
「PBT(ポリブチレンテレフタレート)」ってご存じでしょうか?高い伸縮性の加工のしやすさから、多くの衣料品に使用されている繊維の一つです。
今回は、「PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維」について、ご紹介したいと思います。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)とは?
PBT(ポリブチレンテレフタレート)
PBTは、Poly butylene terephthalateの頭文字を取った繊維で、正式には「ポリブチレンテレフタレート」と呼ばれる繊維です。PBTはポリエステル繊維の一種で、捲縮性のある糸形状で、ストレッチ性の優れた繊維です。
そもそもポリエステルとは、「エステル基」をもつものに対する名称です。エステル基の種類によって分類分けがされており、「PBT(ポリブチレンテレフタレート)」以外にも、「PET(ポリエチレンテレフタレート)」、「PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)」、「PEN(ポリエチレンナフタレート)」、「PBN(ポリブチレンナフタレート)」といった種類がポリエステルにはあります。名前が似ていて混同しやすいですが、それぞれ異なる特徴を持つポリエステルです。
PBTは、PETと同様に、1940年頃から認知され始めた素材で、以降アパレル業界でも高い需要のある繊維とまで発展しました。1970年に、アメリカのCelanese社がPBTの工業販売を開始しました。
PBTの化学式は、下記の通りに表されます。
<PBT(ポリブチレンテレフタレート)化学式>

一般的に多くの衣料品で使用されている「PET(ポリエチレンテレフタレート)」の化学式は下記の通りです。
<PET(ポリエチレンテレフタレート)化学式>

PBTは、PETの化学式の「エチレン= (CH2)2」が「ブテン=(CH2)4」に代わった化学式です。ポリエステル繊維の一種とあって、PETもPBTも非常によく似た構造をしています。分子の主鎖が2つのメチレン基から4つに変わることで、分子の柔軟性が高い繊維ができます。PETよりも優れた熱可塑性・安定性を持ち合わせています。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の製造法

基本的にはPET(ポリエチレンテレフタレート)と同様の処方で製造されます。PBT繊維は、「テレフタル酸ジメチル(DMT)」または「テレフタル酸(TA)」と「1.4-ブチレンテレフタレート」を原料に、重縮合することで、製造されます。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の特徴
ストレッチ性がある
PBT繊維は、伸縮性があることが特徴の繊維です。同じく伸縮性のある糸で知られている「PU(ポリウレタン)」や「PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)」に比べるとストレッチ性は劣るとも言われていますが、パンツなどのストレッチ性が必要な生地にも、多く使用されている繊維です。
非常に高いストレッチ性を持つPUですが、加水分解で劣化しやすく、長期的に同じストレッチ性・品質を維持することが難しいため、PUの代わりの素材としても使用されています。
ゆるやかなキックバック性
ストレッチ性が他の伸縮糸と比べて劣る点もありますが、逆に締め付けが強すぎない点ではアドバンテージとも言えます。ストレッチ性の高いパンツや靴下などの製品を使用する際に、お腹や足に締め付け跡が残った経験はないでしょうか?あまりに締め付けが強すぎると、着心地が悪く、お腹などを押さえつけられている場合は、食欲不振や気分が悪くなる可能性もあります。その点、PBTの伸縮やキックバック力はゆるやかなため、ストレスフリーな製品に仕上がるでしょう。体のむくみによってサイズが変わったり、長時間着ていても快適なストレッチ感だと言われています。
捲縮性が高い

繊維がバネのような形をしていることから、捲縮性(クリンプ)が高く、クッションのような反発性のある生地に仕上がります。
ハリがある
捲縮性が高く、ストレッチ性があることで、ふっくらと厚みのある生地に仕上がり、ハリ感が出ます。ハリとコシがあるので、高見えすることから、高級感のある見た目に仕上がります。ハリと身体にフィットするストレッチ性があることで、美しいシルエットの製品を作ることができるでしょう。
染色性がある
ポリエステルの仲間とあって、染色性があります。ポリウレタンも染色は可能ですが、100%ポリウレタン繊維の生地はなく、他の素材と混ぜ合わせて使用されることが多いです。他の素材を掛け合わせた時の染色の条件が異なることで、染料の色移りや、色の抜けやすさなどの問題が出てきます。その点、PBTはポリエステルとほぼ同等の条件で染色することができます。
さらに、他の繊維を混ぜて使用しないため、「モノマテリアル(一つの素材で製品作りをすること)」製品を作ることができるので、リサイクル化しやすい循環型のものつくりができます。
見た目以上に軽い

ハリと厚みのある生地の見た目に反して、持ってみるとそこまで重さは感じません。捲縮性のある糸なので、厚みやボリューム感が出るのですが、同じ太さの糸と比較しても、空気や隙間が多く含まれています。そのため、厚みの割に軽い製品を作ることができます。軽い製品を作る際に、細番手のデニールで作った生地を選んでしまうと、ペラペラで安っぽく見えてしまうかもしれませんが、PBTで作った製品なら、高級感と軽さの両方を満たすことができます。
PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)との違いとは?

PTTとは?
PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)とは、植物由来のポリトリメチレンテレフタレートのことで、ポリエステルの一種です。高い伸縮性が特徴で、形状安定性もあり、肌触りもいいことから、衣料品で活躍しています。主成分はTPAテレフタル酸とPOD1.3プロパンジオールで構成されているポリエステルの仲間です。
PTTとの違いとは?
原料の違い
PBTは石油由来の繊維でできていますが、PTTはPOD1.3プロパンジオールが含まれています。このPOD1.3プロパンジオールとは、バイオ由来(トウモロコシ由来)のため、サステイナブルな合成繊維とも認識されています。ただし100%バイオ由来で出来ているわけではないので、ブランドによってこのバイオ含有の評価は異なります。
ストレッチ性
PBTと比較して、PTTの方がストレッチ性は高いと言われています。
プライス
石油由来のPBTの方が、バイオ由来のPTTよりもコストでは安くなる傾向があります。
まとめ
PBT(ポリブチレンテレフタレート)
- ポリエステルの一種
- 捲縮性のある糸形状で、ストレッチ性の優れた繊維
PBT(ポリブチレンテレフタレート)の特徴
- ストレッチ性がある
- ゆるやかなキックバック性
- ハリがある
- 染色性がある
- 捲縮性が高い
- 見た目以上に軽い
PTT(ポリトリブチレンテレフタレート)との違いとは?
- 原料の違い: PBT=石油由来、PTT:バイオ由来
- ストレッチ性:PTTの方が高いストレッチ性がある
- プライス:PBTの方がコストを抑えられる
ポリエステルにもたくさんの種類があったのはご存知でしたでしょうか?ポリエステルの仲間同士、似たような特徴もありますが、それぞれ個々の特徴や性質もあります。それぞれの繊維の違いを把握することで、より理想の製品を作る繊維選定をすることができるでしょう。
