「ハイマルチフィラメント」や「ハイマルチ」、「ハイフィラ」という言葉に聞き馴染はありますか?これらの生地は、全て同様の生地を指しています。
今回は、「ハイマルチフィラメント生地」について紹介したいと思います。
マルチフィラメント(Multi-filament)とは?
マルチフィラメント(Multi-filament)
マルチフィラメント(Multi-filament)とは、複数の長繊維から成り立っている糸を指します。フィラメント=長繊維のため、マルチフィラメントは短繊維ではなく長繊維に該当します。反対に1本で構成された長繊維の場合は、モノフィラメントと表現します。衣料関係やインテリアなどで使用される長繊維のほとんどは、モノフィラメントよりもマルチフィラメント糸が使用されています。
ハイマルチフィラメント
ハイマルチフィラメントとは、マルチフィラメントの中でも特にフィラメントの数が多い糸を指します。具体的な本数の基準は設けられてないですが、一般的にデニールに対して、フィラメントの数字の方が大きいとハイマルチの生地として扱われることが多いようです。例えば、50d/144fは50dの糸が144本のフィラメントでできていることになります。このようにデニールの数字よりも大きな数字で構成されているフィラメントの場合は、ハイフィラメントに位置付けします。
ハイマルチフィラメントとマイクロファイバーの違いとは?
マイクロファイバーと混同されやすいのですが、マイクロファイバーの場合は、8マイクロメートル以下の太さの超極細繊維を指します。この太さは人の髪の毛の100分の1程度の太さで、非常に細いことが想像できるかと思います。
マルチフィラメント糸が、マイクロファイバーに該当することもありますが、マルチフィラメントは複数の長繊維の成り立ちが定義のため、必ずしもマイクロファイバー繊維に該当するとは限りません。
紡糸の際に、繊維の太さを変えられる化学繊維が、ハイマルチフィラメント糸やマイクロファイバー糸を作ることができます。天然繊維は糸の太さを自在に調整することができないので、超極細繊維を作ることは難しいでしょう。
ハイマルチフィラメント生地のメリット
風合いがやわらかい
繊維1本1本が細いハイマルチフィラメント生地は、しなやかでやわらかい風合いの生地ができます。肌触りがよくなるので、着心地のいい生地に仕上がります。糸を構成するフィラメントの数が多ければ多いほど、生地はやわらかく仕上がります。
チクチクしない
1本1本の繊維が細いので、肌にあたってもチクチクしないメリットがあります。
シワになりにくい
マルチフィラメントの生地は、フィラメントがハイカウントになる分、1本1本の繊維は細くなります。太い糸より、細い糸の方が、柔らかくてしなやかな繊維となります。太く固めの繊維が集まるローフィラメントよりも、細い繊維の集まりの方が、柔らかい生地になり、シワが入りにくい生地に繋がります。
透けにくい
フィラメントの数が多いほど繊維同士の隙間が埋まり、生地の透け感はなくなります。パンツなどは透け防止が重要な要素となりますので、透けにくいことはメリットになります。ホワイトや淡色でも、フィラメントの少ない生地に比べると透けにくい仕上がりになります。
紫外線カット率が高い
透けにくい生地=紫外線を通しにくい生地となります。光の屈折が多いマルチフィラメント生地は、紫外線カットにも有効です。紫外線カット率は、色にも左右され、白や淡色よりも黒や濃色の方が紫外線カット率は上がります。生地の薄さや密度にも左右されますが、マルチフィラメント生地は、白や淡色でも紫外線カット率が高くなるので、淡色でも展開でも紫外線カットを謳える生地として使える可能性があります。
透明な糸にならない
マルチフィラメントの場合は、複数の細い糸を束ねて糸にしています。繊維1本1本は透明な糸であっても、複雑に絡み合う繊維間で光が真っ直ぐに通らず屈折することで、透明ではなく白っぽい糸に仕上がります。これによって、透けにくい生地に繋がります。
防風効果がある
繊維の間の隙間はフィラメントが多いほど埋まるため、防風効果が高まります。防風ジャケットや防寒素材としても使用できます。また、ダウンプルーフや中綿に使用するフェザーや綿がローフィラメント素材よりも漏れにくい利点もあります。糸使いによっては、コーティングやフィルムを貼り合わせなくても、防風ジャケットとして使用できたりもします。
ふくらみ感が出る
フィラメントが少ない生地に比べて、ハイマルチフィラメント生地の方がふくらみ感のある生地に仕上がります。糸自体が広がりのあるふわっとした糸をしているので、無撚糸であってもかさ高性のある風合いの良さ生地を作ることができます。
ドレープ性がある
やわらかくしなやかなハイマルチフィラメント生地は、生地を垂らすとゆったりと自然にひだが入るような落ち感とドレープ性があります。ほどよく体にフィットするので、美しいシルエットをキープできるとして、人気があります。
マルチフィラメント生地のデメリット
強度が落ちる
モノフィラメントに比べて、繊維1本1本が細くなるので、糸自体の強度は下がる傾向にあります。強度が必要とされる激しいスポーツや野外で使用するアウトドア向けの製品の場合は、ある程度の強度が要求されますが、一般的なファッション用途では問題ないでしょう。
ほこりがつきやすい
細かいフィラメントで構成されるハイマルチフィラメント生地は、表面にほこりが吸着しやすくなります。逆にこれを利用して、極細繊維であるマイクロファイバーは、メガネ拭きやパソコンなどの画面を拭く素材として活用されています。
まとめ
マルチフィラメント(Multi-filament)
- 複数の長繊維から成り立っている糸
ハイマルチフィラメント
- マルチフィラメントの中でも特にフィラメントの数が多い糸
ハイマルチフィラメントとマイクロファイバーの違いとは?
- マイクロファイバー: 1ミリの1000分の1以下の太さの超極細繊維
- ハイマルチフィラメント: 複数の長繊維から成り立っている糸でマイクロファイバーに該当するとは限らない
ハイマルチフィラメント生地のメリット
- 風合いがやわらかい
- チクチクしない
- シワになりにくい
- 透けにくい
- 紫外線カット率が高い
- 透明な糸にならない
- 防風効果がある
- ふくらみ感が出る
- ドレープ性がある
マルチフィラメント生地のデメリット
- 強度が落ちる
- ほこりがつきやすい
同じデニールの糸でも、構成されるフィラメント数によって、生地の特徴や風合いは大きく変わります。機能面にも影響するので、フィラメントの数は生地作りをするうえで、重要な要素の一つです。
ハイマルチフィラメント生地の肌触りの良さは心地よく、ローフィラメント生地と比較すると明らかです。ぜひ手に取って違いを確認してみてはいかがでしょうか?