生地の密度の表し方や測定法、物性面への影響とは?

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物性面が非常に大事なアウトドアスポーツなどを除くと、細かく密度を注視することは少ないかもしれません。しかし、実は密度は生地の仕上がり、コストや生地の安定性などに関わる重要な要素の一つです。今回は「生地の密度」にフォーカスを当てたいと思います。

目次

生地の密度

生地の密度の表し方

生地の密度は、見た目だけに関わらず、物性面にも影響する生地にとって重要な要素の一つです。

織物・編物ともに、一般的には1インチ間(2.54cm)に何本の糸が入っているかで密度を表します。密度が高いく、糸がたくさん詰まった高密度な生地となり、密度が低ければ糸は少ないことを意味します。

 織物の密度

密度が”100 x 80/inch”の織物の場合、経糸が1インチ間に100本と、緯糸が1インチ間に80本の生地となります。この場合、経糸の方が、緯糸より密度が混んでいるので、「経勝ち」などと表現されたりします。緯勝ちになることももちろんありますが、織物の場合は、多くの場合経糸勝ちになることが多いようです。織物は、経糸整経は一気に作られビームが作られますが、緯糸は経糸整経後に1本ずつ打ち込まれます。緯糸の密度を上げるには、緯糸の打ち込み本数を増やす必要がありますが、打ち込み本数を増やすと織り上げに時間がかかるので、コストが上がってしまいます。

例えば、1cm間に対する打ち込み本数が80本だった生地を、1cmに100本打ち込むとなると、同じ1cmを織るために20本多くの糸を打ち込む必要があるため、生産効率が下がってしまうのです。最終的な生地の密度は、この打ち込み本数に比例するため、緯糸の密度が高い生地は、一般的に値段が高くなってしまいます。

経糸も多い方が、もちろん使用する糸量が増えるので、値段は上がりますが、生産効率に関してはあまり大きく違いはでません。

 ニットの密度

ニットも織物と同じで、1インチ間に、何本の糸が入っているかで表します。織物と違う点は、呼び方が少し変わり、コース(course)と、ウェール(wale)と表現します。

編み物は網目であるループが並んでいて、ループのヨコ方向に並んだ列をコース、タテ方向に並んだ列をウェールと呼びます。

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ニットの密度に関わるものが、「ゲージ(Gauge)」です。ハイゲージニットや、ローゲージニットなどは聞いたことがあるのではないでしょうか?上記写真の下のようなハイゲージニットは、目の詰まったニットで、落ち着いた印象で、高見えしますよね。ローゲージニットは、カジュアルな印象や若く見える印象を与えます。ゲージ=密度ではありませんが、ニットの密度を左右する重要な要素です。

ゲージとは、編機の針の密度を表す単位になります。1インチ間に、編機の針が何本入っているかがゲージの数値となります。1インチ間に、編機の針が15本あれば、15ゲージや15GGなどと表します。

一般的に、5ゲージ以下をローゲージ、12ゲージ以上となるとハイゲージ、その中間のゲージをミドルゲージと分けられます。編機の針が詰まっている方が、比例して密度も高くなります。

密度の測り方

密度を測る方法は、いくつかあります。

 1本ずつ分解して数える

1インチ角を測定して、ハサミでカットして、1本ずつ糸を分解しながら数える方法があります。時間がかかり、地道ですが、確実に測定することができます。

 目視で数える

インチルーペなどを使用して、組織を拡大して目視で数える方法もあります。ハサミで生地を切る必要がないのと、糸の分解も不要なため、上記の方法より手軽にできるかと思います。インチルーペなどの拡大鏡がないと、繊維が細い生地は数えにくいので、購入する必要があることがデメリットになります。

 デンシメーター

デンシメーターと呼ばれる密度計を使用して、測定します。デンシメーターと聞くと、ハイテクな機械を想像するかもしれませんが、残念ながらアナログな測定器です。透明なものさしのような板に、数字が記載されています。生地の上にデンシメーターを載せて、そこに表された数値で密度を測ります。アナログですが、大変便利な測定器です。

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写真のように、デンシメーター上にモアレが出てきます。そのモアレの山のてっぺんを指す数字が密度となります。写真のケースの場合は、この生地の密度は152本/inchとなります。経密度と緯密度を同時に測ることはできないため、別々に測定が必要です。

注意としては、モアレが倍数で反応して発生します。そのため、写真のケースは152本を指していますが、倍数である76本などにもモアレが現れ、どちらが正しい密度が判断しづらいことがあります。事前に密度をサプライヤーから確認しておくと、その近似値が正しい密度数値となるので、判断に迷った際は、生地の提案元に確認するのがいいでしょう。

また、写真のデンシメーターは100-240本までを測定できるデンシメーターですが、100本以下の場合は、100本以下も測定できるデンシメーターを使用しないといけません。密度の幅によって、いくつかのデンシメーターを準備する必要があります。

密度による物性への影響

密度は物性面を左右する一つの要素です。糸や加工によっても変わりますが、密度の違いがどのように影響するのでしょうか?

高密度

高密度な生地は、耐摩擦や耐ピリングに強くなります。目が詰まっている分、引っかかりや糸抜けが起きにくくなります。また、高密度生地は、ダウンプルーフ生地やウィンドプルーフ生地に向いています。目が甘いと目の隙間からダウンや中綿が抜ける可能性があるので、高密度生地が使用されます。

また、高密度生地は滑脱と呼ばれる生地のスリップ(織目・編目が動くこと)も安定します。滑脱が悪いと、生地が伸び縮みしたり、型崩れなどに繋がります。

デメリットとして挙げられることは、生地の目が詰まることで、生地の風合いが固くなりやすいです。

また、密度が高い分、糸の使用量も多くなるため、コストは上がります。

低密度

低密度生地の場合は、生地の目が動く分、通気性が高くなることや、風合いが柔らかくなる傾向があります。また引裂と呼ばれる、生地の破れやすさは柔らかい生地の方が強くなり、高密度生地に比べて引裂強度は高くなる傾向です。糸の使用量も少なくなるため、生産効率も上がり、コスト面でメリットがあります。

デメリットとして挙げられるのは、密度が詰まってない分、織目・編目が動きやすく、滑脱が悪くなります。また、密度が甘すぎると、コーティング加工などの樹脂漏れが起きやすく、後加工の制限がかかる場合があります。

まとめ

POINT

生地の密度:一般的には1インチ間(2.54cm)の糸の本数

密度の測り方

  • 1本ずつ分解して数える
  • 目視で数える
  • デンシメーター

密度による物性への影響

  • 高密度(メリット):耐摩擦・耐ピリング、滑脱の安定、ダウンプルーフ生地
  • 高密度(デメリット):風合いの固さ、コストアップ
  • 低密度(メリット):ソフトな風合い、通気性がある、引裂強化、低コスト
  • 低密度(デメリット):低滑脱、樹脂漏れなどの懸念

密度は生地の品質・風合いやコスト面の全てに関わる要素なんです。生地の選定の際は、密度も考慮しながら選定すると、トラブルの少ないモノつくりに繋がるでしょう。

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