
メランジって聞いたことはないでしょうか?
買い物や通販サイトなどで服や小物を買う際に、商品名に「メランジ」と記載されているのを見たことがあるかもしれません。
今回は、「メランジ生地」に焦点を当ててみました。
メランジとはどんな生地?
メランジとは?
アパレル業界でメランジとは、2色以上の色が混ざった生地を指します。語源は、フランス語の「mélange(メランジェ)」から来ていて、「混合する」という意味があります。本来は2色以上の霜降り糸のことを意味しますが、現在では色が混じりあった霜降り調の生地全般を指すようになりました。複数色混じりあった生地を、メランジ調と表現したり、霜降り調、杢調などとも表現します。
メランジ生地は、本来のフランス語の「メランジェ」や「メランジュ」とも発音されることがあります。全て同じメランジ生地を指し、特に意味的な使い分けはされていません。
2色以上混ざっていることで、シンプルな単色とは違う色の深みが出たり、こなれ感やおしゃれな印象を与えます。服やスーツ、靴下やマフラー・バッグなどの小物や家具にまで、幅広い素材に使用されます。モノトーンファッションでも、白黒のメランジ柄を取り入れることで、立体感のあるコーデに仕上がります。ファッションのメインから、ワンポイントアクセントまで様々な用途で取り入れることができます。
メランジの見え方や使い分け方
2色以上の色を混ぜ合わせたメランジ生地ですが、使用する色目や素材でも印象は変わります。
例えば、全く異なるタイプの色を組み合わせるメランジと、同色系でまとめたメランジでは見え方は異なります。
淡色 x 濃色メランジ

ブラウンとホワイトのバランスは、ほぼ1:1くらいで、単色のブラウンよりも、明るいホワイトが入ることで、立体感のある生地になります。

先ほどの生地に比べて、濃色パートのブルーの割合が多くを占めている印象です。遠目から見ると、メランジなのか分かりにくいかもしれませんが、近くで見るとさりげないメランジ調です。ブルー単色よりも軽やかな印象も与えるので、重い印象になりません。

濃い目のレッドとホワイトのメランジは、はっきりと色目の違いが出て、インパクトのある生地です。また、シック・アンド・シン(thick and think)と言われる、糸の太さがランダムに太くなったり細くなったりする糸を使用することで、メランジ柄の複雑性が増し、オシャレな印象を与えます。
淡色と濃色のカテゴリーの一例として、3つ紹介させていただきましたが、淡色と濃色のバランスや使用する素材、組織の違いで、大きく印象は変わりませんか?
複数色(3色以上)メランジ
3色以上になると、色の深みがさらに出るメランジ生地になります。

ブラウン・オリーブの同色系統でまとめられていて、複数色が混じっても喧嘩することなく、落ち着いた印象のあるメランジ生地です。色味全体が柔らかく、淡色から中濃色、濃色のグラデーションがキレイなメランジとなります。

1つ目は同系色でまとめたメランジでしたが、今度は異なる色目を混ぜ合わせたメランジです。ブラウン・イエロー・ピンク・ブルー・ホワイトと複雑な色を混ぜ合わせています。ハッピーカラーで、キュートさと華やかさがある生地です。
起毛することで、柔らかく色が混ぜ合わせれているので、複雑な色展開ながらにキレイにまとまっています。色数が多くなるほど、合わせるのが難しいと思われるかもしれませんが、一気に華やかに主役級の生地に仕上がるので、おすすめです。

2枚目同様に、異色を組み合わせたメランジ生地ですが、全体的に濃色バランスの多い高級感のある生地に見えます。複数色が混ざっていますが、淡色・中濃色・濃色のグラデーションと細かいメランジ柄のため、まとまった印象があります。複数色でも、バランスが取れているので、挑戦しやすいメランジです。
同系色でまとめたメランジは、カジュアルからフォーマルまで、どんな場面でも使われる万能生地です。柔らかい印象を与えます。異色で合わせたメランジは、インパクトやおしゃれ感を一気にあげてくれます。
糸種や組織を調整することで、細かいメランジからラフなメランジまで、さまざまなタイプのメランジを表現することができます。
メランジの作り方

メランジ生地とはどのように作られるのでしょうか。
メランジの本来の意味は、2色以上の糸を使用した生地を指していましたが、今では染色の染め分けも含めた2色以上の色が混じりあった霜降り調の生地全般を指すようになりました。広義的に捉えられるようになったメランジの作り方は、様々な方法があります。
杢糸(もくいと)
杢糸とは、二色以上の単糸を撚り合わせた多色糸です。糸自体に複数色混ざっているので、その糸を使って織り上げたり、編み上げた生地はメランジ調に仕上がります。英語では、「Grandrelle Yarn」と呼ばれて、飾り糸であるファンシーヤーンに位置付けられる糸です。ファンシーヤーンとは、意匠糸や意匠撚糸とも呼ばれ、見た目に形状変化や外観変化のある糸を指します。
また、伸縮性のある糸を使用することも可能なため、用途の幅が広がります。
霜降り糸
霜降り糸は、二色以上の色を混ぜ合わせた糸を指します。英語では、「Mixture Yarn」と呼ばれます。
霜降り糸の多くは、白もしくは淡色と濃色を組み合わせて紡績されるため、生地にした時に白い霜が降りたような模様ができます。その様子から、「霜降り糸」と名付けられたと言われています。
霜降り糸の多くは、トップ染めで加工されています。トップ染めとは、繊維原料を糸にする前のスライバーと呼ばれる繊維の束の状態で巻き付けて染色します。このスライバーを巻き付けた形状が西洋コマ(トップ)に似ているために、トップ染めと呼ばれています。このトップ染めしたスライバーの色をミックスして紡績することで、メランジ調の糸ができます。
国内では、新内外綿株式会社のモクティという霜降り糸のブランドが有名です。生地スワッチで霜降りのグレーの色番に「GR7」という色番がつけられているのを見たことがある方も多いかと思いますが、元々は同社が霜降りグレーにつけていた品番が浸透して業界標準のようになっています。霜降り糸のメランジカラーは後染めカラーと価格が違うことが多いので、注意が必要です。加工ロットの問題で多くの場合、メランジカラーのほうが高いことが多いのですが、ある程度大きな加工ロットで紡績した場合は、生地の後染め加工賃がかからないため、安く設定されている場合もあります。
また同社が開発した自然の植物から抽出した天然染料で染色したメランジシリーズのブランド「ボタニカルダイ」もSDGsの流れもあり、人気の素材です。

メランジ調後染め
人気のメランジですが、杢糸、霜降り糸とも原料や糸段階での染色が必要となります。そのため、加工ロットや加工期間が長く、企画に取り入れにくいという側面があります。そのため、後染めでメランジ調に染める加工方法も開発されています。ウールでは、共和染工が開発した糸染め加工「メニック」が有名です。綿では、新潟産地で行われているスペック染めが有名です。
異なる素材を組み合わせる
メランジを作るには、特殊な糸だけではありません。異素材同士を掛け合わせて作る方法もあります。
例えば、イオン結合で染まるナイロンと分散染料で染まるポリエステルを組み合わせて生地を作ると、反応する染料の違いから、ムラのような染め上がりに仕上がります。他にもポリエステル同士でも、一般的な分散染料で染まるポリエステル糸と、カチオン染料で染まるカチオンポリエステルを組み合わせてメランジ調に仕上げることもできます。合成繊維とコットンなどの天然繊維を組み合わせることでも、メランジ生地を作ることができます。
プリントで再現する
特殊な糸や素材を工夫しなくても、メランジをプリントで再現することも可能です。
プリントであれば、元々ある生地にプリントでメランジを作ることもできます。また、色のバランスなどの調整も比較的に手軽にしやすいので、手っ取り早くメランジ模様を生地に載せれます。
まとめ
メランジ: 2色以上の色が混ざった生地
メランジの作り方
- 杢糸(もくいと)
- 霜降り糸
- メランジ調後染め
- 異なる素材を組み合わせる
- プリントで再現する
身の回りにメランジ生地は溢れていると思いますが、メランジと一言で言っても、見え方は様々です。カジュアルで可愛らしい印象から、ワンランク上のスーツなどにも使用され奥深い色合いや味のある生地まで、万能な生地です。ちょうどいい自分にあったメランジを見つけてみてください。
