「ラッセル編み」って聞いたことはありますか?聞いたことがある人もどのような生地なのかを正確に表現するのは難しいと思われるかもしれません。「ラッセル編み」は、非常にバリエーションが多く、見た目の全然異なる生地同士でも、ラッセル編みとくくることができるからです。
今回はそんな「ラッセル編み」に注目してみたいと思います。
ラッセル編みとは?
ラッセル編み
ラッセル編みとは、粗めのゲージで編むラッセル編み機と呼ばれる機械を使って作られるニット生地です。ラッセル編み機は、同じ経編の代表でもあるトリコット編み機よりも、筬(おさ)の枚数が多いので、編み方のバリエーションが多く、薄手のレース生地から厚地の生地を作ることや、模様なども表現もすることができます。一言でラッセル編みと言っても、全く見え方の異なるニット生地がラッセル編み機一つでできるのです。
ラッセル編み機には、「シングルラッセル機」と「ダブルラッセル機」があります。シングルラッセル機は、編地を構成するニードルベッドが1列の編み機です。ダブルラッセル機は、ニードルベッドが2列備え付けられていて、表目と裏目の編地を別々に編むことができます。ダブルラッセル機では、立体感と厚みのある生地を作ることができます。ダブルラッセル機の方が、デザインの自由度があがります。
ラッセル編みの歴史と由来とは?
ラッセル編みの由来は、ラッセル編み機を生み出したドイツの会社が、フランスの女優であった” Rachel Félix(ラシェル・フェリックス)”(誕生:1821年~没年:1858年)にちなんで「ラッセル(ラシェル)編み」と命名したと言われています。
ラッセル編みは1855年にサーキュラーニットとワープニットの原理を組み合わせて作り出し、1859年にはWilhelm Barfuss(ヴィルヘルム・バルファス)によって編み機はさらに改良を重ねて今のラッセル編み機が誕生しました。
ラッセル編みの特徴(メリット)
バリエーションに富んだ柄の表現ができる
ラッセル編み機といえば、多種多様な柄や生地を作ることができます。薄手で繊細で美しい柄を表現することも、厚みを出した凹凸のある柄作りも得意な機械です。ラッセルレース機は、特にリピート性のある柄作りを得意としている機械です。
ラッセルレース
繊細で美しいレースもラッセル編み機で作ることができます。レース生地は、刺繍で作るエンブロイダリーレースやケミカル処理で作られるケミカルレースなどもありますが、これらのレース生地と比べて高速で編まれるため、生産効率よくレースを作ることができます。現代のレース編みの多くは、ラッセル編みが使われています。
粗めのゲージで編むため、編み目一つ一つが際立って見えるのも、ラッセルレースの特徴です。経編の組織は安定感もあるので、繊細かつ丈夫な生地ができます。ラッセルレースは、ウェディングドレスなどの装飾品や衣料品、カーテンなどを含むインテリア商材にも使用されます。
ダブルラッセルメッシュ
ダブルラッセルメッシュは、ラッセル編みを多重にして編む手法で作られる生地です。厚みがあり、奥行きをクッション性のある生地に仕上がります。平面的な薄手のレースも、このダブルラッセルメッシュも同じラッセル編み機で作り出すことができるのです。厚みを出すことで、クッション性のある生地にも仕上がります。スニーカーや、クッション性が高いことから、椅子の座面などにも使われています。
薄手から厚手までの生地を作ることができる
先ほどの項目で紹介したレース生地とダブルラッセルメッシュのように、薄手の生地から多重層の生地も作ることができるので、厚みを大きく変えることができます。ここまで印象の違う生地を作り出すことができるのは、ラッセル編み機の強みです。
形状安定性がある
経編組織の特徴でもありますが、緯編みのニットと比べて形状安定性に優れています。緯編みはストレッチ性にとても優れていますが、その分形状安定には欠けていて、型崩れしやすくなります。ラッセル編みは、特に厚みのある生地では抜群の形状安定力があり、型崩れしないので、普段使いからスポーツの分野でも活躍しています。
伝線しにくい
経編みは、緯編みと比較すると端がほつれても崩れにくい生地です。緯編みは、1か所ほつれてしまうと、全体までほどけてしまう可能性がありますが、経編のラッセル編みではほつれても伝線しにくい点は大きなメリットです。
立体的なシルエットに仕上がる
特に多重層のラッセル編みは、ハリ感があるので、緯編みのジャージー組織などには出せない立体的なシルエットに仕上がります。シルエットの美しさから、女性向けのワンピースなどにもラッセル編みは人気です。
シワになりにくい
ラッセル編みはハリ感もあり、シワになりにくい点がメリットにあります。形状安定性もあるラッセル編みは、シワにもならず洗濯の強い味方であるイージーケア生地として知られています。
通気性に優れている
粗めのゲージで編むラッセル編み機は、編み目が甘いので通気性がいい生地に仕上がります。通気性がいいことで、衣服内が蒸れにくいので、快適に着ることができます。ダブルラッセルメッシュなどの生地は、この通気性の良さから、靴などの生地として使われます。
ラッセル編みの特徴(デメリット)
ほつれに注意
編み目がざっくりしているラッセル編みは、組織によってはメッシュ状の大きなループがあるので、そこからひっかかりやすくなります。特に薄手のレースになると、糸の強度懸念もあり、生地が破れてしまう可能性もあります。
ストレッチ性が低い
ラッセル編みは経編のため、伸縮性は緯編に比べて劣ります。
まとめ
ラッセル編み
- 粗めのゲージで編むラッセル編み機と呼ばれる機械で編む編み物
ラッセル編みの歴史と由来
- 1855年に誕生
- 名前の由来は、フランスの女優Rachel Félix(ラシェル・フェリックス)
ラッセル編みの特徴(メリット)
- バリエーションに富んだ柄の表現ができる
- 薄手から厚手までの生地を作ることができる
- 形状安定性がある
- 伝線しにくい
- 立体的なシルエットに仕上がる
- シワになりにくい
- 通気性に優れている
ラッセル編みの特徴(デメリット)
- ほつれに注意
- ストレッチ性が低い
ラッセル編みと一言でくくっても、多種多様な生地に仕上がることが伝わったのではないでしょうか?繊細なレースから厚手のメッシュ生地まで、とても同じ機械で作ったとは思えませんよね?厚みだけの違いだけではなく、模様のパターンも細かく設定することができるので、ラッセル編み機を使ったデザイン性は無限大にあります。