ざりあうことで、色目に奥行きを感じられます。

保温性が高まる

起毛加工をすると、繊維と繊維の間に空気がたまる層ができることで、保温性が高まります。冬の定番商品でもあるフリース生地も、ほとんどが起毛加工を施しています。毛足が長くなればなるほど、空気をためる量が増えるので、より保温性の高い仕上がりになります。

肌側の生地に起毛する裏起毛により、肌触りをよくしながら保温性を高めます。冬には裏起毛インナーや裏起毛ジャケット・デニムなどを店頭でよく見かけますよね。さらなる保温性を高めるためには、両面起毛によって空気を取り込む量を増やすこともできるので、好みに合わせて加工指示をします。

立体感のある生地になる

起毛により表面の毛が立っていることから、平面的でぺらっとした生地よりも立体感のある仕上がりになります。角度を変えたり、動かしたりすることで、少し見え方が変わるような立体的な印象を与えます。

仕上がりを調整できる

より空気を取り込みやすいクリンプ(縮れ)を持ったウールなどの繊維を選んだり、毛足の長さを調整すれば、とことん保温性を突き詰めた生地にもなりますが、冬にだけ活躍する加工法というわけではありません。毛羽の長さを短くしたり、素材を正しく選定することで、保温性を抑えた風合い重視の仕上げにもできます。

桃の毛のような産毛のような「ピーチタッチ仕上げ」や「スエード仕上げ」、毛足の長く見た目や手触りにインパクトのある「シャギー仕上げ」や「ファー仕上げ」など、多種多様な仕上がりを叶えてくれます。

まとめ

POINT

起毛加工

  • 生地の表面の繊維を引っ掻くことで、毛羽を立たせる加工

起毛加工の種類

  • 針布起毛(しんぷきもう)
  • サンディング起毛

起毛加工の効果

  • 表面が毛羽立つ
  • ボリュームが増す
  • ふんわりと柔らかい風合い
  • 保温性が高まる
  • 立体感のある生地になる
  • 仕上がりを調整できる

起毛は遥か昔から私たちの衣料品の着心地を改善してくれるとして、行われてきた加工法です。昔は植物を使って起毛加工されてきましたが、今では機械も誕生して気軽に加工ができるようになりました。衣料品の快適さや機能面の向上には欠かせない加工法の一つです。ぜひ起毛加工品を手に取って、肌触りや温かさを体感してみてはいかがでしょうか?

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