秋冬向けの定番生地の一つでもある「スエード生地」。コートやバッグ、靴などに使用されている温かみのある生地ですよね。この「スエード」と表現される生地の中には、人工皮革スエードやスエード調ファブリックもまとめて、スエードと表現されることがあります。それぞれどのような特徴や違いがあるのでしょうか?
今回は、「スエード生地」、「人工皮革スエード」、「スエード調ファブリック」の違いについて紹介したいと思います。
スエード生地
スエード生地とは、起毛皮革(きもうひかく)の一種に分類される生地です。子羊や子牛、山羊、鹿などの小動物から採られる皮革の裏面にサンドペーパーを使って起毛させた生地を指します。どの動物の皮革を使うかで、仕上がりや風合いに差が出てきます。成長した牛や鹿などは皮が厚く固めの仕上がりになるので、求める風合いに合わせた皮革の選定が必要になります。
高級感と滑らかで柔らかい風合いが特徴ですが、その状態を保つためにはメンテナンスは欠かせません。ブラッシングで毛並みをこまめに整えたり、水に弱いので、撥水スプレーなどで水濡れの対策が必要になります。スエード用の栄養スプレーなども売られているので、高い品質をキープするには、栄養を入れてうるおいを保つことが推奨されています。
スエードの由来とは?
スエードの語源は、諸説あるようですが、フランス語の「gants de suede(ガーント・ドゥ・スエード)」から来ていると言われています。「スウェーデン産の手袋」という意味があり、当時女性向けの手袋に、スウェーデンで開発された皮革を起毛させる加工を施した生地が流行しました。これにより「スエード」=「皮革を起毛させる加工技術」を指すようになり、この言葉が浸透していきました。そもそものスエードとは、フランス語で「スウェーデン(suède)」という意味です。
フェイクスエード生地
本来は動物の皮革を使用して作られる「スエード生地」ですが、動物愛護の観点から動物の皮革を使用しない人工皮革を使用したフェイクスエードもあります。毛皮は、食用の肉などに加工される際の副産物として刈り取られると思っている方もいるかもしれません。現状は、毛皮を刈り取るために養殖されている動物もたくさんいます。
リアルファーの中でも動物への配慮の元に刈り取られることもありますが、中には安楽死などではなく残酷にも生きたまま毛皮をはぎ取ったり、窒息死などによってはぎ取られていることもあります。日本では毛皮の生産をほぼ行われておらず、中国を初めとした海外への輸入が中心となっています。海外での毛皮の生産場では、コストを極力抑えるために、動物たちを狭い檻に閉じ込めたり、十分に整備の行き届いていない劣悪な環境下で育てられていることも多くあるのが事実です。
多くの有名人やインフルエンサーが、動物愛護の観点からリアルファーを一切着ないと宣言する人も増えてきました。そのような経緯もあり、毛皮ではなくフェイクファーやフェイクスエードにも注目が集まっているのです。
人工皮革スエード
人工皮革では、ポリウレタン樹脂を使用して人工皮革を作ります。毛皮の代わりに、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維を使用して作られることが多いようです。動物を一切使用せずとも、高い再現性の見た目や風合いをしているので、本物の動物皮革の代用品になるとして、人気があります。
人工皮革スエードの特徴
摩擦に強い
人工皮革の場合は、本物よりも摩擦に強く、耐久性が高いです。摩擦により毛が抜け落ちることも起こりにくいことがメリットです。
水に強い
人工皮革の場合は、水にも強くメンテナンスしやすい生地です。撥水加工などを施していることもあるので、より水に強い生地に仕上がります。
通気性が高い
天然の皮に比べるとポリウレタン樹脂などで作られる合成の皮革の方が通気性は高く、機能性でも強みがあります。
発色性に優れている
人工皮革に染料を入れて鮮やかな発色に仕上げることもできます。起毛部分の繊維もナイロンやポリエステルなどの合成繊維を使用することが多く、発色性に優れています。色落ちなどの心配もないでしょう。
虫食いの心配がない
本物の獣毛繊維を使用する場合は、たんぱく質でできているので、虫食いの心配があります。人口スエードの場合は、原料はポリウレタンやナイロン、ポリエステルで構成されることが多いので、虫食いの心配がありません。
スエード調ファブリック
動物皮革や人工皮革を使用せずに、表面の起毛部分を動物の毛を使わずに作られるスエード調ファブリックもあります。「スエード調」や「スエードライク」などと表現されています。
スエード調ファブリックの特徴
手に吸い付くような風合い
表面の起毛により、手に吸い付くようなやわらかな風合いをしています。ナイロンやポリエステルなどの合成繊維を使用して、起毛などで表面をピーチタッチに仕上げることで、本物のスエードのような風合いを再現します。
メンテナンスが楽
本物のスエードの場合は、栄養剤や撥水対策、ブラッシングなどが必要になりますが、スエード調ファブリックの場合は、特にメンテナンスは必要ありません。ただし、繊維1本1本が細かく細いので、汚れがたまりやすくなるので、その際はブラッシングをした方が清潔感を保てるので汚れた時のケアは必要になります。ナイロンやポリエステル自体は水に強く、さらに撥水加工を施してある生地もたくさんあるので、水に対する対策やケアは不要な点は、本物のスエードよりも断然にメンテナンスしやすいメリットがあります。
通気性が高い
人工皮革と比べても、皮革部分がない分、通気性はより優れています。
ドレープ性がある
皮革がない分、体にフィットするようなドレープ性があります。衣料品向けの場合、皮革を使用しない方が使いやすいケースもあるので、スエード調ファブリックだからこそ出せる生地の特性があります。
価格を抑えられる
本物のスエードや人工皮革スエードと比べても、大幅にコスト面を抑えることができます。その安価な値段とは裏腹に、表面の上品な光沢と毛並みのおかげで高級感のある見た目が魅力です。
まとめ
スエード
- 起毛皮革(きもうひかく)の一種
- 小動物から採られる皮革の裏面にサンドペーパーを使って起毛させた生地
スエードの由来
- フランス語の「gants de suede(ガーント・ドゥ・スエード))=スウェーデン産の手袋
フェイクスエード生地:人工皮革スエード
- ポリウレタン樹脂を使用して人工皮革に合成繊維などで毛を再現した生地
- 摩擦に強い
- 水に強い
- 通気性が高い
- 発色性に優れている
- 虫食いの心配がない
フェイクスエード生地:スエード調ファブリック
- 動物皮革や人工皮革を使用せずに、表面の起毛部分を動物の毛を使わずに作られる
- 手に吸い付くような風合い
- メンテナンスが楽
- 通気性が高い
- ドレープ性がある
- 価格を抑えられる
広い意味でスエードと表現されますが、さまざまな種類のスエード生地があります。最近では、動物愛護への関心の高まりから、本物のスエードよりも、人工的に作られるフェイクスエードへの切り替えに注目が高まっています。スエード購入の際は、それぞれの特徴を知ったうえで、どのスエード生地がいいのかを検討してみてください。