「ドビー」や「ドビー織物」って聞いたことがありますか?
ドビー織物はデザインの幅を広げてくれるとして、衣料品はもちろん、アクセサリーやインテリア製品にもたくさん取り入れられている生地です。皆さんの身の回りにもきっとドビー製品があるでしょう。
今回は「ドビー織物」について紹介していきたいと思います。
ドビー織物とは?
ドビー織物
ドビー織物とは、ドビー織機で作られる織物生地です。平織や綾織などの織り方を変えたり、糸の太さや先染め糸を使用するなどしてデザイン性のある織物を作る「変わり織り」の一種です。小さなリピート性のある規則正しい柄を作ることができます。ストライプや単調な花柄、規則性のある幾何学模様などを作ることはできますが、ランダムの模様を作ることはできません。また、柄物がメインのイメージがありますが、ドビー織機では梨地織物などの無地であるものの、凹凸があったりと変わり種の織物を作る際にも使用されます。
ドビー織物は、柄のデザインがあるブラウスやシャツ、ワンピースなどの衣料品はもちろん、タオルやネクタイなどにも多く使われています。
ドビー織機
ドビー織機とは、ドビー装置と呼ばれる経糸を上下する開口装置を調整する機械が付いています。このドビー装置は、ジャガード織機のように経糸1本1本全ての上下の動きをコントロールすることができますが、ドビー装置で全ての経糸を調整することはできずに、ある程度の枠の中での調整となります。そのため、ジャガードに比べるとデザインの自由度は劣りますが、リピート性のある柄が得意です。
ドビー織機の場合は、例えば6,000本が総糸本数の経糸の中で、うち3,000本の経糸をAの綜絖(そうこう)に通して、残りの3,000本の経糸をBの綜絖に通して、2つのグループを作ります。AとBのグループが別々に上下に動くことで、模様を作り出すことができます。ある程度まとまった枠で動くので、生産効率はジャガードに比べて高くなります。
ドビー織物の誕生
ドビー織物が誕生したのは、1840年と記録されています。この年に、ドビー装置が織機に初めてつけられたと言われています。ドビー織物は、ベーシックな平織よりは時間と手間はかかりますが、通常の織機には出せない模様や細かい操作ができるとして、画期的な開発として浸透していきました。
現在では、身の回りにある多くの衣料品やインテリアなどの生地に使われていて、世界中でもドビー織機を使って生産されるほどに発展しています。ドビー織物と明記されていなくても、実はドビー織機で織られた生地はたくさんあります。
ドビー織物の特徴
規則正しい模様を作れる
ドビー織物の特徴として、さまざまな模様をつけることができます。前述した通り、ある程度まとまって経糸を動かすので、不規則の柄を作ることはできませんが、リピート性のある多種多様な模様を生み出すことができます。
ストライプ柄
ベーシックなストライプ柄は、カジュアルからフォーマルな場面でも使える万能な柄です。先染め糸を使ったり、ナイロンとポリエステルなどの素材が違う糸を使用することで、反応する染料の違いから、色分けをすることができます。
チェック柄
複雑に交差するチェック柄もドビー織機を使って作ることができます。先染め糸を使って複雑な配色にしたチェック柄や、チェック柄のパターンやサイズを調整することもできます。
花柄
規則正しいパターンであれば、花柄のような細かい模様も作り出すことができます。和風な花柄は着物や風呂敷にも使われます。
生産効率が高い
織機で模様をつける織物の中では、生産効率の高い織り方です。もちろん、ベーシックな平織やツイルなどの単純な織物を作るよりは製織時間と経糸を調整する手間はかかりますが、同じく柄を作り出すジャガード織物よりは生産スピードも生産効率も高い織り方です。
値段が抑えられる
生産効率が高い分、値段を抑えることはできます。もちろんベーシックな模様のない織物よりは値段は高くなりますが、生産スピードが速い分、安価で生産することができます。比較的に単純なデザインに限られるため、デザインを起こす費用も抑えられます。
生地に厚みがでる
ドビー織機の場合は、平織や綾織などの織り方を組み合わせて模様を作り出すので、ベーシックな平織などの生地よりも厚みやふくらみ感がでます。厚みがあり、ペラペラの生地にはならないので、高級感のある見た目に仕上げることができます。
立体感がでる
組織を切り替えながら、柄を作っていくので、立体的な見た目に仕上がります。生地に奥行きが出るので、角度によって印象の変わる深みのある生地を作ることができます。
組織の掛け合わせによって、特徴が変わる
平織ベースで模様を作るのか、綾織や朱子織がベースの生地によって、それぞれの特徴を持たせることができます。平織の場合は、丈夫で強い生地に仕上がります。綾織や朱子織がベースになると、光沢感がでたり、柔らかさやシワになりにくい特徴があります。伸縮性も平織よりはあるので、動きやすい生地に仕上がります。組織のコンビネーションによって、仕上がる生地の風合いが大きく変わることも、ドビー織機で生地をデザインしたり、生地を作る楽しさでもあります。
素材を選ばない
ドビー織物は、さまざまな素材が使用されています。生産量の多いポリエステルはもちろん、強度の高いナイロンなどの合成繊維や、天然繊維であるコットンやシルク、ウールなど素材を選びません。それぞれの素材が持つ特徴を掛け合わせながら、さらに織物の組織を変えながら作ることで、独特の風合いや機能を持たせることもできます。
用途を選ばない
柄のパターンや、素材の組み合わせ、糸の太さや光沢感、配色を変えることで、春夏向け生地から秋冬向けの生地、カジュアルからフォーマルまで、どの用途にもピッタリ合う生地を作ることができます。例えば、光沢のある糸で、小ぶりな柄をデザインするとネクタイなどのフォーマルな生地や高級感のある印象に仕上げることができるでしょう。
まとめ
ドビー織物
- ドビー織機で作られる織物生地
- デザイン性のある織物を作る「変わり織り」の一種
ドビー織機
- ドビー装置と呼ばれる経糸を上下する開口装置を調整する装置が付いた織機
ドビー織物の誕生
- 1840年にドビー装置が織機に初めてつけられ、発明された
ドビー織物の特徴
- 規則正しい模様を作れる
- 生産効率が高い
- 値段が抑えられる
- 生地に厚みがでる
- 立体感がでる
- 組織の掛け合わせによって、特徴が変わる
- 素材を選ばない
- 用途を選ばない
ドビー織機1台で、多種多様なパターンや生地を作ることができます。ドビー織機で作れる範囲内のデザインであれば、コスト面でもメリットがあります。ランダムではなく、規則性のあるデザインを検討している場合はドビー織機での生産も検討してみてはいかがでしょうか?