今回は織物の組織について注目したいと思います。テキスタイルは、加工もさることながら、織り組織の種類もたくさんあります。
今回はその中で、主要に使われている組織を紹介をしていきます。
織物の三大組織
織物の三大組織をご存知でしょうか?世の中には、たくさんの織り組織が存在しますが、どれも基本の三大組織の応用で構成されています。三大組織とはどのような織り方と特徴があるのでしょうか?
平織
平織は「タフタ」とも呼ばれています。織物の中ではベーシックで、経糸と緯糸を交互に織って構成されます。裏表がなく、頑丈で摩擦に強い織り方です。
表面もフラットなため、加工やプリントなどが載せやすく、衣料品によく使用されています。
洗濯しても、崩れにくく耐久性の強い組織になります。
・経糸と緯糸を交互に織ったベーシックな織り方
・頑丈で摩擦に強く、型崩れしにくい組織
綾織
綾織とは「ツイル」とも呼ばれています。この織り方は斜めに畝が入ることが特徴です。
平織は経糸と緯糸が交互に打ち込まれることに対して、綾織は経糸もしくは緯糸を2-3本飛ばして織られます。
デニムが代表的な綾織組織で、右上がりもしくは左上がりになっていることが確認できるかと思います。
この組織は平織よりも生地が柔らかくなり、シワがよりにくいメリットがありますが、摩擦や耐久性は平織に劣ります。
・経糸もしくは緯糸を2-3本飛ばしながら織る組織
・斜めに畝ができることが特徴で、デニムが綾織の代表
・耐久性は平織より劣るが、柔らかくシワになりにくい組織
朱子織
朱子織とは「サテン」とも呼ばれる織り方で、経糸もしくは緯糸を4-5本以上飛ばして織られます。
経糸と緯糸が上下左右ともに隣接しないように、規則的に飛ばして織られる組織です。この織り方は、経糸もしくは緯糸が表に多く表に出ることが特徴です。
肌触りがシルクのように滑らかで、シワになりにくく光沢感があります。スーツなどの裏地によく使用されています。
上品で高級感はありますが、摩擦に弱くあまり強い組織ではありません。平織に比べて飛ばす糸が多く、糸が浮いている距離が長い分、引っかかりやすくなり、耐久性も下がりますので扱いには注意が必要です。
・経糸もしくは緯糸を4-5本以上飛ばしながら織る組織
・光沢感と高級感があり、シワに最もなりにくい組織
・糸浮きの距離が長い分、摩擦に弱く耐久性は低い
代表的な組織
リップストップ
リップストップとは、英語で裂けるという意味のあるRipを止める(Stop)組織で、織り組織の中に太い糸を入れて破れ防止を目的に作られた組織です。重い荷物を入れるリュックサックや、糸が弱い軽量生地の耐久性を上げるために、よく使用されている組織になります。また、アウトドアスポーツなどの耐久性を必要とする生地にもよく見られる組織です。
ダブルリップと呼ばれる、太めのリップ糸を2本入れて、より頑丈なリップストップ生地が作られることもあります。リップストップ間の大きさを変えたり、正方形や長方形にすることで、物性以外にもファッション性をもたらせてくれます。
なお、リップストップは、ドビー織機で織られます。
オックスフォード
オックスフォードとは平織の一種で、経糸・緯糸ともに2本ずつ引き揃えて作られる組織です。
通常の1本1本を交互に織るベーシックな平織に比べて、隙間ができるため、通気性がよくやわらかな生地であることが特徴です。また厚みやハリ感を感じられるため、アウターなどしっかりした印象を与えたい時に、よく使用されます。
ポプリン・ブロード
ポプリンとは平織の一部で、経糸の密度が緯糸の2倍で構成されて、緯方向に畝が見られることが特徴です。通気性がよく、しなやかで上品な光沢感があり、ワイシャツなどによく使用される組織になります。
同様の組織で「ブロード」という組織がありますが、その区別は使用する糸の番手(重さ)の差となります。ポプリンは軽量の糸使いで、ブロードの方が重さのある糸を使用されます。
ピケ
ピケは平織と綾織を組み合わせて畝状に作られる織り組織です。
生地に立体感があり、通気性がいいことも特徴です。平織だけでなく、綾織も組み込んで作られるため、柔らかさもある生地です。
シアサッカー
シアサッカーとは凹凸のある生地で、この凹凸により接地面積が少なくなることから、春・夏向けの生地によく使用されます。シアサッカーは、ストレッチ糸とノンストレッチの糸を組み合わせて、糸の収縮差を利用することで、凹凸が形成されます。凹凸感以外にもストレッチ糸を使用しているため、伸縮性があり、動きやすい生地になります。
夏物スーツなどのアウターから、パジャマなどでよく見かける生地です。
シャンブレー
シャンブレーは経糸と緯糸の色を変えて作られる平織組織です。ナイロンとポリエステル等の染料が異なる糸の組み合わせ(染め分け)や、片方の糸に原着糸(染まっている糸)を使用(先染め)して作られます。光沢感があり、色味に深みが出ることが特徴です。トレンチコートなどでもよく使われている組織で、その美しい見え方から、「玉虫色」とも呼ばれます。
シャンブレーの名前の由来としては、フランスの北部にある「カンブレー」という町が発祥と言われており、この町の名前が語源となっています。
この写真の生地の場合は、経糸にナイロン糸、緯糸に黒色の原着糸を使用しています。織組織としては平織ですが、ツイルやサテンのような光沢感があります。
二重織
二重織とは、表の組織と裏の組織が異なる組織です。
ファッション用途として、表裏別の見せ方をすることもできますし、表面は摩擦抵抗に強いフラットな組織で裏面は柔らかい糸やフィラメントの多い糸を使用して、フリースタッチにするなど機能性を考慮した組織作りも可能です。
表に撥水加工をして、裏糸に吸水糸を使用する高機能二重織も見かけられます。外からの水をはじきながら、裏糸の吸収糸により汗を素早く吸って外に放出する効果があります。表と裏で別々の機能をつけることができることが、二重織のメリットではないでしょうか。
生地一つで、裏表二面の表情を楽しむことができますね。
楊柳
楊柳とは、強撚糸を使用して、ランダムなシワ感を生み出す組織です。ファッション性があり、柔らかい印象を与えてくれる生地です。
凹凸のあるシワにより摩擦耐久があまり強くないため、取り扱いには注意が必要です。
ジャカード
ジャガードとは、織りで模様を作る組織です。模様箇所の組織を変えることで、生地内で光沢感が変わったり、凹凸により3Dルックに見せることができます。
特別なジャガード織機がないと織ることができないため、限られた機屋さんでしか作ることができません。
ファッション性のある生地で、織り工程のみでプリントのような模様を作ることができます。
まとめ
- 織物の三大組織:平織・綾織・朱子織
– 平織:経緯1本ずつ交互に織られ、丈夫な組織
– 綾織:経または緯を2-3本飛ばして織られる斜めに畝が見られる組織
– 朱子織:経または緯を4本以上飛ばして織られる光沢感のある組織 - 代表的な組織
- リップストップ
- オックスフォード
- ポプリン・ブロード
- ピケ
- シアサッカー
- シャンブレー
- 二重織
- 楊柳
- ジャカード
織物の組織は紹介した以上に存在しており、糸や組織を組み合わせることで、何万通りの表情を見せてくれます。物性重視の組織選定から、ファッション性や着心地を意識した組織選定など、数多ある織り組織の中から、最適な生地選定をしてみてください。
※組織の名称に関しては、産地やメーカーによって独自な呼び方をしている場合があり、紹介した名称以外で表記されているケースもございます。その都度、確認いただけますようお願いします。