ファッション業界にとどまらず、さまざまな産業でも最近注目を浴びている「モノマテリアル」をご存じでしょうか?
モノマテリアルはサステイナブルに繋がるとして、期待が持たれています。リサイクルへの取り組みが進む中で、「モノマテリアル」の重要性も高まっています。
今回は、そんな「モノマテリアル」が「サステイナブル」と言われる理由について、解説したいと思います。
「モノマテリアル(Mono-Material)」とは?
「モノマテリアル(Mono-Material)」
「モノマテリアル(Mono-Material)」とは、日本語に訳すと“単一素材”になります。「モノ(mono)」は、英語で“ひとつの、唯一の”といった意味が込められていて、「マテリアル(material)」は“原料、材料、素材”などの意味があります。つまり「モノマテリアル」とは、製品が一つの原料や素材でできているものを指します。”100% コットン”や”100% ポリエステル”などでできている製品です。
「モノマテリアル」がサステイナブルに繋がる理由とは?
では、なぜ単一素材の「モノマテリアル」がサステイナブルに繋がるのでしょうか?モノマテリアルは、衣料品リサイクルに関連が大きくあります。
合成繊維のリサイクル
安価で耐久性もあり、取り扱いやすいポリエステルやナイロンなどの石油由来の合成繊維は、開発以降欠かせない素材として普及しています。実際に、ファッション業界においても、ポリエステルの使用率が大部分を占めていて、生活の一部になっています。しかし、それに反して、石油由来の合成繊維は環境負荷が大きく、地球温暖化や環境破壊などのさまざまな問題に関わってきます。 ポリエステルなどの合成繊維は、通常は生分解性(土の中で微生物の働きによって分解され自然に還る)がありません。そのため、廃棄された合成繊維は焼却処理をしない限り、地球上に蓄積され続けてしまいます。さらには、石油から生成して、原糸にするまでにかなりのCO2やエネルギー消費が発生します。そこで、ポリエステル製品の蓄積による飽和状態と、新たに生産するCO2やエネルギーの消費を抑えるために、リサイクル化が促進されています。
衣料品のリサイクル化が進まない理由とは?
合成繊維のリサイクルは、環境負荷を軽減することは、明らかです。しかし、残念ながら衣料品のリサイクル率は高くないことが現状です。日本の場合、衣料品の廃棄物は年間100万トン排出されていると言われていて、そのうちリサイクル化できているのは、実に10%程度とも言われています。残りの90%は焼却処理で廃棄されるのが現状です。
衣料品のリサイクル化が難しいと言われる理由はどのようなものがあげられるのでしょうか?
素材の複雑さ
衣料品は、ご存じの通り、さまざまな素材を組み合わせて作られます。タグを見てもわかるように、特にコートなどの上着やズボンなどは複数の素材を掛け合わせて作られています。
例えば、上記写真の左は、フード付きの中綿ジャケットのタグです。一つのジャケットに、「ポリエステル」「ダウン」「フェザー」「レーヨン」の4つの素材が含まれています。
製品をリサイクルは、原料にまで戻して再利用します。そのため、リサイクル化して再利用するには、素材別に製品を分解しなくてはなりません。複雑すぎる製品は、素材別に仕分けることが難しく、リサイクルまで持っていくのは容易ではありません。上記の例であげた中綿ジャケットを、4つの素材にきれいに分けることは、手間と時間を要します。
コストが高くなる
リサイクルした商品は、「回収→分別→不純物を除去しながら原料までケミカル処理などで戻して、再度生成する」といった通常の生産以上に複雑な工程が加わります。ファストファッションの流行により、大量生産で安価に流行りの商品を買い替えられるサイクルが一般的になりました。そんな中で、どうしても値段が高くなるリサイクル商品は、環境に関心のある消費者意外にとっては、魅力的には映らないこともあります。全ての素材が、リサイクル化できるわけでもなく、流通量の少ない商品は特に、ヴァージン(新しく作られる素材)商品に比べてかなりのコストアップをする可能性があります。
品質が落ちる
原料をリサイクル化する際に、不純物が混じることで、ヴァージンの繊維に比べて、強度などの品質が落ちる場合があります。特に繊維の糸が細くなるほど、品質が保てない場合があり、リサイクル化の難易度が上がります。
「モノマテリアル」と「サステイナブル」の関連
「モノマテリアル」にすることで、どのような効果があるのでしょうか?それは「リサイクル」に適しているという点で、大きなメリットがあります。
リサイクル化しやすい
原料が単一のモノマテリアルは、分別の必要がなくなるため、リサイクルしやすくなります。例えば、100%ポリエステルのみで表地や裏地を使うことで、リサイクル化の大きなネックとなる、素材の仕分けをしやすくなります。Tシャツなどの一枚ものの生地は比較的にモノマテリアル化しやすいですが、最近では、複雑に組み合わさった製品のモノマテリアル化も進んでいます。
例えば、防水ジャケットなどの防水膜もポリエステル製に統一して貼り合わせた2層構造の生地や、ダウンフェザーの代わりに、ポリエステル製の中綿を使用するなどで、ホールモノマテリアルのインサレーションジャケットを作るなどの工夫もされています。
強度が高いリサイクル製品をつくれる
単一の素材にすることで、他の素材や不純物が混ざらないので、純度の高いリサイクル製品を作ることができます。それにより、ヴァージンと大差のない強度を保てる期待ができます。
リサイクル回収時の仕分けも不要で、さらに高い品質を保てるモノマテリアルは、ファッション業界のリサイクル化の救世主となれるのではないでしょうか?
まとめ
モノマテリアル(Mono-Material)
- 製品が一つの原料や素材でできているもの
衣料品のリサイクル化が進まない理由とは?
- 素材の複雑さ
- コストが高くなる
- 品質が落ちる
「モノマテリアル」がサステイナブルに繋がる理由とは?
- リサイクル化しやすい
- 強度が高いリサイクル製品をつくれる
リサイクル化が進まないファッション業界において、「モノマテリアル」は、高い注目が寄せられています。
環境を大切にしながらも、トレンドやファッションに興味のある方は多いかと思います。毎年変わるトレンドの中に、モノマテリアル製品の割合が増えることで、循環型のモノつくりに繋がっていくことを期待したいですね。そして、商品を購入する際は、ぜひタグの素材表記も意識しながら見てみてはいかがでしょうか?